アイスを買った帰り道、袋の中で溶けはじめた
シェアハウスのみんなで食べようと、コンビニでアイスをまとめ買いした。家までは歩いて15分。会計のとき、なんとなく不安になってレジ横を見回したが、保冷剤らしきものは見当たらない。
都内のシェアハウスに住むMさんが、そのときのことを話す。「レジで、保冷剤ありますかって聞くのも、なんか申し訳ない気がして。結局そのまま持って帰ったんですけど、途中で袋がじわっと湿ってきて。家に着いたら、パッケージがふにゃふにゃになってて。あー、やっちゃったって、玄関で立ち尽くしました」。
コンビニで保冷剤。検索する人は、Mさんのように急に必要になって、今すぐ手に入るかを知りたいことが多い。先にはっきり言う。コンビニに保冷剤を期待して行くと、たいてい空振りする。売っている店舗は限られ、無料でもらえるかも店次第だ。でも、コンビニには保冷剤より頼れる代用品がある。何が買えて何が買えないのか、代わりに何を使えばいいのかを、Mさんの溶けたアイスをたどりながら整理していく。
保冷剤を置いているコンビニは、ごくわずか
まず、期待値を正しく設定したい。コンビニで保冷剤を売っている店舗は、思っているよりずっと少ない。
セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンといった大手チェーンでも、保冷剤を常設商品として置いていることは、あまりない。ある調査では、全国のコンビニで保冷剤を販売している店舗は、全体の1割にも満たないとされている。夏場に、アイスコーナーや冷却グッズの特設棚で、小型のジェルタイプが並ぶことはある。ネッククーラーや冷感タオルと一緒に置かれていることもある。でも、どの店舗にも必ずある、というものではない。
つまり、コンビニに保冷剤を買いに行くのは、賭けに近い。特に駅ナカやオフィス街の小型店舗は、売り場が限られていて、冷却グッズ自体を扱っていないことが多い。あると思って探し回って、結局見つからずに時間を無駄にする。これが、保冷剤をコンビニに期待する人の典型的な結末だ。
そして最大の落とし穴、常温という壁
売っていても、凍っていないことがある
ここが、この記事で最も伝えたいことだ。運よく保冷剤が売っていても、それが凍っているとは限らない。
店舗によっては、凍らせた状態で売っているところもある。でも、多くの保冷剤は、家で凍らせて使うことを前提にした常温の商品として陳列されている。今すぐ冷やしたいのに、常温の保冷剤を買っても意味がない。急いでいる場面では、これほど脱力する買い物もない。
100円ショップやホームセンター、スーパーでも保冷剤は買えるが、これらの店でも凍った状態の保冷剤は、基本的に手に入らない。今すぐ冷やしたいという緊急のニーズに、常温の保冷剤は応えられない。だから、急いでいるときは、そもそも保冷剤という商品名で探すこと自体をやめたほうがいい。発想を切り替える。ここからが本題だ。
無料でもらえるかは、店次第
保冷剤を無料でつけてくれるかどうかも、店舗によって対応が分かれる。
アイスクリームや冷凍食品、要冷蔵のスイーツを買ったとき、店員に声をかけると、小さな保冷剤をつけてくれる店舗もある。ただし、すべての店が対応しているわけではない。レジ袋の有料化の影響もあって、無料提供を控えている店も増えている。
とはいえ、聞いてみる価値はある。どうしても必要なら、会計のときに保冷剤はありますかと一言聞く。快く対応してくれる店も多い。Mさんが遠慮して聞かなかったのは、ちょっともったいなかった。ダメで元々、と思って聞いてみるほうが、溶けたアイスを抱えて帰るよりずっといい。
コンビニで買うべきは、保冷剤ではなくこの3つ
凍ったペットボトルが、最強の代用品
コンビニで今すぐ冷やしたいなら、いちばん頼れるのがこれだ。冷凍コーナーに並んでいる、凍ったお茶やスポーツドリンク。
確実に凍っていて、どのコンビニにもたいてい置いてある。2時間から3時間ほど冷たさを保つので、保冷剤として十分に機能する。そして最大の利点が、溶けたらそのまま飲めることだ。冷やす役目を終えたあと、ゴミにならずに水分補給になる。無駄がない。
使い方は簡単で、冷やしたいものの隣にペットボトルを立てかけるだけ。結露で袋の中が濡れるのが気になるなら、ハンカチやタオルで包むといい。保冷剤を探して店内をさまようより、冷凍ドリンクを1本買うほうが、確実で速い。
袋入りの氷は、冷却力が段違い
もっと強く冷やしたいなら、氷だ。コンビニには必ずと言っていいほど、袋入りの氷が置いてある。
コンビニの氷には、グラス入り、カップ入り、袋入りのかち割り氷、そして板氷という4つのタイプがある。保冷剤の代わりとして選ぶなら、板氷がおすすめだ。空気に触れる面積が少ないので、かち割り氷より溶けにくい。1.7キロほどの大きさで、コスパも良い。かち割り氷でも、隙間なく敷き詰めれば十分に使える。
氷は冷却力が強く、広い範囲を冷やすのに向いている。クーラーボックスや保冷バッグと組み合わせれば、真夏でもしっかり冷やせる。ただし、溶けたら水になるので、食品が濡れないようビニール袋に入れるといった工夫はいる。
瞬間冷却剤は、体を冷やす用
夏場のコンビニには、叩いて使う瞬間冷却剤が置かれていることもある。袋を叩くと化学反応で冷たくなる、あれだ。
凍ったペットボトルや氷に比べると、保冷時間は短い。食品を長く冷やす用途には向かないが、熱中症対策や、お弁当を数時間だけ冷やしたいときには十分使える。首元や脇の下、足の付け根に当てると、体温が下がりやすい。ただし、夏季限定だったり、店舗によって扱いが違ったりするので、これも確実ではない。使うときは、水漏れを防ぐためにビニール袋に入れておきたい。
用途で選ぶ、コンビニ調達の正解
急いでいる場面ごとに、何を買えばいいのかを整理しておく。
アイスや冷凍食品を持ち帰りたいなら、凍ったペットボトルを一緒に買って、袋の中で食品に添える。持ち帰りの時間が長いなら、板氷を選ぶ。
熱を出した人を冷やしたい、熱中症が心配、というときは、瞬間冷却剤があればそれを、なければ凍ったペットボトルや冷凍のドリンクを、タオルに包んで首元に当てる。応急処置としては十分に働く。
そして、計画的に使うなら、コンビニではなく100円ショップだ。手のひらサイズの保冷剤が豊富で、価格も安い。ただし常温なので、家の冷凍庫で凍らせる時間がいる。急ぎならコンビニの代用品、備えるなら100均で買って凍らせておく。この使い分けが賢い。
シェアハウスの冷凍庫に、保冷剤を常備した話
Mさんは、あの溶けたアイスのあとどうしたか。
100円ショップで保冷剤をいくつか買ってきて、シェアハウスの共用冷凍庫に常備することにした。「凍らせた保冷剤を、常に何個か冷凍庫に入れておくんです。買い物に行く前に、エコバッグに1個入れていく。それだけで、アイスも肉も無事に持って帰れるようになって」。
共用ならではの発見もあった。「共用冷凍庫に保冷剤ストックって書いた場所を作ったら、誰が買い物に行くときも使えるんですよ。誰かがまとめ買いするときも、そこから持っていける。しかも、使い終わったらまた凍らせて戻すだけだから、何度でも使える」。急にアイスを買いたくなった日も、コンビニで保冷剤を探してうろうろすることはなくなったという。
見えてきたのは、コンビニで保冷剤を探すのは分が悪い賭けだという事実だった。置いている店舗は限られ、あっても常温のことがある。急ぐなら、凍ったペットボトルか氷を買う。これなら確実に手に入って、確実に冷たい。そして次からは、100均の保冷剤を凍らせて常備しておく。溶けかけたアイスを抱えて玄関で立ち尽くしたあの日から、Mさんのエコバッグには、いつも凍った保冷剤が一つ入っている。

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