金曜の朝、着るものがなかった
洗濯かごの中身が、ベッドの上まで溢れていた日。
クローゼットを開けて、ハンガーを左から右へ滑らせる。空。
下着の引き出しを開ける。残り一枚。
今日、何着ればいいの
結局、部屋着に近いカットソーで出かけた。電車の窓に映った自分を見て、少し猫背になった。
シェアハウスの洗濯機は共用で三台。順番待ちが発生する。それを言い訳に、四日ためた結果だった。
住人の女性たちが、それぞれ違う頻度で回している。毎日の人、週二の人、週一の人。
三年観察して、破綻しない組み方には共通点があった。
週二回が、いちばん破綻しにくい
先に結論を書く。
一人暮らしなら、週二回が現実的な着地点になる。
毎日は、時間の負担が大きい。週一は、量と匂いの問題が出る。
うちの住人で長く続いているのは、水曜と日曜、あるいは火曜と土曜という組み方をしている人だった。
頻度より、下着の枚数で決まる
これが核心。
洗濯の頻度は、手持ちの枚数が決めている。
下着が七枚あれば週一で回る。四枚しかなければ、三日に一度は洗うしかない。
うちの住人が金曜に困ったのは、頻度の問題ではなく、枚数の問題だった。
週二回で組むための、枚数
下着は、十枚あると余裕が出る
週二回、つまり三日から四日に一度の洗濯。
その間の日数プラス、洗って乾くまでの一日。合わせて五枚が最低ライン。
うちの住人は十枚持っている。急に洗濯できない日があっても、崩れない。
生理の時期は、消費が増える。この余裕が効いてくる。
タオルは、意外と量を食う
バスタオル一枚が、洗濯容量の中でかなりの割合を占める。
毎日替えると、週に七枚。これだけで容量の半分近くになる。
うちの住人は、フェイスタオルで体を拭く方式に変えた。かさばらず、乾きも早い。
バスタオルを二日使う人もいる。使ったあとにきちんと干せば、匂いは出にくい。
部屋着を、二着以上
見落とされやすい部分。
家にいる時間が長いほど、部屋着の消費が増える。
うちの住人が、部屋着一着で回そうとして、洗濯の日に着るものがなくなった。
二着あれば、片方が乾くまでもう片方を着られる。
ためたときに、何が起きるか
匂いが、洗っても取れなくなる
汗を吸った衣類を、湿ったまま重ねて放置する。
菌が増えて、あの雑巾のような匂いが出る。
一度この匂いが定着すると、通常の洗濯では落ちない。
うちの住人のシャツが、乾いたあとに嗅ぐと匂った。四十度以上の湯に十分浸けてから洗って、ようやく戻った。
かごの中で、湿気がこもる
プラスチックの密閉されたかごが、最も危ない。
通気性のあるかごに替えるだけで、匂いの発生が遅くなる。
うちは、網目のかごを使っている住人と、密閉型を使っている住人がいて、匂いの出方に明らかな差があった。
汗をかいた日の服は、一度ハンガーにかけて乾かしてから、かごに入れる。この一手間が効く。
詰め込むと、汚れが落ちない
ためた量を一度に洗おうとすると、洗濯機が満杯になる。
水と洗剤が衣類のあいだを流れないので、汚れが剥がれない。
うちの住人が、洗ったはずのシャツの襟に灰色の線が残っていた。詰め込んだ回の話。
洗濯容量の七割まで。それを超えるなら、二回に分ける。
週二回の、曜日の組み方
三日と四日に分ける
均等に割ると、水曜と日曜、あるいは木曜と日曜。
うちの住人は、平日に一回、休日に一回という形が多かった。
平日の回は量が少ないので、短時間で終わる。休日の回で、タオルやシーツをまとめて処理する。
夜に回して、朝取り込む
共同住宅だと、夜の運転音が問題になることがある。
うちは二十一時までという決まりにしている。
夜に洗って部屋干しし、朝には乾いている。この流れが定着すると、休日を洗濯に使わなくて済む。
乾燥機能があるなら、就寝中に完結する。
天気に、予定を寄せない
外に干す前提だと、雨の日に予定が崩れる。
崩れた分が翌週に持ち越されて、量が増える。
うちの住人は、室内干しを基本にして、天気がよければ外に出すという順序にした。予定が狂わなくなった。
手洗いが要るものを、どう扱うか
下着を、まとめて洗う日
形を保ちたい下着は、洗濯機で洗うと傷む。
うちの住人は、入浴のついでに手洗いしている。二分で終わる。
洗濯ネットに入れて機械で洗う方法もある。ネットの目が細かいものを選ぶ。
週に二回の洗濯とは別に、この作業を毎日の入浴に組み込むと、負担が分散する。
ニットとおしゃれ着
専用の洗剤で、手洗いか、洗濯機の弱いコースで洗う。
うちの住人が、普通のコースで洗って、セーターが子ども用のサイズになった。あのときの表情は忘れられない。
頻度は、着るたびではなく、数回着てから。ニットは毎回洗うと傷む。
週二回の洗濯とは別枠で、月に一度まとめて処理する形にしている人が多い。
洗濯表示を、買うときに見る
手洗い指定の服が増えると、洗濯の負担が上がる。
うちの住人は、服を買うときにタグを確認するようになった。機械で洗えるものを優先する。
これで、週二回の枠内に収まるようになったと言っていた。
部屋干しを、成立させる
間隔を空ける
洗濯物同士がくっついていると、乾かない。
拳一つぶんの間隔を空ける。
うちの住人が、竿にぎゅうぎゅうに干して、翌朝まだ湿っていた。乾かない時間が長いほど、匂いが出る。
間隔が取れないなら、二回に分けて干す。
風を、当てる
扇風機かサーキュレーターを、洗濯物の下から当てる。
うちの実感で、乾く時間が半分になった。
換気扇を回すのも効く。浴室で干して、換気扇を回しっぱなしにする方法を使っている住人がいる。
空気が動いているかどうかが、部屋干しの成否を分ける。
厚手のものを、外側に
干す位置にも順番がある。
厚手のものを両端に、薄いものを中央に。空気が通りやすい配置になる。
うちはこれを知ってから、乾き方のむらが減った。
ジーンズやパーカーは、裏返して干す。ポケットの部分が内側だと乾かない。
共同住宅での、追加の事情
順番待ちを、避ける時間帯
うちの共用洗濯機は、夜十九時から二十一時に集中する。
この時間を外すと、待たずに使える。
早朝、あるいは平日の日中。在宅の時間が取れる人なら、この時間帯に回す。
待ち時間があると、洗濯が億劫になる。頻度が落ちる原因になる。
洗濯物を、放置しない
共用だと、終わったのに取り出さない人が出る。
次の人が使えない。あるいは、他人の洗濯物に触れることになる。
うちは、終了時刻をアプリで管理する形にした。終わったら通知が来る。
自分の分は、終わってすぐ出す。この基本が守られると、全員の頻度が保てる。
干す場所の取り合い
共用のベランダは、先着順になりがち。
うちは、各自が部屋干しできる環境を整える方向に転換した。突っ張り棒と、折りたたみの物干しを各部屋に。
これで、ベランダの取り合いがなくなった。
先週、金曜の夜。
ミオが洗濯かごを持ってランドリーに来た。中身は、かごの半分ほど。
「水曜に回したから、今日は少ないんだよね」
洗濯機に入れて、蓋を閉める。三十分後、彼女は部屋の突っ張り棒に、拳一つぶんの間隔で服を並べていった。
翌朝、そこには何も掛かっていなかった。

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