天板の上から、ものが消えた日
シェアハウスの一室で、住人がデスクの模様替えをしていました。二十七インチのモニターが二台。土台とアームが天板の奥半分を占領している。
キーボードを置くと、もう手前しか空いていない。ノートを広げる場所がない。
この机、机として機能してないな
そこから始まった試行錯誤が、二か月続きました。結論として、賃貸で上から吊るすなら選択肢は三つ。天井の下地を狙った直付け、壁面への固定、そして床から天井へ突っ張るポール。うちで実際に試したのは壁面への固定、そして床から天井へ突っ張るポールです。
天井から吊るす前に、下地を確認する
石膏ボードだけの天井には、絶対に固定しない
これが大前提。日本の住宅の天井は、多くが石膏ボードです。厚さ九ミリから十二ミリ程度。
ボードだけにネジを打つと、数キロの荷重で抜けます。モニターとアームで十キロを超えるので、確実に落ちる。
うちの住人が知り合いから聞いた話では、就寝中に落下して枕元に突き刺さった例があるそうです。ゾッとする。
下地の木材を探す道具が要る
天井裏には野縁という木材が三十センチから四十五センチ間隔で走っています。ここにネジが届けば固定できる。
下地探しの道具は千円台。細い針を刺して、木材に当たるかどうかを確かめるタイプが確実です。センサー式もありますが、断熱材が入っていると誤反応することがある。
賃貸では、そもそも穴を開けられない
天井にネジ穴を開けると、退去時の原状回復の対象になります。壁のピン穴とは扱いが違う。
うちは賃貸なので、この時点で天井直付けが消えました。持ち家か、貸主の許可が取れる場合だけの選択肢です。
壁掛けに切り替えると、ぐっと現実的になる
壁の下地は、天井より探しやすい
壁の中には間柱が四十五センチ間隔で入っています。窓枠やコンセントの位置から見当がつけられる。
うちの住人はここを狙って、壁掛け式のアームを検討しました。ただし賃貸なので、やはり穴の問題が残る。
ディアウォールという逃げ道
床と天井の間に木材を突っ張り、その柱にアームを固定する方法です。壁にも天井にも穴を開けない。
ツーバイフォー材の両端に専用パーツをはめ、バネの力で突っ張る。うちの住人はこれを選びました。材料費は木材とパーツで三千円台。
柱にアームを取り付けるには、木材に直接ネジを打ちます。柱自体は自分のものなので、穴が残っても問題ない。
柱一本では、揺れる
実際にやって分かったことです。柱が一本だと、モニターを動かしたときに全体がぐらつく。
二本立てて、上部を横木で繋ぐと安定しました。ここまでやると簡易的な壁ができるので、棚も追加できます。
突っ張り式のモニターポールという選択
専用製品なら、組み立てが早い
床から天井へ突っ張る、モニター取り付け専用のポールが市販されています。うちが二番目に試したのがこれ。
天井の高さに合わせて長さを調整し、上部のパッドを押し付けて固定する。設置は三十分程度で終わりました。
設置面の広さが、安定を決める
天井に接する部分の面積が広いほど、荷重が分散されて安定します。小さいパッドの製品は、時間が経つと天井材にへこみが残る。
うちは天井側に厚めの板を挟みました。二百円の合板で、跡が付きにくくなる。
床がカーペットだと、沈む
柔らかい床材の上に立てると、下側が徐々に沈んで突っ張りが緩みます。
うちのフローリングでは問題ありませんでしたが、カーペットの部屋に置いた住人は、二週間ごとに締め直していました。板を一枚敷くと改善します。
定期的な増し締めが要る
どの方式でも、時間とともに緩みます。月に一度、上部の固定を確認する習慣を作る。
うちは月初の掃除のときに、ポールを揺すって確認するようにしました。
落下を防ぐ、二つの保険
耐荷重は、実重量の二倍で見る
アームの耐荷重が十キロなら、乗せるモニターは五キロまで。表示ぎりぎりで使うと、経年でガタが出たときに危ない。
モニターの重量は仕様表で確認できます。スタンドを外した本体重量を見ること。
ワイヤーで、二重に留める
うちがやっている対策です。モニターの背面とポールの上部を、細いワイヤーで結んでおく。
万一アームが外れても、床まで落ちない。数百円の材料で、寝ている間の不安が消えます。
地震のときを、想像しておく
上から吊るす構造は、揺れたときに振り子のように動きます。デスクの前に座る位置と、モニターの落下範囲が重なるかどうか確認する。
うちの住人は、寝る場所の真上には絶対に配置しないというルールを自分に課しました。
配線を、どう処理するか
上から吊るすと、ケーブルが空中で垂れ下がります。これが想像以上に見苦しい。
ポールに沿わせて、結束バンドかスパイラルチューブでまとめる。うちは黒いポールに黒いケーブルを添わせて、ほぼ見えない状態にしました。
電源タップの位置も先に決めておく。ポールの根元に固定すると、コードの長さが足ります。
モニターを動かす前提なら、ケーブルに余裕を持たせる。ぴったりの長さだと、角度を変えたときに引っ張られて抜けます。うちで一度、画面が真っ暗になって焦りました。
視線の高さが、思ったより変わる
上から吊るすと、画面が高くなりすぎる
これが盲点でした。天井から下げる構造だと、調整幅が上寄りになりがち。
画面の上端が目の高さ、というのが基本です。それより高いと、顎が上がって首の後ろが張る。
うちの住人は最初、目線より十センチ高い位置に設置していました。三日で首が痛くなって、下げ直しています。
アームの可動範囲を、購入前に確認する
ポール式は、上下の調整が可能な範囲が製品によって違います。天井が高い部屋では、十分に下げられない製品もある。
うちの天井は二百四十センチ。ポールの下端から何センチまで下げられるか、仕様を見てから買いました。
やめておいたほうがいい場合
天井が石膏ボードのみで、下地の位置が確認できない。この場合は無理をしない。
天井が高すぎる、あるいは斜め天井になっている部屋も難しい。突っ張り式は垂直な面が前提です。
モニターが十キロを超える大型機の場合も、上から吊るすリスクが上がります。素直に机の上のアームか、頑丈な壁掛けを検討する。
そして、そもそも天板を空けたいだけなら、奥行きのある机に替えるほうが安く済むことがあります。うちの住人は最終的に、ポールを導入したうえで机も奥行き七十センチのものに買い替えました。
天板が空いた、その後
二か月かけて、住人のデスクは変わりました。ポールが一本、天井まで伸びていて、モニター二台がその上で浮いている。
手前にはノートと、コーヒーと、キーボード。書類を広げても余裕がある。
朝、机に着いてノートを開く。以前は場所を作るところから始まっていた動作が、そのまま始められるようになった。
穴を開けずに済んだのが、賃貸暮らしとしては何よりでした。

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