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傘修理キットは本当に直る?100均と市販品を9本で試した結果

目次

玄関の傘立てに、誰のものでもない傘が九本あった

梅雨入りの週の土曜日。シェアハウスの玄関で、傘立てが倒れました。
原因は単純で、入れすぎ。八人暮らしなのに、傘は二十本以上。そのうち九本は、開くと骨がぷらぷら揺れる。露先が布からはみ出している。そもそも誰のものか分からない。そんな傘でした。
倒れた傘立てを起こしながら、同居人のリクが言った一言が、この記事の始まりです。
「直せるやつは直して、無理なやつは捨てよう。明日、やらない?」

家のルールで、直すか捨てるかを決める日曜になった

うちには、共用スペースの私物は月に一度整理する、というゆるい決まりがあります。ところが傘だけは、誰も自分のものだと言い出さないので毎回そのまま。
壊れた傘を捨てるのは簡単です。それでも、明らかに安物ではない木の持ち手の傘や、子ども用の黄色い傘が混ざっていると、ゴミ袋に入れる手が止まる。
(これ、直るなら直したいんだけど…)
その気持ちを一度きちんと試してみよう、というのが日曜の趣旨でした。

用意したのは110円のセットと764円のセット、それからペンチ

土曜の夕方、私はダイソーへ走りました。
傘修理セットは税込110円。中身は三ツ爪と四ツ爪の金具が大小、関節用の爪金具、露先、補修シート。売り場は傘コーナーではなく、裁縫用品や補修グッズの棚でした。
もう一つは通販で頼んでおいた和気産業の傘修理セット。23点入りで764円。三ツ爪と四ツ爪が大小それぞれ二本ずつ、親骨用と受骨用の間接爪、ハトメ、露先が三色と児童用、補修シートまで入っています。
道具はラジオペンチ、普通のペンチ、軍手、針と糸、多用途の接着剤。
以上、合計で千円ちょっと。
リビングのテーブルに新聞紙を広げて、日曜の13時、九本を並べました。

直った傘、四本

一本目、受骨の途中がくの字。四ツ爪の小で十分だった

13時10分。紺色の長傘から。
傘を開くと、短いほうの骨、受骨が一本だけ途中でくの字に折れています。布を支える長い骨が親骨、それを下から支える短い骨が受骨で、二つは小さな関節でつながっている。この構造が分かると、直せるかどうかの見当が一気につきます。
まずラジオペンチで、折れ目をゆっくり伸ばす。完全にまっすぐでなくていい、と自分に言い聞かせながら。
金具は骨の外側から当てて、出ている爪をラジオペンチで順に内側へ折り込む。買うときは骨の太さと形、U字か丸かを見ておく。
四ツ爪の小がぴったりでした。ギリギリ、と金属の鳴る音が四回。
閉じて、開いて、閉じて。骨は元の位置に戻っていました。
ここまで十分。あっけなさに、リクと顔を見合わせてしまった。

二本目、露先が取れてぷらぷら。糸で結ぶだけの五分

二本目は黄色い子ども用の傘。布の角が一か所、骨から離れて風に揺れています。
骨の先端の小さな部品を露先と呼びます。露先は接着ではなく糸で布と結ばれているので、取れた原因の多くはただの糸切れ。直し方も結び直すだけ。
セットの児童用の露先を骨の先に差し、布の角の穴と露先の穴に糸を通して、五回巻いて固結び。
五分!針仕事が苦手な私でもできたので、ここは誰でもいける。
リクが横で「ボタン付けと同じじゃん」と言い、その通りでした。

三本目と四本目、親骨の曲がり。金具の向きで一度やり直し

三本目と四本目は、同じ壊れ方。長い親骨が真ん中あたりで曲がっている。
ここで一つ失敗しました。
三本目の金具を、布の側、つまり骨の内側から当ててしまったんです。爪を折り込んだあとに傘を閉じたら、布に金具が引っかかって、カリッと布が削れる感触。
(あ、逆だ…)
爪を一本ずつ起こして外し、外側から付け直し。二回目は三分で終わりました。
四本目はその反省を生かして一発。爪の先端が布側や手の触れる側に飛び出していないかを、曲げ終わってから目で確かめる。これを怠ると、次に開いたとき指か布のどちらかが切れます。

直ったけれど、胸を張れない傘、二本

五本目、関節が外れた古い傘。ハトメを潰す手が震えた

五本目は、誰のものか最後まで分からなかった古い茶色の傘。
親骨と受骨をつなぐ関節が外れていて、留めていたはずの小さな部品、ハトメがどこにもない。
764円のセットからハトメを一つ取り出して、二本の骨の穴を重ね、差し込む。
ここからが意外と力仕事でした。ラジオペンチでハトメの頭を潰して固定するのですが、握っても握ってもへこまない。
握力が尽きかけて、二の腕がぷるぷる震え、額に汗の粒。
(腕、つる…)
普通のペンチに持ち替えて、体重をかけたら、カチッ。
関節は戻りました。ただ、動きが少し渋い。開閉のたびに、そこだけ引っかかる感じが残ります。
関節の修理は部品の形とサイズが合うかどうかの勝負で、骨の途中の折れより難易度は一段上。結局、二十五分。これが正直な結果です。

六本目、ビニール傘の骨折れ。直した翌週、隣の骨が折れた

六本目はコンビニのビニール傘。受骨が一本折れているだけだったので、三ツ爪の小で、ものの数分。
問題はその後でした。
翌週の雨の日、リクがこの傘を持って出て、駅前の風で隣の骨がパキッ。
まさか一週間で戻ってくるとは。
ビニール傘は骨が細く作られている分、一度折れた傘は別の骨も同じ風でまた折れやすい。新品はだいたい500円から700円。
110円で直った手応えと、翌週の再発。この往復で、私の中の基準が決まりました。
折れが一か所で、ほかの骨がしゃんとしているビニール傘は直す。二か所以上、あるいは全体がゆがんでいるなら、その110円は次の傘に回す。

直らなかった傘、三本

七本目、グラスファイバーの折りたたみ傘。金具が滑る

七本目は軽い折りたたみ傘。骨が黒くて丸くて、つるつるしている。グラスファイバーです。
鉄の骨なら曲がるだけで済むところが、グラスファイバーはポッキリと折れる。実際、断面はきれいな真っ二つでした。
四ツ爪の小を当てて爪を折り込んでも、丸い断面に爪がかからず、金具がくるりと回る。三ツ爪に替えて、接着剤で固めて、一晩置く。翌朝は持った。
はぁ…と息をついたその日の夕方、開閉を三回繰り返したところで、金具の中で骨がずれました。
和気産業のセットのパッケージには、骨が鉄製以外の傘の補修には適しません、と明記されています。
修理店でも、グラスファイバー骨は扱っていないと断られるケースがある。骨そのものを入れ替える専門店も存在するけれど、鉄骨の時代に比べて修理の応用が利きにくくなった、と店側も認めています。
キットで直せる骨は、鉄製の骨。これは言い切っていい。

八本目、ろくろが割れていた

八本目は、開こうとすると途中で止まる傘。
中棒の上のほう、骨を束ねている輪の部品にひびが入っていました。ろくろと呼ぶ部品です。
ろくろが割れた場合や骨組み全体がゆがんだ場合は、110円の部品では手が届かない。
764円のセットにも、ここの部品は入っていません。
潔く手放すことにしました。

九本目、お気に入りの傘は駅ビルの修理カウンターへ

九本目は私の傘でした。木の持ち手の八本骨、六千円くらいで買ったもの。
親骨が根元近く、頂点のすぐそばで折れています。ろくろに近すぎて、金具を当てる余白がない。
これはキットを諦めて、月曜に駅ビルの修理カウンターへ持ち込みました。
骨折れ修理は1か所1,650円から、店舗によっては1,980円。二か所目以降は合計から550円引き。
受付の女性は骨を指でなぞって、これなら店頭でできますね、と言って、翌日に上がってきました。
六千円の傘に1,650円。この計算は、キットが110円でも揺らがない。

やってみて分かった、キット選びと道具の話

110円と764円の違いは、サイズの幅と説明書

九本を終えて振り返ると、110円のセットで足りたのは四本、764円のセットの部品が要ったのが二本でした。
違いはサイズの幅です。110円のセットは各サイズが一つか二つ。764円のほうは大小が二本ずつに、間接爪が三種類、ハトメまで入っている。単品の四ツ爪なら四個入りで150円台。
初めての一本なら110円で試す。傘立てに壊れた傘が三本以上あるなら、最初から764円。
説明書の差も地味に効きます。764円のセットには修理マニュアルが一枚入っていて、どの壊れ方にどの金具を使うかが絵で分かる。110円のほうは、パッケージ裏の小さな文字を読む。

爪は素手で曲げない。私の左手の親指の話

三本目のやり直しのとき、外した金具の爪を、つい素手で押しました。
ズキッ。
左の親指の腹から、ぬるっと血。紺色の布に小さな赤い点が二つ付いて、それはまだ残っています(泣)
爪金具の切断面と爪の先端は鋭利で、素手で爪を押し曲げてはいけない。軍手をはめて、爪はペンチで一つずつ。
軍手は最初から用意していたのに、暑くて外していた。書いていて耳が熱くなる。
道具は、ラジオペンチと普通のペンチの二本があると楽。ハトメ潰しはラジオペンチだと力が要る。爪は手では硬すぎて曲がらない。これは九本すべてで共通でした。

修理に出すか、自分でやるかの線引き

修理店の値段と、キットの値段

修理店の目安は、骨折れ1か所1,650円から、関節の修理1,650円、露先の縫い直し1,650円、露先の部品交換2,200円。相場としては2,000円から3,000円程度と案内する傘店もあります。
キットは110円か764円。単純な差額は千円以上。
ただし、キットで直せるのは鉄の骨の途中の折れ、露先、糸切れまでです。関節はサイズ次第、ろくろと根元の折れとグラスファイバーは店か買い替え。
この線を先に引いておけば、キットを買ってから空振りする場面が減ります。

直す価値のある傘、捨てていい傘

数千円の傘、もらいものの傘、子どもが気に入っている傘。この三つは、まずキットで試す価値があります。失敗しても部品代は110円、次に修理店という手が残る。
ビニール傘は、折れが一か所なら直す。二か所なら次へ。
グラスファイバーの折りたたみ傘は、キットに期待しない。
九本目のような傘は、最初から店に持ち込むほうが早い。

九本の傘が教えてくれたこと

日曜の16時。テーブルの新聞紙の上に、金具の切れ端と糸くずと、ゴミ袋に入った二本。
傘立てには七本が戻り、そのうち六本は今も現役です。
一本は翌週に折れて、一本は店で生き返った。
傘修理キットは、鉄の骨の傘を一本110円で救う道具で、それ以上でも以下でもない。
けれど、その一本が木の持ち手の傘や子どもの黄色い傘なら、110円と十五分の価値は、私が思っていたよりずっと大きかった。
左手の親指の傷は、二週間で消えました。紺色の傘の赤い点は、たぶん一生消えません(笑)

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この記事を書いた人

屋根の下の知恵袋TOKYOシェアライフ

都内シェアハウス住民によるリアルな生活ハック発信中。
節約、家事、収納、コミュニティづくりまで、みんなで暮らすからこそ生まれる知恵を発信してます。

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