共用のiPadに、自分の写真が並んでいた
リビングの棚に置いてある共用のiPad。動画を見ようと開いて、写真アプリをうっかりタップした瞬間、血の気が引いた。
自分がiPhoneで撮った写真が、ずらりと並んでいる。
都内のシェアハウスに住むHさん(20代)の話だ。「家族とApple IDを共有してた名残で、自分のiPhoneと、みんなが触るiPadが同期されてたんですよ。見られたくない写真とかメモが、全部iPadに筒抜けで。指先が冷たくなって、とにかく早く同期を切らなきゃって焦りました」。
iPad、同期解除。そう検索する人は、Hさんのようにプライバシーを守りたい、端末ごとにデータを分けたい、と考えていることが多い。先に大事なことを言う。同期解除は、やり方を間違えると写真が消える。正しい手順と、消さないためのコツを知ってから操作することが、何より大事だ。慌ててスイッチを切る前に、この順番を頭に入れてほしい。
同期解除には、二つのレベルがある
まず、同期解除という言葉が指すものを整理したい。やり方が大きく二つに分かれる。
ひとつは、部分的な解除。iCloudの設定で、写真や連絡先など同期したくない項目だけを個別にオフにする方法だ。必要な同期は残しつつ、見られたくないものだけ切れる。
もうひとつは、完全な解除。Apple IDからサインアウトして、デバイスのつながりを丸ごと断つ方法だ。ただしこれは、App StoreやiMessageなど、すべてのAppleサービスからサインアウトすることになる。端末を売る、人に譲るといった場面以外では、ここまでやる必要はない。プライバシー目的なら、部分的な解除で十分なことがほとんどだ。自分が何をしたいのかで、選ぶレベルが変わる。
操作の前に知るべき、写真が消える仕組み
最適化ストレージが、消失の引き金になる
ここが、この記事で最も伝えたい部分だ。iCloud写真をうかつにオフにすると、デバイスから写真が消えることがある。
原因は、iPhoneやiPadの設定にある最適化ストレージという機能だ。これがオンになっていると、端末の空き容量を増やすため、高解像度のオリジナル写真はiCloudに保存され、端末には軽い縮小版だけが置かれる。この状態でiCloud写真の同期をオフにすると、端末に残っていた縮小版が消え、オリジナルにアクセスできなくなる可能性がある。
Hさんがもしこの仕組みを知らずに、いきなりiCloud写真をオフにしていたら、大切な写真を失っていたかもしれない。同期解除は、ただスイッチを切る作業ではない。切る前に、写真がどこに保存されているかを確認する作業から始まる。
解除の前に、必ずバックアップを取る
写真の消失を防ぐ答えは、シンプルだ。解除する前にバックアップを取る。
パソコンに写真を保存しておく、外付けのストレージに移しておく、あるいはGoogleフォトのような別のクラウドに退避させておく。どの方法でもいい。オリジナルの写真が、iCloud以外のどこかに確実に存在する状態を作ってから、同期解除に進む。これさえやっておけば、操作中に何が起きても写真は守られる。順番を逆にしないことが、後悔しないコツだ。
部分的に同期解除する、具体的な手順
iCloudの項目を、ひとつずつオフにする
バックアップを取ったら、いよいよ操作に入る。部分的な解除の手順はこうだ。
設定アプリを開き、いちばん上に表示される自分の名前、Apple IDの部分をタップする。次にiCloudを選び、すべてを表示を押すと、同期されている項目の一覧が出てくる。ここで、同期を解除したい項目、写真や連絡先、メモ、Safariなどのスイッチをオフにする。これで、選んだ項目だけが端末間で共有されなくなる。
オフにするとき、今ある項目を端末に残すか削除するかを選ぶ画面が出ることがある。ここでは必ず残すを選ぶ。残すを選べば、これまでのデータは端末の中にそのまま残り、これ以降の新しいデータだけが同期されなくなる。削除を選んでしまうと端末からデータが消えるので、ここは慎重に。
iMessageとFaceTimeは、別の場所で切る
写真や連絡先をオフにしても、見落としがちなものがある。メッセージと通話だ。
iMessageは、iCloudの設定とは別に切る必要がある。設定アプリのメッセージから、iMessageをオフにすると、iPadで自分宛のメッセージを受け取らなくなる。同じように、設定アプリのFaceTimeを開いて、iPhoneからの通話の項目をオフにすると、iPadで電話やFaceTimeを受けなくなる。
写真は切ったのにメッセージが筒抜けだった、という事態を防ぐため、この二つも忘れずに確認したい。プライバシーを守るなら、写真、連絡先、メッセージ、通話、この四つをセットで見直すといい。
完全に分けたいなら、Apple IDを別にする
別々のApple IDで、根本から分離する
部分的な解除でも足りない、端末を完全に独立させたいなら、Apple IDそのものを分ける方法がある。
iPhoneとiPadで異なるApple IDを使えば、写真もメッセージも購入履歴も、根本から分離できる。家族と共有していたApple IDから自分専用のIDに切り替えれば、プライバシーは完全に守られる。Hさんが選んだのも、最終的にこの方法だった。
ただし、注意点がある。Apple IDを分けると、アプリの購入やサブスクリプションの共有ができなくなる。家族で課金を分け合っていた場合、それぞれで買い直す必要が出ることもある。完全な分離と引き換えに失うものがあるので、事前に影響を確認してから決めたい。
同期を切っても、別の手段で写真は共有できる
同期を切ると、端末間で写真をやり取りできなくなって不便では、と心配する人もいる。でも代わりの手段はある。
近くのApple端末同士なら、AirDropで写真を直接送れる。iCloudを使わずに、その場で必要な写真だけを渡せる。あるいはGoogleフォトのような別のクラウドを使えば、Apple IDが違っても、複数の端末で同じ写真を見られる。無料で使える容量もあるので、iCloudをオフにした後の写真共有として現実的な選択肢になる。同期を切ることと、写真を共有できないことは、イコールではない。
シェアハウスの共用iPadで、プライバシーを守った話
Hさんは結局、どうしたか。
まずiPhoneの写真をパソコンとGoogleフォトにバックアップした。それから共用iPadの設定を開き、Apple IDからサインアウトして、iPad用に新しいApple IDを作り直した。「これで自分のiPhoneとiPadが完全に別物になって。共用iPadに自分の写真が出てくる心配がなくなって、やっと肩の力が抜けました」。
共用のiPadがあるシェアハウスだからこそ、この問題は他人事ではなかった。「みんなが触るタブレットに、誰かの個人的なデータが同期されてたら、お互い気まずいじゃないですか。だから共用iPadは、誰の個人Apple IDとも紐づけないって決めました」。共用端末は共用のアカウントで、個人の端末は個人のアカウントで。線引きをはっきりさせたら、プライバシーの不安が消えたという。
見えてきたのは、iPadの同期解除は、写真を消さないための準備が9割だという事実だった。バックアップを取る。残すを選ぶ。Apple IDのレベルで考える。この順番さえ守れば、見られたくないデータを安全に切り離せる。共用iPadに自分の写真が並んでいるのを見て指先が冷えたあの日から、Hさんのプライバシーは、きちんと分けられた境界線に守られている。

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