スーパーで衝動買いした花束を抱えて帰ってきた住人が、共用キッチンで困っていた。花を活ける器がない。「そうだ、この前キャンドゥで買った花瓶あった」ころんとした小さなガラスの花瓶を棚から取り出して、花束を輪ゴムごと、ぐいっと丸ごと突っ込んだ。次の瞬間、花がばさっと四方に広がって、重さで花瓶がぐらりと傾く。慌てて手で支えた。(あれ、なんか思ってたのと違う)せっかくの花が、ぎゅうぎゅうに詰まって、なんだか野暮ったい。花屋の店先で見た、あのすっとした佇まいとは、似ても似つかない。(この花瓶、安っぽいのかな)本人はそう思ったようだが、犯人は花瓶ではなかった。キャンドゥの花瓶を安っぽく見せていたのは、活け方のほうだったのだ。
110円の花瓶に花を挿したら、安っぽくなった
きっかけは、その活け損なった花束だった。かわいいと思って買った110円の花瓶に、花を挿したら、なぜか残念な見た目になる。花瓶が悪いのかと疑った。でも、原因は別のところにあった。
花束を丸ごと詰めたら、ぎゅうぎゅうで倒れた
スーパーの花束は、けっこうな本数がまとまっている。それを小さな花瓶に、輪ゴムで束ねたまま、丸ごと突っ込む。すると、花瓶の口から花がばさっとあふれて、まとまりなく広がる。しかも、上に花が集中するから、重心が高くなって、花瓶が倒れやすい。(なんでこんなにぐらつくんだ)片手で支えないと、ぐらりといく。器に対して、花の量が多すぎたのだ。ぎゅうぎゅうに詰め込まれた花は、窮屈そうで、ちっともきれいに見えない。花屋のあの洗練された感じは、どこにもない。量が合っていないだけで、花も花瓶も、台無しになっていた。
花瓶のせいだと、思い込んでいた
見た目が残念だと、つい花瓶のせいにしたくなる。110円だから安っぽいんだ、と。でも、それは早合点だった。同じ花瓶でも、活け方を変えれば、まるで違う顔になる。実際、花の量を減らして、すっと活け直したら、同じ花瓶が見違えた。問題は、花瓶の値段ではなく、器と花の合わせ方にあった。安い花瓶を、安く見せていたのは、詰め込みすぎという活け方だった。花瓶を責める前に、活け方を見直す。ここに気づくと、110円の花瓶が、ぐっと化ける。あの野暮ったさは、花瓶ではなく、こちらの活け方が生んでいたものだった。
キャンドゥの花瓶は、値段以上に使える
活け方の話に入る前に、押さえておきたい。キャンドゥの花瓶は、110円とは思えないほど、よくできている。ここは言い切る。安いから頼りない、という先入観は、いったん捨てていい。
ガラスベースは、110円に見えない
特に、ガラス製の花瓶がいい。透明なガラスは、窓から差す光を透かして、水も花も涼しげに見せる。キャンドゥには、表面に光が虹色に揺れる加工をほどこしたガラスの花瓶もあって、これが110円には見えない。手に取ると、ぱっと光が反射して、上品に輝く。ドライフラワーを挿しても、一輪だけ活けても、様になる。(これ、本当に100円?)値札を二度見したくなる出来だ。ガラスの花瓶は、素材そのものが持つ透明感のおかげで、安っぽさが出にくい。凝った装飾がなくても、光を透かすだけで、じゅうぶん美しい。まず一つ試すなら、このガラスベースを選びたい。
ガラスも陶器もワイヤーも、素材でだいたい揃う
キャンドゥの花瓶は、素材のバリエーションも豊かだ。透明感のあるガラス、淡く優しい乳白色の陶器、割れにくいプラスチックのガラス風。変わり種では、金属のワイヤーを編んだような花瓶もある。手のひらに乗るミニサイズの花瓶や、茎を一本だけ挿す一輪挿しもそろう。飾りたい花や、置きたい場所の雰囲気に合わせて、これだけの選択肢から選べる。しかも、どれも110円前後だ。ガラスの透明感が欲しいのか、陶器の柔らかさが欲しいのか、ワイヤーの軽やかさが欲しいのか。素材で選び分けられるのが、キャンドゥの花瓶の懐の深さだ。まずどんな素材があるかを知って、飾りたい花のイメージと照らし合わせたい。
高見えの分かれ目は、口の形と花の量
キャンドゥの花瓶を、高見えさせるか、安っぽく見せるか。その分かれ目は、花瓶の口の形と、活ける花の量にある。ここが、いちばんの肝だ。
口の細いつぼ型は、花が倒れずまとまる
花瓶の口の形は、活けやすさを大きく左右する。口がすぼまった、つぼのような形の花瓶は、花が倒れにくい。細い口が、茎を適度に支えて、花を一か所にまとめてくれる。だから、数本の花を活けても、ばらけずに、きゅっとまとまる。花を活けるのに慣れていなくても、つぼ型なら、それらしく決まりやすい。逆に、口が大きく広がった花瓶は、花が四方に倒れて、まとめるのが難しい。活け方に自信がないなら、まず口の細いつぼ型を選ぶと、失敗しにくい。口の形が、花の収まりを決める。細い口は、活ける人の腕を、そっと助けてくれる。
詰め込みすぎると、一気に安っぽくなる
そして、花の量だ。あの失敗の元凶が、詰め込みすぎだった。花瓶に対して花が多すぎると、ぎゅうぎゅうで窮屈になり、安っぽく見える。むしろ、花は少ないほうが、洗練されて見える。一輪、あるいは数本を、余白を持たせて活ける。そのほうが、一本一本の花の姿が引き立ち、上品にまとまる。花屋のディスプレイが美しいのは、たっぷり詰めているからではなく、間を生かしているからだ。少ない花を、ゆったり活ける。この引き算が、110円の花瓶を、ぐっと高見えさせる。詰め込むほど豪華、ではない。むしろ逆だ。減らす勇気が、安っぽさを消す。花は、余白とともに飾りたい。
花瓶の形を、飾りたい花に合わせる
口の形と量を押さえたら、次は、花瓶の形を、飾りたい花に合わせることだ。花の背丈や本数に合った器を選べば、活けるのがぐっと楽になる。
背の高い花は、筒型で受ける
背の高い花や、長い枝ものを活けたいなら、まっすぐ縦に伸びた筒型の花瓶がいい。筒型は、丈のある花を、すっと立てて受け止められる。背の高い花を、口の広い浅い器に挿すと、支えきれずに倒れてしまうが、筒型なら、深さが茎を支えてくれる。しかも、筒型は口から底までまっすぐだから、中を洗いやすいという利点もある。背の高い花には筒型、と覚えておくと、花瓶選びで迷わない。飾りたい花の丈を思い浮かべて、それを受け止められる高さの花瓶を選ぶ。花の背丈と、花瓶の形。この相性が合うと、活けるだけで、自然と決まる。
一輪挿しは、むしろ高見えする
花を活けるのが苦手なら、いっそ一輪挿しがおすすめだ。茎を一本だけ挿す一輪挿しは、活け方に悩む余地がない。花を一本、すっと挿すだけ。それだけで、驚くほど様になる。一輪の花が持つ、凛とした佇まいが引き立って、むしろ高見えする。たくさんの花を上手に活けるより、一本を美しく見せるほうが、ずっと簡単で、しかも洗練されて見える。キャンドゥには、一輪挿しにちょうどいい、細身の花瓶や試験管のような形のものもある。庭で摘んだ一輪や、花束から抜いた一本を、気軽に飾れる。一輪挿しは、花を飾る敷居を、ぐっと下げてくれる。一本を、丁寧に見せる。これが、いちばん簡単な高見えの技だ。
水を入れるか入れないかで、選ぶ素材が変わる
花瓶を選ぶ時、見落としがちだが大事なのが、生花を活けるのか、ドライフラワーや造花を飾るのかだ。これによって、選ぶべき素材が変わる。ここを間違えると、水が漏れる。
ワイヤーやビニール系は、生花に向かない
キャンドゥの変わり種、ワイヤーを編んだ花瓶や、袋のような形のビニール系の花瓶。これらは、おしゃれだが、水をためられない。だから、水が必要な生花には向かない。これらは、水のいらないドライフラワーや、造花を飾るためのものだ。生花を活けるつもりで、水の漏れる花瓶を選ぶと、当然、水がこぼれる。ワイヤーやビニール系の花瓶を選ぶなら、飾るのはドライフラワーか造花に限る。逆に、これらでドライフラワーを飾ると、独特の軽やかな雰囲気が出て、ぐっとおしゃれになる。素材が、水をためられるかどうか。ここを、飾りたい花の種類と、必ず照らし合わせたい。水がいるかいらないか。まず、そこを考える。
生花なら、ガラスか陶器を選ぶ
生花を活けるなら、水をきちんとためられる、ガラスか陶器の花瓶を選ぶ。これらは、水漏れの心配がなく、花に水を与え続けられる。透明なガラスなら、水の量も一目で分かって、水替えの目安になる。陶器なら、中が見えないぶん、花だけをすっきり見せられる。生花は、水がなければすぐにしおれるから、水をためられる素材であることが、絶対の条件だ。ガラスか陶器か。この二つなら、生花を安心して活けられる。飾りたいのが、みずみずしい生花なのか、乾いたドライフラワーなのか。それに応じて、水をためる器か、ためない器かを選ぶ。この見極めが、花瓶選びの、最初の分かれ道になる。
安いガラスならではの、注意点もある
ガラスの花瓶を勧めてきたが、安いガラスには、気をつけたい点もある。値段が安いぶんの、割り切りが必要な面だ。知っておくと、後悔しない。
薄いガラスは、倒れやすく割れやすい
安価なガラスの花瓶は、作りが薄く、軽いことがある。軽いということは、倒れやすいということだ。背の高い花を活けると、重心が上にきて、ちょっとした拍子にぐらりと倒れる。しかも、ガラスだから、倒れれば割れる恐れもある。だから、安いガラスの花瓶を使う時は、置き場所に気をつけたい。倒れても大丈夫な、安定した場所に置く。人がよく通る場所や、ものが当たりやすい場所は避ける。背の高い花を活けるなら、底が重めの、安定感のある花瓶を選ぶ。軽くて薄いガラスは、扱いに少し注意が要る。値段が安いぶん、倒れやすさと割れやすさは、頭に入れておきたい。安全な場所に、そっと置く。
洗いやすさも、長く使う鍵
花瓶を長く使うなら、洗いやすさも大事だ。花を活けた花瓶は、水がだんだん濁って、内側にぬめりがつく。これを放っておくと、花が早くしおれるし、嫌なにおいも出る。だから、定期的に中を洗いたい。ところが、口が細くて、中がふくらんだ形の花瓶は、手やスポンジが入らず、洗いにくい。奥のぬめりが取れず、困る。花瓶を選ぶ時、洗いやすい形かどうかも見ておくと、後が楽だ。口が広めで、まっすぐな形なら、中まで手が届いて洗いやすい。花を長持ちさせるには、花瓶を清潔に保つことが欠かせない。洗いやすさは、地味だが、長く使ううえで効いてくる。飾る楽しさと、洗う手間。両方を考えて選びたい。
花瓶を複数そろえて、組み合わせる
110円という手頃さを生かすなら、花瓶を一つだけでなく、複数そろえて組み合わせる手がある。安いからこそできる、この飾り方が効く。
同じ花瓶を並べると、それだけで様になる
同じ花瓶を、いくつか並べて飾ると、それだけで、意図して整えた雰囲気が出る。手のひらサイズのミニ花瓶を、三つ横に並べて、それぞれに一輪ずつ活ける。ばらばらに置くより、そろえて並べるほうが、ぐっと洗練されて見える。110円なら、いくつも買っても、財布は痛まない。同じものを複数買って、リズムよく並べる。この飾り方は、安い花瓶だからこそ、気軽に試せる。一つずつ違う花瓶を集めるより、同じ花瓶をそろえるほうが、まとまりが出て、様になる。並べる、という飾り方が、手頃な花瓶の魅力を、何倍にも引き出す。数の力を、味方につけたい。
高さ違いを組み合わせて、リズムを作る
同じ花瓶を並べるのに慣れたら、次は、高さの違う花瓶を組み合わせてみたい。背の高い花瓶と、低い花瓶を、隣り合わせに置く。高低差があると、視線が上下に動いて、飾りに動きとリズムが生まれる。すべて同じ高さで並べるより、変化がついて、こなれた印象になる。キャンドゥには、いろいろな高さの花瓶があるから、それらを組み合わせて、自分だけの飾り方を作れる。高い花瓶に枝ものを、低い花瓶に小花を。高さの違いが、小さな飾りの世界に、奥行きを与える。手頃な花瓶をいくつか組み合わせるだけで、まるでお店のディスプレイのように仕上がる。組み合わせる楽しさが、そこにある。
結局、花瓶より飾り方で高見えが決まる
キャンドゥの花瓶を、どう選び、どう飾るか。突き詰めて分かったのは、高見えするかどうかは、花瓶の値段ではなく、飾り方で決まる、ということだった。口の細いつぼ型は花がまとまり、詰め込みすぎは安っぽくなる。背の高い花は筒型で、苦手なら一輪挿しが高見えする。水がいる生花はガラスか陶器、水のいらないドライフラワーはワイヤーやビニール系。安いガラスは倒れやすいから置き場所に注意し、洗いやすい形を選ぶ。同じ花瓶を並べたり、高さ違いを組み合わせたりすれば、飾りに様が出る。花瓶より飾り方。ここを押さえれば、110円で十分だ。
口の形と量を押さえれば、110円で十分
あの日、花束を丸ごと突っ込んで、ぎゅうぎゅうにしていた住人は、活け方を変えた。花束の輪ゴムをほどいて、数本だけを選び、口の細いガラスの花瓶に、余白を持たせて活け直す。残りの花は、別のミニ花瓶に一輪ずつ分けて、キッチンカウンターに並べた。窓から差す光が、ガラスと水を透かして、ころんとした花瓶が、ぱっと輝く。さっきまで野暮ったかった花が、まるで花屋に並んでいたかのように、すっと決まっている。(これ、本当に同じ花瓶?)本人が、目を丸くしていた。110円の花瓶が安っぽかったのではない。丸ごと詰め込むという活け方が、それを安く見せていただけだった。口の形を選び、花の量を減らし、器と花を合わせる。たったこれだけで、キャンドゥの花瓶は、値段の何倍にも見える。安い花瓶を生かすも殺すも、飾り方しだいだった。手頃な一つに、お気に入りの一輪を。それだけで、暮らしに小さな彩りが、そっと加わる。

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