メジャーを握って内見に向かったのに、部屋の真ん中で立ち尽くした。あれ、どこから測ればいいんだ。壁の長さは測った。窓の大きさも測った。でも、なんとなく測っただけで、家に帰ってから気づく。肝心なところを、ぜんぶ測り忘れていた。冷蔵庫が玄関を通るのか。ベッドは階段を上がるのか。洗濯機の置き場に、うちの洗濯機は収まるのか。数字が何もない。仲介の担当者が横で待っているし、次の内見者も控えているから、じっくり測る空気でもなかった。結局、間取り図の数字だけを頼りに契約して、引っ越し当日に頭を抱えることになる。共用リビングでその話をしたら、住人たちが次々に「あー、それやった」と苦笑いした。内見で測る場所には、絶対に外せない急所があったのだ。
メジャーを持って行ったのに、測る場所を間違えた
きっかけは、住人の一人の引っ越し失敗談だった。せっかく気に入って借りた部屋に、持っていた冷蔵庫が入らなかった、というのだ。玄関のドアは通ったのに、その先の廊下で曲がりきれなかった。内見でメジャーは持っていったのに、廊下の幅を測る発想がなかった、と彼は肩を落とした。
壁の長さより、通り道の幅を測り忘れる
内見で多くの人が測るのは、部屋の壁の長さだ。ここにベッドを置いて、ここにデスクを、と部屋の中のレイアウトばかり考える。それも大事だけど、もっと先に測るべきは、家具や家電がその部屋にたどり着くまでの通り道だ。玄関の幅、廊下の幅、曲がり角の余裕。ここを通れなければ、そもそも部屋にモノを入れられない。部屋の中の配置は、モノが入って初めて考えられる。搬入経路の実寸を測り忘れると、入居後に「入らない」という最悪の事態が待っている。
間取り図の数字は、あてにならないことがある
間取り図には寸法が書いてある。それを見て、うちの家具は入るだろう、と判断しがちだ。でも、間取り図の数字は、必ずしも実際の使える幅と一致しない。壁の厚みや、図面には表れない出っ張り、建具の位置で、実際に通せる幅は図面より狭いことがある。図面上は十分でも、現場で測ると柱が出っ張っていて通れない、なんてこともある。だから、自分の目で、自分のメジャーで、実寸を測る。この一手間を惜しむと、図面を信じたばかりに泣くことになる。現場の数字が、唯一の真実だ。
まず測るべきは、大型家電の搬入経路
内見で最優先に測るべき場所は、部屋の中ではない。大きな家電や家具を運び込む経路だ。ここは言い切る。搬入経路さえ通れば、あとはどうにでもなる。逆に、ここが通らなければ、どんなに部屋が気に入っても詰む。
玄関ドアの幅と高さを、必ず測る
搬入経路の入り口が、玄関ドアだ。ここを大型家電が通れるかが、最初の関門になる。冷蔵庫や洗濯機、大きな家具は、玄関ドアの幅ぎりぎりのことがある。ドアの幅だけでなく、高さも測っておきたい。背の高い冷蔵庫だと、高さで引っかかることもある。ドアを全開にした時の、実際に通れる有効な幅を測るのがコツだ。ドアノブや蝶番の出っ張りで、思ったより狭いことがある。玄関を通れないモノは、そもそも家に入らない。ここが搬入の第一関門であり、最重要ポイントだ。
廊下の幅と、曲がり角の余裕を測る
玄関を通っても、油断はできない。次に待つのが、廊下と曲がり角だ。まっすぐな廊下なら幅だけ測ればいいが、途中で曲がる場合、その曲がり角で大きなモノが向きを変えられるかが問題になる。冷蔵庫や洗濯機、ベッドのマットレスは、曲がり角で回転させる必要がある。廊下の幅が狭くて、直角に曲がれないと、そこで立ち往生する。あの住人の冷蔵庫が入らなかったのは、まさにこの曲がり角だった。廊下の幅と、角のスペース。この二つを測っておかないと、玄関を突破しても部屋の手前で詰む。
階段やエレベーターの大きさも、忘れずに
二階以上の部屋なら、そこへ至る階段やエレベーターも搬入経路だ。エレベーターがあるなら、その中に大型家電が入るサイズか、扉の幅とかごの奥行きを測る。エレベーターがなく階段で運ぶなら、階段の幅、踊り場での曲がり、天井の高さを確認する。階段が急で狭いと、大きなモノを担ぎ上げるのが難しい。特に、らせん階段や、途中で折り返す階段は要注意だ。建物の共用部分だから内見時に測り忘れやすいが、ここが通らなければ、玄関以前の問題になる。部屋にたどり着く道のり全体を、測る対象にしたい。
置き場所の寸法を、家電ごとに確認する
搬入経路を測ったら、次は置き場所だ。特に、置く場所が決まっている大型家電は、そのスペースにぴったり収まるかを、事前に測っておく必要がある。
洗濯機置き場の、防水パンのサイズを測る
洗濯機置き場には、防水パンという受け皿が設置されていることが多い。この防水パンのサイズが、意外と落とし穴になる。うちの洗濯機が、この防水パンに収まるか。パンの内側の寸法を測っておかないと、入居後に洗濯機の脚がパンからはみ出す、なんてことが起こる。パンの縦横だけでなく、蛇口の位置や高さも確認したい。ドラム式の背の高い洗濯機だと、蛇口が邪魔で設置できないこともある。洗濯機は搬入も設置もシビアな家電だ。置き場所の実寸を、念入りに測っておきたい。
冷蔵庫スペースの、幅と奥行きと高さを測る
冷蔵庫を置く場所も、寸法の確認が欠かせない。キッチンに冷蔵庫用のスペースが決まっている場合、その幅と奥行き、そして高さを測る。特に、上に吊り戸棚がある場合、その戸棚の下までの高さに冷蔵庫が収まるかが問題になる。幅だけ見て安心して、高さで引っかかるパターンがある。さらに、冷蔵庫は放熱のために周りに隙間が必要だから、スペースにぴったりだと熱がこもる。少し余裕を持って収まるサイズか、置き場所の実寸から判断したい。ここを測らずに大きな冷蔵庫を運び込むと、置き場所に入らず立ち往生する。
窓まわりは、カーテンとエアコンの視点で測る
部屋の中で測り忘れやすいのが、窓まわりだ。ここは、カーテンとエアコンという二つの視点で寸法を押さえておきたい。
カーテンのサイズは、窓ではなくレールで測る
カーテンを新調するなら、窓のサイズを測るだけでは足りない。実際に必要なのは、カーテンレールの長さと、レールから床までの高さだ。カーテンは窓を覆うのではなく、レールに掛けて吊るす。だから、レールの端から端までの幅を測り、そこにレールから床までの丈を合わせる。窓の大きさで注文すると、レールとサイズが合わず、丈が足りなかったり長すぎたりする。既製品のカーテンで済ませたい場合は特に、この数字が合わないと買い直しになる。窓ではなく、レールを測る。この視点が、カーテン選びの失敗を防ぐ。
エアコンの有無と、設置スペースを確認する
エアコンが付いていない部屋なら、自分で設置することになる。その時、エアコンを取り付けられる壁のスペースがあるか、室内機を掛ける場所の幅と高さを測っておきたい。加えて、エアコンの配管を通す穴があるか、室外機を置くスペースがベランダにあるかも確認する。室内機のスペースはあっても、室外機の置き場がなければ設置できない。エアコンは、室内機と室外機、そして配管の経路がそろって初めて付けられる。内見時に、この三点セットが確保できるかを見ておくと、入居後の設置がスムーズになる。
コンセントと家具の高さも、地味に効く
大物の寸法に気を取られると、細かいけれど生活に響くポイントを見落とす。コンセントの位置や、家具の高さ関係も、測っておくと後で助かる。
コンセントの位置と数を、間取り図に書き込む
コンセントが、どこに、いくつあるか。これは家具の配置を大きく左右する。テレビを置きたい壁にコンセントがなければ、延長コードが部屋を横切ることになる。ベッドの枕元に、スマホを充電できるコンセントがあるか。冷蔵庫や洗濯機の近くに、専用のコンセントがあるか。内見時に、コンセントの位置を間取り図に書き込んでおくと、家具のレイアウトを考える時に役立つ。数だけでなく、位置が生活動線に合っているかが大事だ。コンセントの配置は後から変えにくいから、内見の段階で把握しておきたい。
収納の内寸を測って、手持ちの家具と照らす
クローゼットや押し入れといった収納は、内側の寸法を測っておきたい。収納の中に、手持ちの衣装ケースやハンガーラックが収まるか。押し入れの奥行きに、布団や収納ボックスが入るか。収納の間口だけでなく、奥行きと高さも測る。特に、突っ張り棒でハンガーを掛けたい場合は、収納内部の幅が合うかが重要だ。収納が広く見えても、奥行きが浅くて手持ちのケースが入らない、なんてこともある。収納の内寸と、手持ちの家具のサイズを照らし合わせておくと、入居後に「入らない」と慌てずに済む。
測るときのコツと、持って行く道具
測る場所が分かっても、要領を得ないと現場で手間取る。効率よく測るためのコツと、内見に持って行きたい道具も押さえておきたい。
スマホで写真を撮って、数字を紐づける
内見では、測った数字をその場でメモするだけでなく、写真を撮っておくと後で助かる。廊下の曲がり角、防水パン、コンセントの位置。測った場所をスマホで撮影して、どこの寸法かを紐づけておく。家に帰ってから、数字だけ見ても、どこを測ったか忘れることがある。写真があれば、後から見返して、家具が入るかをじっくり検討できる。動画でぐるっと部屋を撮っておくのも有効だ。限られた内見時間で、測る、撮る、メモする。この三点セットを手早くこなすと、後の判断材料がそろう。
メジャーは長めのものと、レーザーがあると速い
持って行く道具は、まずメジャー。それも、五メートル以上ある長めのものが使いやすい。短いメジャーだと、廊下や壁の長い距離を測るのに何度も継ぎ足すことになり、誤差も出る。一人で長い距離を測るのは、メジャーの端を押さえる手がなくて苦労するから、レーザー距離計があると格段に速い。壁に向けてボタンを押すだけで、距離が一瞬で出る。最近は手頃なものもある。加えて、間取り図を印刷して持って行き、そこに直接数字を書き込むと、後で整理しやすい。道具がそろっていると、限られた内見時間を無駄なく使える。
結局、通り道と置き場所の実寸が命だった
内見で測る場所リスト。突き詰めて分かったのは、測るべきは部屋の壁の長さより、モノが部屋にたどり着く通り道と、モノを置く場所の実寸だということだった。玄関ドア、廊下の幅、曲がり角、階段やエレベーター。この搬入経路が、大型家電を運び込めるかを決める。防水パン、冷蔵庫スペース、収納の内寸。この置き場所が、家電や家具がぴったり収まるかを決める。間取り図の数字を信じず、現場で自分のメジャーを当てる。この地道な作業が、入居後の「入らない」という悲劇を防ぐ。
搬入経路さえ押さえれば、後悔しない
今、うちに越してくる住人には、内見前に必ず測る場所リストを渡すようになった。あの冷蔵庫が入らなかった失敗を、繰り返さないためだ。玄関から部屋までの通り道を、幅と曲がり角ごとに測る。置き場所が決まっている家電は、そのスペースの実寸を測る。窓はレールで、収納は内寸で。コンセントの位置は間取り図に書き込む。写真を撮って、数字を紐づける。内見という一度きりのチャンスで、これだけ押さえておけば、契約してから頭を抱えることはない。部屋の広さに一目惚れするより先に、その部屋にたどり着く通り道を測る。引っ越しの成否は、内見のメジャー一本にかかっていた。

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