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IHがあるなら電気ケトルはいらないのか、朝の実測でわかった分かれ目

七時二分、キッチンの明かりが消えた。
換気扇のぶうんという音も、冷蔵庫の低い唸りも、同時に止まる。しんとした暗がりの中で、ジュンさんはトーストを載せた皿を持ったまま固まっていた。
原因ははっきりしている。IHでみそ汁を温め、電子レンジで冷凍ご飯を解凍し、買ったばかりの電気ケトルでコーヒー用の湯を沸かした。三つを同時に。
「便利になるはずだったんですよ。ケトルを買った初日にこれ(笑)」
IHのある部屋に電気ケトルを足すかどうか。この判断は、好みの問題ではなく電気の配分の問題だった。

目次

IHがあるから要らない、とは言い切れない

分かれ目は口数ではなく、出力

同じIHでも、賃貸に備え付けられているものと、システムキッチンに組み込まれたものでは別の道具だと思ったほうがいい。
ビルトインの二口や三口は、最大で二千から三千ワット出る。この火力なら、鍋に一リットル入れて強で回せば数分で沸く。中部電力の実験でも、一リットルを最も速く沸かしたのはIHの強で鍋を使った条件だった。
一方、ワンルームのミニキッチンに埋め込まれた一口タイプは、千四百ワット前後のものが多い。数字にして半分以下。
出力を確認しないまま、IHがあるから大丈夫と考えると、朝の五分が毎日削られていく。

ミニキッチンの一口IHは、思ったより非力

千四百ワットで一リットルを沸かすと、体感で七、八分かかる。しかも鍋の底が浮いていたり、直径が合っていなかったりすると、そこからさらに伸びる。
電気ケトルの消費電力は千二百五十ワット前後。数字だけ見ればIHのほうが上なのに、実際に沸くのはケトルのほうが速い。容器が小さく、熱がまっすぐ水に向かうから。
一口しかないという事情も効いてくる。湯を沸かしているあいだ、その一口は塞がる。パスタを茹でながら湯を用意する、という段取りが組めない。

朝七時に、明かりが消えた理由

同時に使うと、合計で何アンペアになるか

ジュンさんの部屋は二十アンペア契約だった。
アンペアに直すと、IHが十四、電子レンジが十五、電気ケトルがおよそ十二。二つ動かした時点で上限を超える。
エアコンが六・六、冷蔵庫が二・五、テレビが二。冬の朝に暖房をつけたまま調理へ入ると、それだけで二十五を超えてしまう計算になる。
IHのある物件で三十アンペアが勧められるのは、こういう事情から。備え付けの調理器が電気を使う以上、ガスコンロの部屋と同じ感覚では組めない。

契約を上げる前にできること

いちばん確実なのは契約アンペアの変更。ただし基本料金が上がるし、賃貸では建物全体の配線容量が足りず、変更できない物件もある。申し込む前に管理会社へ確認する手順が要る。
その前に試せることが二つ。
ひとつは時間をずらすこと。ケトルのスイッチを入れてから、その一分を待つあいだにIHを使わない。たった一分の話で、ほとんどの朝はこれで足りる。
もうひとつは、湯を先に用意しておくこと。前の晩に沸かして保温容器へ入れておけば、朝は電気を使わずに済む。

湯沸かし機能があるかどうかで、体験が変わる

沸いたら勝手に止まる

最近のIHには湯沸かしモードが載っているものが多い。沸騰を検知して自動で加熱を止める、あるいは保温へ移る。
これがあると、電気ケトルとの差がぐっと縮まる。スイッチを押して、その場を離れて、洗面所で歯を磨いて戻ってくる。同じ運用ができる。
自宅のIHにこの機能があるかどうか。取扱説明書を見ないまま数年使っている人がかなりいて、実は搭載されていたと後から気づく展開もよく聞く。

空焚きで切れるから、離れられる

火を使わない安心も大きい。鍋を空のままかけても、温度センサーが働いて加熱が止まる。
ガスコンロなら、やかんをかけたまま部屋を出るのは避けたい。IHならその縛りが緩む。
うっかりしやすい人ほど、この違いは効く。ジュンさんはガスの部屋に住んでいたころ、やかんを二回焦がしている。

IHでやかんを使うなら、底を見る

材質と、底の直径

手持ちのやかんがそのまま使えるとは限らない。
IHは磁力で鍋そのものを発熱させる仕組みなので、鉄やステンレス、IH対応と書かれたホーローが必要になる。アルミや銅、耐熱ガラスのものは、オールメタル対応の機種でない限り反応しない。
底の形も大事で、丸みのあるものは接する面積が小さく、熱が入らない。平らであること。
直径にも下限があって、多くの機種で十二センチほど。小さすぎると本体が鍋を認識せず、エラーで止まる。
IH対応のやかんは二千円から五千円あたり。壊れにくいので、長い目で見た費用は電気ケトルより軽くなる。

笛が鳴らないことがある

意外な落とし穴。笛吹きケトルをIHに載せると、沸騰しても音が出ないことがある。
炎で加熱するときのように底や側面から一気に泡が立つのではなく、IHは底面から静かに温度が上がっていくため、蒸気の勢いが笛を鳴らしきらない場合がある。
音を頼りに離れるつもりだったのに、戻ってみたら半分近くまで蒸発していた。この失敗は、買う前に知っておきたい。

速さと電気代の、実際のところ

一杯だけならケトルが速い

カップ一杯の百四十ミリリットルなら、電気ケトルはおよそ一分。IHで小鍋に同じ量を入れても、器具が温まる時間があるぶん追いつけない。
電気代の比較も出ている。三十分使ったとして、千二百五十ワットのケトルがおよそ十九円、千四百ワットの一口IHがおよそ二十二円。単価を三十一円で計算した数字。
少量を短時間で、という条件ではケトルのほうが安く、そして速い。朝に一杯だけ淹れる暮らしなら、この差が毎日積み上がる。

一リットルを超えると、逆転する

量が増えると話が変わる。ケトルの容量はたいてい一リットル以下で、それ以上はどうやっても二回に分けることになる。
IHなら鍋の大きさぶんだけ一度に沸かせる。強火にしたほうが加熱時間が縮んで、結果的に消費エネルギーも減る。
鍋料理をする、麺を茹でる、湯たんぽに入れる。こうした場面ではIHに軍配が上がる。
つまり優劣ではなく、担当が違う。少量はケトル、大量はIH。この線引きが実務的なところ。

買う人と、手放す人の線引き

持っておいたほうがいい暮らし

備え付けが千四百ワット前後の一口IHで、朝にコーヒーやスープを一杯だけ飲む人。ここは電気ケトルを持ったほうがいい。三千円前後の投資で、毎朝の数分が返ってくる。
契約が三十アンペア以上あることを先に確かめる。二十アンペアなら、買う前にアンペアの変更が可能かどうかを管理会社に聞く。
自炊をあまりしない人にも向く。コンロを一度も使わない日でも、湯だけは要るから。

なくても回る暮らし

二口以上のIHがあって、湯沸かしモードが載っている。この条件がそろっているなら、電気ケトルの出番は消える。
IH対応のやかんを一本、コンロに置きっぱなしにしておけばいい。沸いたら止まる、空焚きでも切れる。ケトルとの違いは、注ぐときにやや重いことくらい。
カウンターに家電をひとつ置かずに済むぶん、まな板の置き場が増える。狭いキッチンでは、この面積がわりと効く。
ジュンさんは結局、ケトルを残した。かわりに朝の順番を決めた。ケトルのスイッチを押して、沸くまでの一分は何もしない。それだけで、あの日以来ブレーカーは落ちていない。

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この記事を書いた人

屋根の下の知恵袋TOKYOシェアライフ

都内シェアハウス住民によるリアルな生活ハック発信中。
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