搬入の朝、旧冷蔵庫の電源を切るタイミングで固まった
新しい冷蔵庫の配送は、明後日の午前。古いほうは、その場で引き取ってもらう手はずになっている。前夜、冷蔵庫の前で手が止まった。
これ、電源っていつ切ればいいんだ。
都内のシェアハウスに住むKさん(20代)の話だ。「共用の冷蔵庫の買い替え担当になったんですけど、電源を切る時間なんて誰も気にしたことなくて。搬入の朝にプラグ抜けばいいのかなって思ってたら、調べてみたら全然違って。背中にじわっと汗が出ました。あぶなかった…」。
冷蔵庫の買い替えで電源は何時間前に切るのか。検索する人が必要としているのは、この明確な答えだ。先に言う。運び出す時間の24時間前が基本、新しいタイプなら12から16時間前まで。なぜそんなに前なのか、そして買い替えならではの落とし穴、新旧入れ替えの段取りまで、Kさんの準備をたどりながら整理していく。
答えは24時間前、最低でも12〜16時間前
まず、いちばん知りたい数字をはっきり示す。
冷蔵庫の電源は、運び出す時間の24時間前までに切るのが理想だ。霜が溶けるまでに時間がかかるため、余裕を持たせるとこの数字になる。どうしても食材を冷やしておきたい事情があっても、遅くとも12から16時間前までには切っておきたい。霜や氷が溶けるのに必要な時間は15時間ほどとされ、短時間電源を切っただけでは溶けきらず、水漏れを起こす。
比較的新しいタイプの冷蔵庫なら、15時間前を目安に切れば霜が溶けきるケースがほとんどだ。一方、年式が古く分厚い霜がつく冷蔵庫は、24時間以上前に切ったほうが確実になる。自分の冷蔵庫の古さと状態を見て、霜が多そうなら早めに、というのが現実的な判断だ。搬入の朝にプラグを抜けばいいと思っていたKさんは、危うく水浸しの搬出をやらかすところだった。
なぜ前日に切る必要があるのか
霜が溶けないまま運ぶと、水漏れと故障を招く
そもそも、なぜそんなに早く切るのか。理由は冷蔵庫の中にたまる水にある。
冷蔵庫は毎日庫内を冷やしているので、冷却管や庫内に霜がつく。この霜がついたまま運ぶと、運搬の途中で溶けて水漏れする。周囲の家財や床を濡らすだけでなく、冷蔵庫自体の故障につながることもある。だから運ぶ前に電源を切って、霜を溶かし、水を捨てておく必要がある。
電源を切ってから運べる状態になるまでには、霜取りと水抜きという二つの作業が挟まる。霜取りは、扉を開けっぱなしにして霜を自然に溶かすこと。水抜きは、溶けた水が下部や背面の蒸発皿にたまるので、それを捨てる作業だ。この二つが終わって初めて、安全に運び出せる。電源を切ってすぐ運べる家電ではない、と覚えておきたい。
ドライヤーで霜を溶かすのは避ける
時間が惜しくて、霜を早く溶かしたくなる場面もある。ここで注意したいことがある。
霜を早く溶かそうとドライヤーの熱風を当てたくなるが、これは熱で故障する可能性があるのでおすすめできない。薄い霜なら、ぬるま湯で濡らしたタオルで拭き取るだけで足りる。厚い霜は、扉を開けて時間をかけて自然に溶かす。急がば回れで、時間に余裕を持って電源を切っておくことが、結局いちばん安全な近道になる。
製氷機能つきの冷蔵庫なら、もうひとつ前倒しでやることがある。給水タンクの水抜きだ。タンクを外しても内部に水が残ることがあるので、2から3日前にはタンクを取り外しておくと安心だ。
買い替えならではの落とし穴、新しい冷蔵庫の冷却時間
設置してすぐは冷えない、3〜10時間待つ
ここが、引っ越しと違う買い替え特有のポイントだ。見落とすと、せっかくの食材を傷ませる。
新しい冷蔵庫は、設置して電源を入れても、すぐには冷えない。庫内が十分に冷えるまでには3から10時間以上かかる。夏場は特に気温が高いので、24時間以上かかることもある。搬入されたその場で食材を詰め込んでも、冷えていない庫内では食材が傷んでしまう。
だから買い替えの段取りは、旧冷蔵庫をいつ切るかだけでなく、新冷蔵庫がいつ冷えるかまで考える必要がある。搬入後すぐに食材を入れられない時間が、数時間から半日ほど生まれる。この間、冷やしておきたい食材をどうするかを、あらかじめ決めておきたい。Kさんが気づいていなかったのも、まさにこの空白の時間だった。
設置直後は、すぐ電源を入れずに少し待つ
新冷蔵庫の扱いには、もうひとつコツがある。搬入直後に、すぐ電源を入れないことだ。
運搬中に冷蔵庫を傾けると、内部の冷却に関わるオイルが移動することがある。設置後すぐに通電すると、コンプレッサーに負担がかかる場合がある。搬入してしばらく時間を置いてから電源を入れると、冷却機能への負担を避けられる。設置後に水漏れがないかを確認し、少し落ち着かせてから通電し、庫内が冷えてから食材を入れる。この順番が、新しい冷蔵庫を長持ちさせる。
電源を切るまでに、食材をどうさばくか
1〜2週間前から計画的に使い切る
電源を切る当日になって庫内に食材が残っていると、行き場に困る。逆算して動きたい。
買い替え日の1から2週間前になったら、冷蔵庫の中身を確認して、使い切る計画を立てる。あらかじめ献立を決めて、電源を切る日に向けて消費していく。冷凍食品やアイスは、特に早めに食べきる。そして大事なのが、このタイミングで新しい食材を買い足さないことだ。買っても入れる場所が消えるので、買い物のペースを落としていく。
残った食材はクーラーボックスへ、ただし過信しない
それでも当日まで使い切れない食材は出る。その逃がし先がクーラーボックスだ。
電源を切っている間と、新冷蔵庫が冷えるまでの間、冷やしておきたい食材はクーラーボックスや発泡スチロールの箱に、保冷剤と一緒に入れて保管する。ただし、クーラーボックスは長期保管には向かない。保冷剤なしでは中身はすぐぬるくなるし、生鮮品を一日中入れておくのは無理がある。傷みやすい食材は、早めに食べきるか、思い切って処分するほうが安全だ。冷蔵庫の空白時間を、クーラーボックスで全部カバーしようとしないことが、食中毒を防ぐ。
シェアハウスの共用冷蔵庫を、滞りなく入れ替えた話
Kさんは結局、どう段取りしたか。
搬入の前々日からメンバーに声をかけ、共用冷蔵庫の食材を計画的に消費してもらった。搬入の前日、夜のうちに旧冷蔵庫の電源を切り、扉を開けて霜取りを始めた。床にはタオルを敷いて、溶けた水に備えた。当日の朝に水抜きと庫内の掃除を済ませ、業者が来たときにはきれいな状態で引き渡せた。
共用ならではの工夫もあった。新冷蔵庫が冷えるまでの数時間、メンバーそれぞれの冷やしたい食材を、共用のクーラーボックスにまとめて避難させた。「みんなで使う冷蔵庫だから、入れ替えの空白時間も全員に関わるんですよ。だから事前に、何日の何時に電源切ります、何時間は冷蔵庫が使えませんって共有しておいて。そしたら誰も食材を無駄にせずに済みました」。冷蔵庫のドアに、電源オフの日時を書いた紙を貼っておいたのも効いたという。
見えてきたのは、冷蔵庫の買い替えは、旧冷蔵庫を切る時間と新冷蔵庫が冷える時間、その両方を逆算して初めて滞りなく進むという事実だった。24時間前に切る。霜取りと水抜きをする。新しいほうは冷えるまで待つ。食材は計画的にさばく。この段取りさえ押さえれば、入れ替えの日に慌てることはない。搬入の朝にプラグを抜こうとしていたあの夜から、Kさんは段取りという言葉の重みを少し知ったという。

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