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スチールラック転倒防止を100均で|買って無駄だった物と効いた物

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肩で受け止めた鉄の棚、あの三秒

八月の日曜、昼過ぎ。共用の棚の最上段から炊飯器を下ろそうとした。
両手で抱えて手前に引いた瞬間、棚ごとこっちに来た。
かちゃかちゃと下の段の食器が鳴って、視界の上半分が鉄で埋まる。
左肩で受けて、足を開いて踏ん張った。Tシャツの背中が一気に濡れた。
(下に誰かいたら、終わってたな)
心臓の音が耳の裏で鳴りやまない。倒れなかったのは、ただの運。
床に散った箸を拾い集める指が、細かく震えていた。

壁に穴は開けられない。金もかけたくない

都内のシェアハウス暮らし。ネジで壁に留めるという選択肢は最初からない。退去のとき請求されるのが目に見えている。
住人から金を集めるのも、正直だるい。
だからその日の夕方、百円ショップを三軒はしごした。

揺れは下から順に伝わってくる

買い物カゴを持って売り場をうろつきながら、ようやく頭が整理された。
棚が倒れるまでには段取りがある。まず脚が床を滑る。次に支柱がねじれる。棚板の上の物が手前へ飛ぶ。重心が前に寄る。そこで倒れる。
つまり、どこか一段階を止めれば先へ進まない。
逆に言えば、この順番を無視して目についた物を買うと、金がきれいに溶ける。
一度溶かしました(笑)

床と脚のあいだで、滑りを殺す

耐震マットは、脚より一回り大きく切る

一袋四枚で百十円の透明ジェル。これは働く。ただし貼り方でまるで別物になる。
スチールラックの脚は丸くて細い。接地面は五百円玉くらいしかない。四角いマットをそのまま貼ると、脚からはみ出した部分が床に触れずに浮く。粘っているようで、実際は端しか仕事をしていない状態。
ハサミで丸く切って、脚より一回りだけ大きいサイズにする。全面が床に当たる。
貼る前に、床とマットの両面をアルコールで拭く。埃が一粒でも挟まると食いつきが落ちる。
貼ったあと半日は動かさない。荷重をかけたまま置いておくと、ぴたっと吸い付いて、爪を差し込んでも剥がれなくなる。

フェルトシールが貼ってあったら、それが滑走路

うちの棚には、前の住人が貼った床傷防止のフェルトが残っていた。
はぁ…。あれ、滑らせるための道具だからね。
横に押したらするっと動く。転倒防止をやる前に、まず剥がす。ドライヤーで温めると粘着が緩んで、きれいに取れる。
剥がしてから耐震マットを貼り直したら、押したときの抵抗が別次元になった。

四本の脚が、全部床に着いているか

片脚が浮いていると、棚はその方向へ必ず倒れる。
アジャスターを回して調整する。名刺を一枚、脚の下に差し込んでみて、すっと入るなら浮いてる。
うちの棚は右前が二ミリ浮いていた。その二ミリが、炊飯器を引いたときに前へ出る余地を作っていたわけ。
費用ゼロ、作業五分。ここを飛ばして道具を買っても意味がない。

支柱のねじれを止める

背面と側面、両方に面を作る

スチールラックの構造上の弱点は、横から押されたときに平行四辺形へひしゃげること。
うちがやったのは、側面に三十センチ角のワイヤーネットを二枚、結束バンドで縛りつける方法。棚の横っ腹に硬い面ができる。
背面には園芸用の細いワイヤーを対角線に張った。上の支柱の右から下の支柱の左へ、たすき掛け。四隅をバンドで固定して、たるみを取る。
押したときの感触が変わる。ぐにゃりと逃げていたのが、押し返してくる硬さになった。
ワイヤーは太いほど良いわけじゃなくて、張り具合のほうが効く。

バンドは指で締めるな、ペンチで引け

ここ、地味に差が出る。
指の力で締めたバンドには、必ず遊びが残っている。遊びがあると、揺れたぶんだけ動く。
ラジオペンチで先端をつまんで引くと、あと三ミリくらい入る。その三ミリで支柱とワイヤーが密着する。
余った尻尾はニッパーで切る。切らないと、通るたびに腕に引っかかって地味に痛い。
半年から一年で樹脂が硬くなって白っぽく濁る。指で弾いてかつんと乾いた音が返ってきたら、粘りは死んでる。百十円で百本入りなんだから、迷わず交換する。

棚板の上で、物を先に止める

滑り止めシートを一段ずつ敷く

食器棚用の滑り止めシート。ロールで百十円。棚板の幅に切って敷くだけ。
これがあるのとないのとで、揺れたときの物の動き方が全然ちがう。皿が板の上を滑ってから落ちるのと、その場でとどまるのと。
物が落ちた瞬間に重心が動いて、次の揺れがもっと大きくなる。落下を止めるのは、倒壊を止めるのと地続きの話。
皿は立てずに平積み。グラスは伏せる。瓶と缶は最下段へ。

細い突っ張り棒は、柵として使うなら働く

天井と棚のあいだに百均の突っ張り棒を挟んで安心している人、あれは効かない。カーテン用と家具転倒防止用は別の製品で、耐えられる荷重の桁がちがう。
ただし使い道はある。棚の前面に横一本、渡す。
支柱の内側で突っ張らせて、物が手前へ飛び出すのを受け止めるガードにする。棚一段につき一本、目安は棚板から十センチくらいの高さ。
取り出すときは、少し持ち上げて越えさせる。慣れると考えずにやってる。

上段を空にする。これが一番効く

道具を買う前にやるべきこと。
うちの棚は目線の高さに土鍋とホットプレートが載っていた。高い位置の重い物は、小さな揺れを大きな振れに増幅する。
土鍋を最下段へ。乾物と紙皿を最上段へ。十五分の入れ替え作業。
その後に来た揺れで、棚の鳴り方が明らかに静かになった。かかった金、ゼロ円。

棚そのものを低くするという逃げ道

段を減らして、支柱を短くする

見落とされがちだけど、スチールラックはバラせる。
四段を三段にして、余った支柱を抜く。高さを物理的に落とす。
うちは百八十センチあった共用棚を、百四十まで下げた。作業は四十分ほど。棚板が一枚余ったので、押し入れの中で使ってる。
高さが減ると、倒れようとする力そのものが小さくなる。転倒防止グッズを何個も買い足すより、根っこを削るほうが早い。
収納量は減る。でも、肩で鉄を受け止める体験に比べたら安いもんでしょ。

壁とのすき間に、段ボールを噛ませる

棚の背中と壁のあいだが数センチ空いていると、そのぶん前後に遊ぶ。
衣類を詰めた段ボールを縦にして押し込む。壁に穴を開けずに、後ろへの逃げ道をふさげる。
隣にもう一台ラックがあるなら、支柱同士を上中下の三か所で縛って一体化させると、底面が広がって倒れにくくなる。連結できる相手がいるかどうかで、打てる手は変わってくる。

百均で粘れる線引き

高さを奥行きで割ってみる

判断の物差しを一つ持っておくと迷わない。
高さを奥行きで割った数字が四を超えたら、百円ショップの道具だけでは支えきれないと考える。
奥行き三十五センチで高さ百八十なら、割った数は五を超える。細長い塔と同じ。
うちの棚がまさにそれだった。だから高さを削る側に舵を切った。
数字が四以下なら、ここまで書いた対策で立つ。断言する。

金を出すのは、天井までの一本だけ

どうしても高さを維持したい人。二千円前後で買える家具転倒防止用のポールを一組足す。
注意点が一つ。天井の下地がある位置に立てないと、石膏ボードを突き破る。
ポールの上に厚めの板を一枚挟んで、力を分散させる。板は百均のまな板で代用できる。
百均で組んだ土台に、この一組。総額は三千円に届かない。

その二週間後。ハルさんが最上段から鍋を下ろそうとしていた。
両手で引いて、体重が後ろに乗って、それでも棚はぴくりともしない。
「あれ、これ動かないんだけど」
ずしっとした鍋を抱えたまま、彼は不思議そうに棚を見上げていた。
床に膝をついて脚元を覗くと、切り抜いた丸いジェルが、まだ黙って床に噛みついていた。

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この記事を書いた人

屋根の下の知恵袋TOKYOシェアライフ

都内シェアハウス住民によるリアルな生活ハック発信中。
節約、家事、収納、コミュニティづくりまで、みんなで暮らすからこそ生まれる知恵を発信してます。

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