模様替えの夜、テレビの置き場所だけ決まらなかった
ソファを動かし、棚をずらし、ラグを敷き直して2時間。最後にテレビの前で腕を組んだまま、時計の針の音だけが部屋に響いていた。
都内のシェアハウスで暮らすAさん(20代)の話だ。「仕事が立て込んでた時期で、せめて部屋だけでも流れを変えたくて。風水を調べたら、テレビの位置で運気が変わるって書いてあって。半信半疑どころか2割信、くらいの気持ちで読み始めたんですけどね(笑)」。
風水でテレビの位置と検索する人の多くは、Aさんと同じ温度感だと思う。ガチガチに信じているわけではない。でも模様替えのついでに、どうせなら良いとされる場所に置きたい。その気持ちに、まっすぐ答えていく。
先に答えを言う。テレビは部屋の中心から見て東に置く。これが風水における鉄板の配置だ。理由と、東に置けない場合のリカバリー、そして方角より先にやるべきことまで、順番に説明する。
なぜ東なのか。音と映像を出すものは木の気と相性がいい
風水では、東は三碧木星という木の気を持つ方位とされ、意欲、発展、迅速性を象徴する。太陽が昇る方角でもあり、発展運、仕事運、勉強運を司ると考えられている。
テレビは次々と映像と音を発する、影響力の強い家電だ。風水的には場の気を乱しやすい存在とされるが、相性のいい東に置くことで、そのパワフルさが良い方向に整えられる。情報を受信・発信する機器は東。テレビだけでなく、パソコンやラジオにも同じ理屈が当てはまる。
東の隣、南東も悪くない。南東は恋愛運や人間関係を高める方位とされ、テレビ配置では吉とされている。部屋の構造上ぴったり東に置けないなら、東から南東の範囲で考えれば十分だ。
避けたい方角と、そこにしか置けないときの手当て
西・北西・南西・北東は、できれば外す
風水でテレビと相性が悪いとされるのは、西、北西、北東、南西の方角だ。それぞれ金運や貯蓄、相続といった財に関わる気を持つ方位とされ、気を乱しやすいテレビを置くと、その方位の運気がかき乱されると考えられている。
北も凶方位とされる。財蓄運や恋愛運に関係する方位で、テレビを置くと気持ちが不安定になりやすいという説明がされることが多い。
ただし、ここで現実の話をしたい。賃貸の部屋は、アンテナ端子の位置でテレビの置き場所がほぼ決まる。コンセントと配線の都合で、西側にしか置けない部屋なんていくらでもある。Aさんの部屋もまさにそれで、端子は思いきり西の壁にあった。
凶方位のダメージは、観葉植物と整理整頓で和らげる
東に置けないからといって、諦める必要はない。風水には凶方位に置いた場合の対処法がちゃんと用意されている。
代表が観葉植物だ。テレビの近くに置くことで、強い気や電磁波の影響を緩和してくれるとされる。陽の気を持つとされるガジュマル、モンステラ、サンスベリア、パキラあたりが定番で、テレビの横に鉢をひとつ置くだけでいい。緑が一枚視界に入ると、画面まわりの硬い印象がふっとゆるむ。風水を抜きにしても、インテリアとして単純に効く。
もうひとつは、テレビ周辺を上質に整えること。気の乱れは雑然とした環境で強まるとされるので、配線をまとめ、リモコンや小物の定位置を作り、テレビ台の上をすっきり保つ。北に置く場合は青や黒の小物、西に置く場合は高級感のあるインテリアで中和するという方位別の調整法もある。
方角より先に効く、3つの基本
画面とテレビ裏のホコリは邪気そのもの
取材を通じて行き着いた本音を言うと、方角を気にする前にやるべきことがある。掃除だ。
風水においてホコリは邪気そのものとされる。テレビは静電気でホコリを強力に吸い寄せる家電で、画面が指紋とホコリで曇っていれば、そこから得る情報の質も濁ると考えられている。テレビ裏の配線まわりのホコリに至っては、風水的な意味の前に、トラッキング現象による火災リスクという物理的な危険がある。
週1回、画面を乾いたクロスで拭き、月1回はテレビ裏の配線のホコリを掃除機で吸う。東に置いた汚れたテレビより、西に置いたピカピカのテレビのほうが、たぶん暮らしは整う。
窓とテレビの位置関係は直角が基本
テレビは窓に対して直角に置くのが基本とされる。窓を背にすると外光の映り込みで画面が見づらく、窓に正対させると今度は気が流れ出るとされる。
東は朝日が入る方角なので、東に置く場合は特に反射への配慮がいる。日中はレースカーテンで光を和らげるか、反射防止フィルムを貼る。風水と視聴環境の快適さが、ここでは同じ答えを指している。
寝室のテレビは、画面を布で覆う
ワンルームや寝室にテレビを置いている人への注意がひとつ。消えたテレビの黒い画面は、風水では鏡と同じ扱いになる。
寝ている姿が映り込む位置に鏡があると、エネルギーが分散して安眠を妨げるとされる。ベッドから画面が見える配置なら、寝るときにコットンやリネンの布を画面にかけるだけで、この作用を断てるとされている。淡いベージュや白の布なら見た目も悪くない。
Aさんはワンルーム時代にこれを実践していた。「布をかけるって最初は儀式っぽくて照れがあったんですけど、画面の黒い反射が視界から消えると、部屋が一段静かになる感覚があって。寝つきは正直、良くなりました」。画面の存在感が消えることで脳への刺激が減る、という説明は風水を信じない人にも通じるはずだ。
シェアハウスのリビングで起きた小さな変化
Aさんの家のリビングのテレビは、幸運にも東向きの壁に置ける間取りだった。
模様替えの夜、Aさんはついでに共用リビングのテレビ台も拭き上げ、絡まっていた配線をまとめ、隣にパキラの鉢をひとつ置いた。風水のことはメンバーには言わなかった。
数日後、メンバーの一人がリビングで言った。「ここ最近、なんかリビング居心地よくない?」。理由を聞かれて、Aさんは初めて種明かしをした。運気が上がったかどうかは、正直わからない。でもテレビまわりが整った空間は、確実に人を引き寄せた。あの夜から、リビングに人が集まる時間が少し増えたという。
風水は何千年も続く環境学だと言われる。方角の吉凶を信じるかどうかは人それぞれでいい。ただ、テレビを東に置き、まわりを片付け、ホコリを払い、植物をひとつ添える。この一連の行動が部屋と気分を整えることは、信じる信じないの外側にある事実だ。テレビの位置に迷ったら、東。そして雑巾を一枚。始まりはそれで十分だと思う。

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