月曜、洗面所の棚に八人分の籠が並んでいる
月曜の朝七時、洗面所の棚には八つの籠が並んでいます。中身はタオル。うちのシェアハウスは、タオルだけは各自で管理する決まりで、籠の厚みがその人の暮らし方をそのまま表しているんですよ。
分厚い籠が二つ、薄い籠が三つ、中くらいが三つ。私の籠は薄いほうから二番目で、中には小さめのバスタオルが四枚入っている。
共用の洗濯機が二台、予約は週二回まで
うちの洗濯機は二台で、一台は乾燥機付きのドラム式。壁の予約ボードに名前を書く仕組みで、一人が取れる枠は週に二回。
好きなときに洗えないという条件が、一人暮らしの部屋より厳しい。だから枚数の計算が真剣になるんです。
私の枠は月曜と木曜。月曜の朝に洗って、次に洗えるのは三日後。
枚数は、洗濯の間隔に一日足して、予備を一枚
毎日洗濯するなら三枚、二三日に一回なら三から四枚、週に一回なら五枚以上が目安。
私の式はもう少し単純で、洗濯の間隔の日数に一日足して、そこに予備を一枚。三日おきなら、三足す一で四枚、予備を入れて五枚。今は四枚で回していて、予備の一枚は季節で足します。
一人暮らしの部屋は干す場所が限られていて、梅雨や冬は乾くまでに時間がかかり、洗ったのにまだ乾いていない、が起こりやすい。
予備の一枚は、この、まだ乾いていない、のためにあります。
(四枚で足りなかった夜、三日前のを嗅いで、やめた)
そういう夜を一度でも経験すると、式に予備が入ります。
火曜、バスタオルをやめた人の籠は薄い
フェイスタオル二枚で全身を拭くセナ
薄い籠の持ち主のひとり、セナはバスタオルを持っていません。
「一枚で髪、一枚で体。二枚で終わるよ。乾くのも速いし」
風呂上がりの彼が、廊下でフェイスタオルを肩にかけているのを何度も見ました。髪は短め。
フェイスタオルで代用する場合、ベリーショートなら一枚で足り、セミロング以上なら髪用と体用に二枚に分けたほうがいい。
セナの籠にはフェイスタオルが八枚。二日に一度の洗濯で、一日二枚。式に当てはめると、二掛ける三で六枚に予備二枚。数は増えるけれど、干す幅も収納の厚みも、バスタオル一枚分より小さい。
中間サイズという逃げ道、ミニバスタオル
私がやめたのは、バスタオルそのものではなく、大きいバスタオルです。
無印良品のスモールバスタオルは60センチ掛ける120センチで、フェイスタオルとバスタオルのちょうど中間。
泉州のタオルメーカーはバスタオルとビッグフェイスタオルの間のサイズをミニバスタオルと呼び、洗濯の量が減って干す場所も収納も小さくなる、と説明しています。
33センチ掛ける100センチのミニサイズでバスタオル並みに吸う製品もあり、髪の長い人でも一枚で足りるという声がある。
私の四枚は、この中間サイズ。体を拭くには十分で、干すと幅はフェイスタオルとほぼ同じ。棚の籠が薄いのは、これが理由です。
水曜、雨。乾かないタオルが匂った
匂いの主はモラクセラ菌で、犯人は私だった
六月の水曜、二日続けて雨。室内の物干しに八人分の洗濯物が集まって、リビングの隣の部屋がもわっとしていました。
夜、風呂上がりに顔を拭いた瞬間、鼻の奥に雑巾の匂い。
(え、誰の…)
自分のでした!(泣)
この匂いの原因はモラクセラ菌。人の口や鼻の粘膜などあらゆる場所にいて、酸素、温度、湿度、エサ、水分の条件がそろうと爆発的に増える。乾いているときは分からず、水分を含むと臭う。普段の洗濯だけでは、石けんかすや皮脂、タンパク質の汚れが残って蓄積し、それが菌を増やす。
月曜に洗ったタオルが、雨で二日乾かず、湿ったまま棚に入っていた。条件がそろいすぎです。
六十度の湯と酸素系漂白剤で、匂いは戻せる
その夜のうちにやったのは、洗面器に給湯器の最高温度の湯を張って、タオルを沈めること。
モラクセラ菌は60度以上の湯に20分以上つけると死滅する。温度が下がるので途中で湯を足し、つけ終わったらすぐ洗濯して干す。濡れたまま置くと菌がまた増えて匂いが戻る。
翌朝、乾燥機で仕上げたら、匂いは消えていました。
色柄物には粉末の酸素系漂白剤が使えて、40度から50度の湯に溶かして30分から1時間つけてから洗う。皮脂汚れも分解される。
週に一度、タオルだけ粉末の酸素系漂白剤と一緒に洗うだけでも匂いは防げる。
以来、木曜の洗濯には酸素系漂白剤を一さじ。使ったタオルはすぐタオルバーに広げて乾かす。丸めて放置しない。
これだけで、雨の週も匂わなくなりました。
木曜、毎日洗う派の言い分
三日使ったタオルの菌は数万から数億
分厚い籠の持ち主、ヒナは毎日洗う派です。美容の仕事をしていて、顔に触れる布に妥協がない。
「一回使ったら、もう濡れ雑巾と同じ。私はそう思ってる」
言い過ぎだと思っていた私に、彼女が見せた数字がこれでした。
三日間洗濯せずに使い続けたタオルの細菌数は、数万から数億個に増えるという調査データがある。水分と皮脂がそろった使用後のタオルは、菌にとって最高の環境。
ヒナは籠にバスタオルを三枚。毎日洗って、雨の日の予備が一枚。洗濯機の予約枠が足りない分は、部屋に小さな洗濯機を自分で買って置いています。ここまでやる人は、うちで一人。
毎日洗えない私の落としどころは、使ったら広げて乾かし、二日で洗う。それが式の、間隔に一日足す、の意味でもあります。
半年で繊維の奥に菌の膜ができる
もう一つ、ヒナに教わって調べ直した話。
花王の研究所が家庭のタオルを調べたところ、半年の使用でタオルの平織り部に菌のかたまり、バイオフィルムが形成されていた。手指の菌とは違う菌叢で、洗濯でも容易に落ちず、くすみの原因になっていると推察されている。
匂いが落ちても、タオルは半年で別物になっている。これが買い替えの話につながります。
金曜、乾燥機の日
高温で殺菌、パイルは立つ、ただし縮む
金曜はセナの枠で、彼はドラム式の乾燥まで一気にかけます。
取り出したフェイスタオルをパンパンと振って籠に入れる、その手つきが慣れていて、私は横で見ていました。
モラクセラ菌は熱に弱く、60度以上で10分から20分乾燥させると死滅する。乾燥機を使うと殺菌と同時にパイルに空気が入り、ふわふわに仕上がる。まとめ洗い派ほど乾燥機が向く。
コインランドリーの乾燥機も高温で、バスタオルなど大きいものや枚数が多いときに向いている。
代わりに、綿は少し縮む。私のミニバスは半年で縦が二センチ短くなりました。
(縮んだ…でも臭くない)
それでも匂いとの取引なら、縮みのほうを選びます。
天日より陰干し、柔軟剤は控えめに
乾燥機を使わない日の干し方は、ベランダの陰。
紫外線の強い時期に長時間天日に干すと、パイルが劣化し、必要な水分まで抜けてゴワゴワになる。日陰で干すほうがいい。
洗浄力の強すぎる洗剤、柔軟剤の使いすぎ、詰め込み洗い、高温乾燥や直射日光の当てすぎは寿命を縮める。
柔軟剤を毎回入れていた頃、私のタオルは香りは良くて、水を弾いていました。風呂上がりに体の上を滑る感触で気づいた。今は三回に一回。
土曜、色を揃えると棚が静かになる
八人の籠で分かった、たたみ方と色の話
土曜の午後、掃除当番で洗面所の棚を拭くと、八つの籠が全部見えます。
色が揃っている籠は、どれも薄く見える。柄や色がばらばらの籠は、同じ枚数でも厚く見えて、取り出すときに崩れる。
同じ色、同じブランドで揃えると管理が楽になり、部屋もすっきり見える。
私は白のミニバス四枚を、三つ折りにして縦に立てて入れています。上から順に取らず、いちばん奥から取る。こうすると四枚が均等に減って、一枚だけ先にへたることがない。
セナは紺のフェイスタオル八枚。ヒナは生成りの三枚。棚を拭きながら、この三つの籠だけが静かに見えるな、と思っています。
日曜、買い替えと選び方
寿命は洗濯三十回、家庭なら半年から一年
ホテルなどの施設ではタオルの寿命を洗濯30回程度としていて、家庭では30回を超えても使えるものの、交換の目安は一年程度。
一枚を毎日使って洗えば一、二か月、三枚をローテーションすれば半年から一年。
四枚で回す私の場合、一枚あたり月に八回ほどの洗濯。四か月で三十回に届きます。
年末の大掃除で古いタオルを使い切り、新しいタオルで新年を迎えるサイクルにすると、迷わず入れ替えられる。
うちも去年から、十二月の最終週に八人でタオルを一新しています。古いのは雑巾になって、大掃除を手伝ってから出ていく。
はぁ…と息を吐きながら新しい四枚を籠に立てる、あの朝の指先の感触は、一年で二番目くらいに良い家事です(笑)
薄手の綿かマイクロファイバーか、選び方の線
選ぶときに見るのは、厚みと素材。
速乾性を最優先に、薄手から中厚手の綿100パーセントが日常使いに向く。
厚手のふかふかは肌に沈むけれど、干す場所の少ない一人暮らしでは乾かない日が増える。
雑誌の検証では、タオルを短冊に切って色水を吸う高さを測り、洗濯後六時間の乾燥率も比べていて、ミニバスタオルの最上位は一般的なタオルの六倍の吸水をうたう製品だった。ホテル仕様の厚手は肌触りが良い一方、速乾は物足りない評価。
マイクロファイバーは速乾で安く、ポリエステルながら触り心地も悪くない。
ただ、熱に弱いので乾燥機との相性は落ちる。乾燥機派なら綿、部屋干し派ならマイクロファイバーか薄手の綿。線はここです。
値段は、中間サイズの綿なら一枚千円前後。四枚で四千円になる。半年に一度の入れ替えなら、月にコーヒー一杯分です。
一人暮らしのバスタオルは、ミニバス四枚で回る
八つの籠を半年眺めて、私の答えはこうです。
大きいバスタオルはやめて、中間サイズを四枚。洗濯は二日に一度、使ったらすぐ広げる。雨の週は乾燥機かコインランドリーの高温、木曜には酸素系漂白剤を一さじ。干すのは陰、柔軟剤は三回に一回。色は一色で、奥から取る。半年か年末に、四枚まとめて入れ替える。
毎日洗えるなら、ヒナの三枚。髪が短いなら、セナのフェイスタオル八枚。
籠の厚みは、その人の洗濯の間隔と同じ厚み。私のはこの先も薄いままでいい。

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