同じシャツが、二年で袖口から裂けた
シェアハウスに越してきた住人が、前の家で使っていた洗濯機の話をしていました。ヒーター式のドラム式。乾燥まで毎日回していたそうです。
一年経ったころから、Tシャツの首まわりがよれ始めた。二年目、お気に入りのシャツの袖口がほつれて、糸を引っ張ったらそのまま裂けた。
(洗濯機のせいだと思わなかったんだよね、最初は)
うちのシェアハウスにあるのはヒートポンプ式です。同じ人が同じように毎日回して、一年半。衣類の状態が明らかに違う。
線を引きます。乾燥を週三回以上使うならヒートポンプ。週一回以下、あるいは乾燥はたまにしか使わないならヒーター式で十分。この使用頻度が、十万円の価格差を正当化するかどうかの分かれ目になります。
熱の作り方が、根本的に違う
ヒーター式はドライヤー、ヒートポンプはエアコン
ヒーター式は電熱線に電気を流して発熱させ、その熱風をドラムに送ります。仕組みはドライヤーそのもの。
ヒートポンプ式は冷媒を圧縮したり膨張させたりして、空気中の熱を移動させる。エアコンと同じ原理です。熱をゼロから作らず、移すだけ。
この差が電気代に直結します。熱を作るには大きな電力が要るけど、移すだけなら少なくて済む。
乾燥温度は、六十度台と八十度台
ヒートポンプ式の庫内は六十度前後。ヒーター式は八十度から百度近くまで上がります。
うちの住人が乾燥直後に扉を開けたとき、ヒーター式は顔に熱風が当たってのけぞったと言っていました。ヒートポンプ式は、ぬるい風がふわっと来る程度。
湿気の処理方法も別
ヒートポンプ式は取り込んだ空気から水分を分離し、庫内で循環させます。外に湿気をほとんど出さない。
ヒーター式は水で冷やして除湿する方式が主流で、そのぶん水道代がかかります。機種によっては乾燥一回で数十リットルの水を使う。
電気代の差と、何年で回収できるか
乾燥一回あたり、二十円と五十円
うちで実測に近い数字を出すと、六キロの乾燥でヒートポンプ式が十五円から二十五円。ヒーター式が四十五円から六十円。
差額を三十円として計算します。
毎日使うなら、三年で追いつく
毎日一回なら年間の差額が一万九百五十円。本体価格の差が十万円なら、九年かかる計算になります。
ここに水道代を足すと話が変わる。ヒーター式の水冷除湿は、乾燥一回で四十リットル前後を使う機種があります。都内の水道料金で一回あたり十円強。
電気と水を合わせて一回四十円の差。毎日使えば年間一万四千六百円。七年で回収です。
週二回なら、元は取れない
週二回の乾燥だと、年間の差額は四千円台。二十年かかっても回収できません。
この使い方なら、素直にヒーター式を選んで浮いた十万円を別のことに使うほうが合理的です。
乾燥時間と、衣類へのダメージ
ヒートポンプは時間がかかる、けど夜なら関係ない
低温で乾かすぶん、ヒートポンプ式のほうが時間が長い機種もあります。六キロで三時間前後。
ヒーター式は高温で一気に飛ばすので、二時間台で終わることがある。
うちは夜中に回して朝取り出すので、この差を体感したことがありません。日中に回して昼過ぎに着たい、という使い方をするなら効いてくる差です。
八十度の熱風が、繊維を痛める
綿のTシャツは高温乾燥で縮みます。ポリエステルは熱でわずかに硬化する。ウールは論外として、化繊混の衣類も表面が毛羽立ってくる。
冒頭の住人のシャツが裂けたのは、繊維が熱で脆くなったところに、ドラムの回転で摩擦がかかり続けた結果でした。
うちのヒートポンプ式で二年着ているシャツは、まだ首まわりが崩れていません。全部が乾燥方式のおかげとは言い切れないけど、差は感じます。
縮みが気になるなら、量を減らす
どちらの方式でも、詰め込むと生地同士の摩擦が増えます。乾燥容量は洗濯容量の半分程度が目安。
十キロ洗える機種でも、乾燥は五キロまで。ここを守ると仕上がりが変わります。
設置と、部屋の暑さ
ヒーター式は、脱衣所の温度を上げる
これは夏に効いてきます。高温の熱を作るので、運転中の脱衣所がじわじわ暑くなる。
うちの住人が前に住んでいた部屋は、夏場に乾燥を回すと洗面所の温度が三度ほど上がったそうです。風呂上がりに入ると、湿気と熱でサウナみたいだった、と。
ヒートポンプ式は排熱が少ないので、この現象が起きにくい。
本体の大きさと重さは、ヒートポンプが上
熱交換のユニットを積むぶん、奥行きと重量が増えます。八十キロを超える機種も珍しくない。
搬入経路の幅、階段の踊り場、防水パンのサイズ。この三つを事前に測る。うちは搬入業者に、階段が曲がりきらないと言われて肝を冷やしました。結局ベランダから入れた。
防水パンの内寸を、必ず確認する
古いアパートの防水パンは六十四センチ角が多く、大型のドラム式が乗りません。かさ上げ台を使う手はありますが、高さが増して扉が開けにくくなる。
手入れの手間は、どちらも避けられない
ヒートポンプ式は、熱交換器にホコリが溜まる
これが最大の弱点です。乾燥フィルターを抜けた細かい繊維が、熱交換器のフィンに付着していく。
放置すると乾燥時間が伸び、電気代の優位が消えます。うちは半年に一度、自動洗浄機能を回したうえで、点検口から確認しています。
ヒーター式は、乾燥フィルターを毎回
シンプルな構造なので、フィルター掃除さえやれば大きな詰まりは起きにくい。ただし毎回やる必要がある。
うちで一度、二週間放置したことがありました。フィルターに灰色の毛布みたいな層ができていて、剥がすとベリッと音がした。あれ以来、扉を開けたら必ず取る流れにしています。
糸くずフィルターと排水口は共通
方式に関係なく、下部の糸くずフィルターと排水口の掃除は必要です。ここが詰まると、すすぎの途中で止まります。
故障したときの、財布への打撃
ヒートポンプユニットの交換は、五万円台
構造が複雑なぶん、修理費が高い。コンプレッサーや熱交換器に不具合が出ると、部品代と工賃で五万円から八万円。
ヒーターの交換は、二万円台
電熱線が切れた場合の交換は比較的安価です。構造が単純だと、直すのも安い。
五年以上使うなら、延長保証を検討する
どちらの方式も、乾燥機能付きのドラム式は故障率が高め。うちは量販店の五年保証を付けました。本体価格の五パーセント前後で、修理一回ぶんの安心が買えます。
結局、どちらを買うか
ヒートポンプを選ぶべき人
乾燥を週三回以上使う。共働きか単身で、干す時間を作れない。衣類の傷みを抑えたい。脱衣所が狭く、夏の熱がこもると困る。
この条件が二つ以上当てはまるなら、価格差を払う意味があります。
ヒーター式で足りる人
乾燥は梅雨と雨の日だけ。普段は外に干す。本体価格を抑えたい。設置スペースが限られている。
年に何十回かの乾燥のために十万円を上乗せするのは、計算が合いません。
そもそも乾燥を使わないなら、縦型が候補
洗浄力とコストで言えば、縦型に分があります。ドラム式を選ぶ理由の大半は乾燥機能なので、使わないなら選択肢に入れ直す価値がある。
洗濯機を買う日の、最後の確認
うちの住人は、あのシャツが裂けた経験からヒートポンプ式を選びました。毎日乾燥まで回す生活だったので、判断としては正しかったと思う。
搬入の日、扉を開けて中を覗き込んで、ぼそっと言っていました。これで服が生き延びる、と。
乾燥を何回使うか。答えはそこにしかありません。

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