共用洗濯機が、いつまでも脱水に進まなかった
シェアハウスの共用洗濯機で、お風呂マットを1枚だけ洗っていた。そろそろ終わるはずと様子を見に行くと、脱水に入ったと思ったら、また水がザーッと入って、すすぎに戻っている。何度見ても、脱水の手前でぐるぐる足踏みしたまま、いつまでも終わらない。
都内のシェアハウスに住むMさんが、そのときのことを話す。「次に洗濯したい人が待ってるのに、機械が延々とすすぎに戻るんですよ。あれ、これ壊れた?って、洗濯機の前でだんだん焦ってきて。共用だから、自分が壊したと思われたらどうしようって、変な汗が出ました」。
洗濯機が片寄りで脱水できない。検索する人は、Mさんのように脱水に進まず止まって困っていることが多い。先に、安心できる結論を言う。片寄りで脱水できないのは、故障ではない。すすぎに戻るのは、洗濯機が転倒を防ごうと必死にバランスを取ろうとしている、正常な安全動作だ。原因の大半は、自分で直せる。なぜ止まるのか、その仕組みと直し方を、Mさんの共用洗濯機をたどりながら整理していく。
すすぎに戻るのは、洗濯機が暴走を止めている証拠
まず、なぜ脱水できずにすすぎに戻るのか。その仕組みを知ると、故障ではないと納得できる。
脱水の工程では、洗濯槽を毎分800回から1000回以上という猛スピードで回転させて、その遠心力で衣類の水分を飛ばしている。このとき大事なのが、回転のバランスだ。コマを回すとき、重心が真ん中にあればきれいに回り続けるが、重心がずれるとガタガタと暴れてすぐ倒れる。洗濯機も同じで、濡れて重くなった衣類が槽の一か所に固まった状態で高速回転を始めると、偏った重心がハンマーのように洗濯槽を揺さぶり始める。
この振動は凄まじく、放っておけば洗濯機本体が転倒したり、内部の軸が折れたりする大事故につながりかねない。だから洗濯機は、異常な振動を検知すると、いったん自動で止まり、給水してすすぎ直すことで衣類の位置を変える補正運転を行う。連続して3回ほど補正しても片寄りが直らないと、脱水を止めて、機種によってはエラー表示を出す。Mさんが見た、すすぎに戻り続ける現象の正体はこれだ。壊れかけているのではなく、洗濯機が壊れないように必死でバランスを取っていた。
片寄りが起きる、主な原因
大物1点洗いと、量が少なすぎる
片寄りの原因で、意外と多いのがこれだ。バスタオル、毛布、シーツ、お風呂マットといった大物を、1枚だけで洗うこと。
大物を単独で洗うと、水を含んで重くなったそれが槽の中で片側に寄り、バランスが崩れやすい。Mさんがお風呂マット1枚で回していたのが、まさにこの状態だった。同じ理由で、洗濯物の量が少なすぎるのもよくない。特にドラム式は、衣類が少ないと槽の内側に張り付いて、バランスが取りにくくなる。少ないから偏らない、というわけではないのだ。
詰め込みすぎと、衣類の絡まり
逆に、多すぎても片寄る。洗濯物を容量以上に詰め込むと、縦型では底の回転翼が重みで回らなくなり、重心も偏って脱水できなくなる。
衣類同士の絡まりも原因になる。長袖や紐のあるものが絡まって一塊になると、それがそのまま偏りを生む。洗濯ネットの使い方にも注意がいる。ネットに衣類を詰め込んでボール状になると、それが槽の中で暴れて、どんな高性能な洗濯機でもバランスを取れなくなる。ネットに入れた衣類だけで洗うのも、片寄りやすい。そして、座布団やクッション、枕、防水性のシート、厚手のマットは、そもそも脱水時に大きく偏って振動するので、洗濯機で洗ってはいけない。
片寄りを直す、即効性のある手順
取り出してほぐし、均等に入れ直す
片寄りで止まったら、最初にやることはシンプルだ。洗濯物を一度取り出して、絡まりをほぐしながら、均等になるように入れ直す。
入れ直すときにコツがある。縦型の場合は、洗濯物を槽の内側に沿ってドーナツ状に配置して、中心を空洞にする。重いジーンズや厚手のタオルは、対角線上に置いてバランスを取る。ドラム式の場合は、衣類をドラムの奥側に広げるように置く。手前に固まっていると重心がぶれやすいからだ。こうして配置し直すことで、センサーがバランス良しと判断して、スムーズに回転が上がる確率が格段に高まる。
大物にはタオルを足し、量を調整する
大物を単独で洗っていて止まった場合は、他の洗濯物を2枚から3枚足すと直ることが多い。バスタオルなどを一緒に入れて、重さを分散させる。少なすぎて止まったときも、同じようにバスタオルを1枚か2枚追加する。
逆に、量が多すぎて止まったなら、洗濯物を減らして、数回に分けて洗う。ネットがボール状になっているなら、複数のネットに小分けにする。量と配置を整えたら、洗いやすすぎは消して、脱水だけを設定してスタートを押す。多くの機種では、フタを一度開け閉めしてからスタートを押すと、運転が再開する。この手順で、たいていの片寄りは解消する。
衣類を直しても止まるなら、本体と排水を疑う
水平が取れているか、水準器で確認する
衣類を整えても脱水できないなら、次に疑うのは洗濯機の傾きだ。本体が水平でないと、重心がずれて、うまく脱水できない。
多くの洗濯機には、本体に水準器がついている。中の気泡が円の中央に収まっていれば水平、中央から外れていれば傾いている。傾いていたら、洗濯機の調整脚を回して高さを調整し、水平になるよう設置し直す。本体の対角線上の角を押して、ガタつきがないかも確かめたい。キャスター付きの台や、不安定な場所に置いていると、振動で片寄りが起きやすくなる。
排水の詰まりが、水を残して重心を狂わせる
見落としがちなのが、排水の問題だ。排水口や排水ホースにゴミが詰まっていると、脱水時に槽の水がうまく抜けず、洗濯槽に水が残る。その水の重みでバランスが崩れて、異常振動とみなされ、脱水が止まる。
洗濯物の片寄りがないのに脱水できないときは、排水まわりを確認したい。排水ホースが踏まれてつぶれていないか、ねじれていないか。排水口にゴミがたまっていないか。ドラム式なら、糸くずフィルターが目詰まりしていないか。掃除の目安は、排水口が月に1回、排水ホースが半年から1年に1回、糸くずフィルターは週に1回ほど。ここを清潔に保つと、片寄り以外の脱水トラブルを防げる。
それでも直らないなら、故障や寿命を疑う
ここまでの対処を全部試しても脱水できないなら、いよいよ本体の故障を疑う番だ。
稼働ベルトの劣化、回転翼の変形、回転センサーやモーターの故障といった、内部部品の不具合が考えられる。洗濯機の標準使用期間は、多くのメーカーで約7年とされている。製造から7年以上たっているなら、他の部品も劣化している可能性が高く、修理用部品の保有期間が過ぎていることもある。修理費が高額になるなら、省エネ性能の高い最新機種への買い替えも視野に入れたい。特に、脱水時にガリガリ、キーキーといった異常な音がしたり、焦げ臭いにおいがしたりする場合は、重大な故障の前兆だ。すぐに使用を中止して、メーカーや販売店に相談してほしい。
シェアハウスの共用洗濯機で決まった、大物洗いのルール
Mさんの共用洗濯機は、あの延々とすすぎに戻る一件のあとどうなったか。
Mさんは、止まったお風呂マットに、フェイスタオルを3枚足して、脱水だけをもう一度回した。「そしたら、あんなに暴れてたのが嘘みたいに、スーッと脱水が回りだして。大物1枚だと偏るんだって、そこで初めて知りました。壊れてなくてよかったって、力が抜けましたよ」。
共用の洗濯機だからこその気づきもあった。「大物を1枚だけで洗うと、片寄りで何度もすすぎに戻って、洗濯にすごく時間がかかるんです。共用だと、その間ずっと次の人を待たせることになる。だから、毛布やマットを洗うときはタオルを一緒に入れる、詰め込みすぎない、っていうのをみんなで共有しました」。共用洗濯機が片寄りで長時間占領されることが、なくなったという。
見えてきたのは、洗濯機が片寄りで脱水できないのは、ほとんどが故障ではないという事実だった。すすぎに戻るのは、洗濯機が転倒を防ごうとバランスを取っている安全動作だ。衣類をほぐして均等に入れ直し、大物にはタオルを足し、水平と排水を確認する。この順番を押さえれば、修理を呼ぶ前に、たいていは自分で直せる。延々とすすぎに戻る洗濯機に焦ったあの日から、Mさんは大物を洗うとき、タオルを一緒に放り込むようになった。

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