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スチールラック転倒防止は100均で完結する|効く順に並べた対策

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震度4の夜、共用ラックが五センチ歩いた

深夜二時すぎ。緊急地震速報が、六部屋ぶん一斉に鳴った。
廊下に飛び出したとき、共用スペースの奥からぎしっと嫌な音がした。
高さ百八十センチのスチールラック。上段に積んだ土鍋とホットプレートが、左右にゆっくり振れている。
揺れが収まってから床を見て、喉が鳴った。
脚の跡が、元の位置から五センチずれていた。ラックが、歩いていた。

落ちたのは缶詰と、住人の油断

被害は缶詰が三つとマグカップ一個。がしゃんという音のわりに、片付けは十分で終わった。
ただ、問題はそこじゃない。
あと少し揺れが大きければ、あの棚は前に倒れていた。真下は通路。夜中にトイレへ向かう動線の脇に、鉄の塔が立っていたことになる。
翌朝、住人五人でどうするか話した。条件は二つに絞られた。壁に穴は開けられない。金はかけたくない。

穴を開けられない部屋に、教科書どおりの固定はない

組み立て説明書に書いてある固定方法は、ほぼ全部が壁や柱にネジで留めるやり方。賃貸でこれをやったら、退去時に請求書が飛んでくる。
だから壁を使わない前提で、一から組み直した。
百円ショップを三軒回って、使えたものと金の無駄だったものが、きれいに分かれた。三年経った今も、そのときの構成のまま立っている。

100均で買うべきもの、棚に戻していいもの

 

耐震ジェルマットは、枚数と下ごしらえで決まる

一袋に四枚入って百十円。透明で厚さ五ミリほどの、やわらかいシート。
脚の裏に貼ると、床とラックがほぼ接着した状態になる。横揺れで滑り出すのを、最初の段階で止める役目。
ただし一枚で支えられる重さはたかが知れている。四本の脚に一枚ずつ、では明らかに足りなかった。
うちは脚一本につき二枚を並べて貼り、八枚使った。
貼る前に、床とジェルの両面をアルコールシートで拭く。埃が一粒挟まるだけで食いつきが変わる。ここを面倒がった住人のラックは、半年で全部剥がれていた(笑)

結束バンドが、いちばん働いた

正直、期待していなかった道具。太さ四ミリのものが百本で百十円。
スチールラックの弱点は、横から押されたときに平行四辺形へひしゃげること。支柱と棚板の接合部が、思ったより遊ぶ。
そこで背面にワイヤーを対角線でクロスさせ、四隅を結束バンドで支柱に縛った。
押したときの感触が、はっきり変わる。ぐらっと逃げていたのが、押し返してくる硬さになった。
筋交いと同じ理屈を、百円で真似ているだけ。専用のブレース金具を買う前に、これを試す価値はある。

前面のゴムバンドで、落下を先に止める

倒れる前に、物が落ちる。落ちた瞬間に重心が動いて、揺れがさらに大きくなる。
連鎖の一段目を潰すために、各段の前面に平ゴムを一本ずつ渡した。支柱の左右にフックを引っかけて、ぴんと張るだけ。
食器も瓶も、手前に飛び出さなくなった。取り出すときはゴムを指で押し下げる。慣れると一秒。
ワイヤーネットを結束バンドで縛って柵にする手もある。見た目は倉庫っぽくなるけどね。

百円の突っ張り棒に、耐震性はない

これは言い切っておく。
カーテンや収納に使う細い突っ張り棒と、家具転倒防止用の耐震ポールは、まったく別の製品。
見た目が似ているせいで、天井と棚のあいだに一本挟んで安心してしまう人がいる。支えられる重さの桁が違う。地震の瞬間に鉄の棚が持つ勢いを、あの細さで受け止められると思わないほうがいい。
すき間を埋めたいなら、後で書く別の方法を使う。

L字金具が効くのは、小さいラックだけ

百円ショップのL字金具は、厚みが一ミリ前後。
幅六十センチ以下の低いラックを、木製の柱や別の家具に共締めするくらいなら働く。
高さ百八十センチの本体を支えろというのは無理な相談で、金具のほうが先に曲がる。四枚買って、二枚しか使わずに引き出しへ沈んだ。

一円もかけずに効く、積み替えという手

 

重いものを下二段へ寄せる

道具より先にやるべきはこれ。
うちの棚は、目線の高さに土鍋とホットプレートが載っていた。重心が高いほど、小さな揺れで大きく振れる。
土鍋を最下段へ。乾物と紙皿を最上段へ。作業時間は十五分。
その後に来た同じくらいの揺れで、振れ幅が目に見えて小さくなった。費用ゼロ。たぶんこれが一番効く。

奥行きの浅いラックは、前へ倒れる

スチールラックの奥行きは三十五センチ前後が主流。高さ百八十に対して、この細さはかなり不利。
倒れる方向は、ほぼ前と決まっている。物を取るとき、人は必ず手前に引くから。使っているうちに荷物が前寄りに偏っていく。
奥に重いもの、手前に軽いもの。並べる順を逆にするだけで、前へのめる力が減る。
最下段の奥に、二リットルの水を二本。重しとして静かに働いてくれる。

キャスターは外す。ロックでは止まらない

キャスター付きで使っている人、いますぐ外していい。
ロックは車輪の回転を止めるだけで、首振りの機構まで固定されない製品が多い。揺れると、その場で小刻みに動き続ける。
アジャスターに交換するのが一番早い。外せない構造なら、車輪の前後にゴムのくさびを噛ませる。ドアストッパー用のものが百円ショップにある。あれで十分止まった。

壁に固定できない部屋の、次善の一手

 

二台を連結して、接地面を倍にする

一台で立たせようとするから倒れる。
二台を横に並べ、支柱同士を上中下の三か所で結束バンドで縛った。それだけで、底面の広い一つの家具に化ける。
うちは共用の三台を全部つないで、壁みたいな塊にした。今は住人が体重をかけて寄りかかっても、ほとんど動かない。
連結できる相手がいるなら、これが最短距離。

天井とのすき間を、埋める

ラックの上と天井のあいだが十センチ以内なら、そこに詰め物をする。
使ったのは季節外れの毛布。畳んで軽く押し込む。ラックが前に傾こうとしても、天井に引っかかって角度がつかない。
段ボール箱でも代用できるが、空だと潰れる。中に衣類を詰めて硬さを作る。
すき間が三十センチも空いていたら、この手は諦める。上段を空にして、棚そのものを低く使うほうが早い。

床の材質で、効く道具が入れ替わる

フローリングなら、ジェルマットがよく食いつく。
カーペットや畳では話が変わる。粘着が繊維に負けて、ほとんど意味をなさない。この場合は、脚の下に硬い板を一枚敷いて、板と脚のあいだにジェルを挟む。板が沈み込みも防いでくれる。
畳の部屋でジェルだけ貼って安心していた住人がいた。半年後に確認したら、脚が畳にめり込んで、棚全体が奥に傾いていた。はぁ…と声が出た。

効いているのか、どう確かめるか

 

手のひらで押して、戻り方を見る

対策したら、必ず自分の手で試す。
胸の高さあたりを、両手でゆっくり押す。強くやると本当に倒れるので加減して。
手を離したあと、ゆらゆらと三回以上揺れ戻るなら、まだ足りない。一往復で止まれば合格。
数値のカタログより、この手応えのほうが正直だと思う。

ジェルは半年で死ぬ

貼りっぱなしにしないこと。
埃を吸って粘着が落ち、床と脚のあいだに薄い隙間ができる。半年に一度、剥がして水で洗い、乾かしてから貼り直す。粘りは戻る。
戻らなければ交換。百十円で買えるものを、惜しむ理由がない。
結束バンドも同じ。紫外線と乾燥で硬くなって、白く濁ったら替えどき。指で弾いてかつんと乾いた音がしたら、もう粘りは残っていない。

100均で足りる家と、足りない家

 

高さ百五十センチが分かれ目

高さ百五十センチ以下で、上段が軽いラック。この条件なら、百円ショップの道具と積み替えだけで立つ。断言できる。
超えるなら、ジェルマットも結束バンドも補助部品でしかない。特に百八十センチ級で、上段に重いものを載せる前提の人。ここは金を出す場所。
うちの共用ラックはまさに百八十だった。だから連結と天井のすき間埋めで、高さの不利を打ち消しにいった。

金をかけるなら、ポール一組だけでいい

家具転倒防止用の耐震ポールは、二本組で二千円前後。天井の下地がある位置に立てないと働かないので、設置場所は選ぶ。
百円ショップで組んだ土台に、これを一組足す。うちの答えはそこで止まった。総額は三千円に届かない。
三年で震度四を二回受けて、ラックは一度も倒れていない。

先週、住人のミオが引っ越しの荷造りでラックを一段空にした。
空いた棚を見上げてから、彼女は脚元を指さした。
「これ、まだ生きてる?」
しゃがんで爪を差し込むと、ぴたりと吸い付いて離れない。
(まだいけるな)
声には出さず、立ち上がって上段に毛布を戻した。天井とのすき間が、また埋まった。

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この記事を書いた人

屋根の下の知恵袋TOKYOシェアライフ

都内シェアハウス住民によるリアルな生活ハック発信中。
節約、家事、収納、コミュニティづくりまで、みんなで暮らすからこそ生まれる知恵を発信してます。

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