共用の電気代明細を見て、全員が黙り込んだ
12月の共用スペースの電気代明細が、いつもより数千円高い。心当たりを探すと、11月にメンバーの一人が、自室用にダイソンのホットアンドクールを買っていた。
都内のシェアハウスに住むMさんが、そのときのことを話す。「電気代はみんなで割る仕組みなんです。だから明細を見た瞬間、あ、これ暖房かって空気になって。買った本人も、こんなに上がると思ってなかったみたいで、気まずそうにしてて。私も便利そうで欲しかったから、他人事じゃなかったんですけど」。
ダイソン暖房の電気代は高いのか。検索する人は、Mさんの周りのように請求額に驚いたか、買う前に不安を感じていることが多い。先にはっきり言う。ダイソンの暖房は電気代が高い。エアコンの約2倍かかる。ただし、高いか安いかは使い方で決まる。なぜ高いのか、その仕組みと、損しない使い方の分かれ道を、Mさんのシェアハウスの明細をたどりながら整理していく。
温風モードは1時間約40円、月1万円級
まず、実際の金額を示す。数字を知ると、高いと言われる理由がわかる。
ダイソンのホットアンドクールを温風モード、つまり暖房として使うと、最大消費電力は1200から1400ワットになる。1時間あたりの電気代は、電力単価を31円で計算すると、約37から43円だ。これを1日8時間、1か月使うと、月におよそ7千400円から1万円を超える計算になる。エアコン暖房が月6千500円前後、オイルヒーターが月7千円前後なので、それらと比べても割高だ。
一方で、同じダイソンでも涼風モード、つまり扇風機として使うと、消費電力は6から40ワットほどで、1時間あたり約1円。1か月使っても数百円で収まる。空気清浄機能だけなら、月60円ほどだ。つまり、電気代が高いのは温風モードだけで、それ以外は驚くほど経済的になる。Mさんのシェアハウスの明細を押し上げたのは、この温風モードの長時間使用だった。
なぜダイソンの暖房は、エアコンより高いのか
抵抗加熱とヒートポンプという、仕組みの違い
同じ暖房なのに、なぜエアコンの2倍もかかるのか。ここには、避けられない技術的な理由がある。
ダイソンの暖房は、抵抗加熱式という仕組みだ。電気を熱に直接変換して、その熱で空気を暖める。電気ストーブやセラミックヒーターと同じ方式で、投入した電気を100パーセント熱に変えるのが上限になる。
対してエアコンは、ヒートポンプ式という仕組みを使う。外の空気に含まれる熱を汲み上げて、部屋に運び込む。投入した電気の何倍もの熱を生み出せるので、少ない電気で効率よく暖められる。この仕組みの差が、そのまま電気代の差になる。ダイソンが特別に燃費が悪いのではなく、抵抗加熱式という方式が、部屋全体を暖める用途では効率で不利、というだけの話だ。仕組みを知れば、2倍という数字にも納得がいく。
実は、自動運転だと思ったより安いという声も
ただ、話はもう少し複雑だ。カタログの最大消費電力どおりに、ずっと1400ワットで動き続けるわけではない。
ダイソンには、設定温度に達すると自動で出力を落とす機能がある。部屋が暖まればヒーターの力がゆるむので、実際の消費電力は抑えられることが多い。口コミには、3時間使っても20円程度だった、1か月700円前後だったという声もある。これは、短時間の使用や、自動運転で設定温度を保っている場合の数字だ。つまり、最大出力でつけっぱなしにすれば月1万円、賢く使えば月数百円と、使い方で天と地ほど差が出る。
電気代が高くなる使い方、安く済む使い方
やってはいけないのは、メイン暖房として使うこと
電気代で損する人には、共通点がある。ダイソンを部屋全体のメイン暖房として使っていることだ。
広い部屋を、リビングで一日中、最大モードでガンガン暖める。この使い方をすると、電気代は確実に跳ね上がる。ダイソンの温風は、到達範囲や出力が局所的なので、広い部屋では満足に暖まらず、つい設定温度を上げたり運転時間を延ばしたりして、さらに電気代がかさむ悪循環に陥りやすい。
部屋が広いほど、断熱が悪いほど、室温と設定温度の差が大きいほど、電気代は増える。エアコン代わりにリビングのメイン暖房にする、というのが、いちばん損をする使い方だ。
スポット暖房に徹すれば、電気代は抑えられる
逆に、電気代を抑える使い方もはっきりしている。狭い場所を、短時間、ピンポイントで暖めることだ。
ダイソンの温風は、風を直接体に当てられる設計なので、局所的に暖を取るのが得意だ。脱衣所や洗面所、デスクの下、トイレといった狭いスペースで、必要なときだけ使う。起床時や帰宅直後の、すぐ暖まりたい短時間に、タイマーを使って使う。この使い方なら、1日数分から十数分の使用で、月数百円程度に収まることも多い。
必要なときに、必要なだけ使う。このスタイルが、ダイソン暖房を最もコスパよく活かす方法になる。狭い空間の速暖という、この製品の得意分野に絞って使うのが正解だ。
ダイソンの真価は、暖房そのものより一台三役にある
涼風と空気清浄まで含めて、通年で価値を測る
電気代の高さだけを見て、買わないと決めるのは早い。ダイソンの価値は、暖房単体ではなく、一台三役にある。
冬は速暖のスポット暖房、夏は扇風機、そして一年を通して空気清浄機として使える。涼風モードと空気清浄モードは電気代が非常に安いので、通年で出しっぱなしにしても負担が小さい。羽根がないので手入れが簡単で、小さな子どもが指を挟む心配もない。季節ごとに家電を出し入れする手間も消える。
初期投資と暖房時の高い電気代を、この多機能性という価値全体と釣り合わせて考える。これがダイソンの正しい評価の仕方だ。暖房専用機として電気代だけで比べれば割高だが、一台で複数の役割をこなす便利さに価値を感じるなら、十分に元は取れる。
エアコンとの併用で、むしろ節約になる使い方
意外かもしれないが、ダイソンをうまく使うと、家全体の電気代を下げられることもある。
ダイソンの高性能な送風を、サーキュレーターとして使う方法だ。エアコンと併用して、天井にたまった暖かい空気を循環させると、部屋の温度ムラが解消される。すると、エアコンの設定温度を控えめにしても快適に過ごせるようになり、エアコン自体の電気代が下がる。この節約分は、ダイソンの涼風モードの電気代をはるかに上回るので、費用対効果は高い。
部屋が暖まるまではエアコンで、暖まったらダイソンで温度を保つ。設定温度は20から22度にして、室温との差を小さくする。こうした併用で、快適さと節約を両立できる。ちなみに、最大1400ワットと消費電力が大きいので、ほかの家電と同時に使うとブレーカーが落ちることがある点にも気をつけたい。
シェアハウスの共用電気代から見えた、使い方のルール
Mさんのシェアハウスは、あの明細のあとどうしたか。
メンバーで話し合って、ダイソンの温風モードは自室のスポット暖房として短時間だけ使う、部屋全体を暖めたいときはエアコンを使う、というゆるいルールを決めた。「電気代がみんなの負担になるって分かってからは、買った本人も温風を使う時間を減らして。代わりに、夏は扇風機、冬は脱衣所でサッと使うみたいに、賢く使うようになりました」。
共用の電気代だからこその気づきもあった。「一人が部屋全体を暖房でつけっぱなしにすると、全員の電気代が上がる。だから、部屋全体はエアコン、ピンポイントはダイソン、って使い分けが自然と身についたんです」。翌月の明細は、元の水準に戻ったという。Mさん自身も、そのやり取りを見て、自分がダイソンを買うなら暖房メインではなく通年の一台三役として使おうと決めた。
見えてきたのは、ダイソン暖房の電気代は、製品の問題ではなく使い方の問題だという事実だった。温風モードはエアコンの2倍かかるが、スポット暖房に徹し、涼風と空気清浄で通年使えば、価値に見合う。メイン暖房にすれば月1万円、賢く使えば月数百円。この分かれ道を知れば、請求額に驚くことはない。共用の明細を前に全員が黙り込んだあの日から、Mさんのシェアハウスは、部屋全体とピンポイントを使い分けて、快適な冬を過ごしている。

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