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レトロな電気ストーブの選び方|古い一台を3年使って分かった現実

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オレンジ色の光を見た瞬間、部屋の空気が変わった

リサイクルショップの棚の下段。四千五百円の値札が貼られた、丸い反射板の電気ストーブ。
持ち上げると、ずしりと重い。金属の網が、指に冷たい。
スイッチを回すと、かちりと鳴って、中の管がじわじわ赤くなっていった。
これ、実家にあったやつだ
反射板に映った光が、店の床に丸く広がる。子どものころ、あの前で靴下を乾かしていた記憶が、勝手に立ち上がってきた。
その場で買った。三年前の十一月。

シェアハウスの共用リビングで、いまも冬になると引っ張り出す。
見た目に惚れて買ったけれど、使ってみると分かることが多かった。褒めるだけの話にはならない。

暖かさの届く範囲が、狭い

先に言っておく。この形式のストーブは、部屋を暖めない。
熱を光として飛ばして、当たった物の表面を温める。空気はほとんど動かない。
うちのリビングで測ったら、正面一メートルの位置で体感がはっきり変わる。二メートル離れると、ほぼ何も感じない。
足元に置いて、その前に座る。この使い方でしか本領は出ない。

それでも選ぶ理由

効率だけで言えば、エアコンに勝てるところがない。
それでもこの一台がリビングに居座り続けているのは、点けた瞬間に赤くなるから。
待ち時間がない。スイッチを回して三秒で、手のひらに熱が届く。
帰宅して、コートを脱ぐ前にしゃがみ込んで手をかざす。あの数十秒のために置いている。

古い一台を買うときに見る場所

コードの被覆が、硬くなっていないか

中古で買うなら、ここが最優先。
本体は金属なので、多少の錆があっても動く。危ないのはコード。
根元を指で持って、ゆっくり曲げてみる。しなやかに曲がれば問題ない。ぱりっとした感触や、細かいひび割れが見えたら避ける。
うちが買った一台は、コードが柔らかかった。前の持ち主が丁寧に扱っていたのだと思う。
プラグの刃も見る。根元が黒く変色していたら、過熱の跡。買わない。

転倒したときに切れる仕組みがあるか

本体を少し傾けて、電源が切れるか確かめる。
底面に、傾きを検知して電源を落とす装置が入っている機種がある。
古い年式のものには付いていないことがある。付いていない機種は、共用スペースでは使わない。
うちのは付いていた。試しに傾けたら、かちんと音がして赤い光が消えた。
これがない機種を自室で使うなら、周囲一メートルに何も置かない前提になる。

反射板の状態

後ろの湾曲した金属板。ここが熱を前に飛ばしている。
曇っていたり、錆が浮いていたりすると、反射する量が落ちる。
うちの一台は、買ったとき全体がくすんでいた。乾いた布で磨いたら、かなり戻った。
研磨剤を使うと表面の膜が取れて、逆に曇りやすくなる。乾拭きにとどめる。

使ってみて分かった、生活への影響

洗濯物が、すぐ乾く

これは予想外の利点だった。
ストーブの正面に洗濯物を干すと、驚くほど早く乾く。
ただし、直接当たる距離に干すのは危ない。うちは一メートル以上離した位置に物干しを置いている。
一度、住人がタオルを近づけすぎて、表面に薄い焦げ跡ができた。匂いで気づいた。
生地が触れる距離は論外。輻射熱だけでも、繊維は変色する。

肌と喉が、乾く

正面に長時間いると、顔の表面から水分が飛ぶ。
うちの住人が、リビングで作業した日だけ肌がつっぱると言い出した。
空気全体は乾かないが、直接光が当たる面は乾く。
対策として、正面に座る時間を区切る。あるいは、机の上に水を張ったコップを置く。局所的だが、多少は違う。

足元だけ暖まる、という体験

冒頭に書いた狭さは、裏を返せば集中できるということ。
うちは食卓の下、足が入る位置に置いている。座っている人の膝から下だけが暖かい。
上半身はエアコンで、下半身はストーブで。この組み合わせが、いちばん電気代が安く済んだ。
エアコンの設定温度を二度下げても、寒いという声が出なくなった。

電気代の実際

消費電力は、見た目より大きい

この形式のストーブは、四百ワットから八百ワットのものが多い。
うちの一台は、強で六百ワット、弱で三百ワット。
一日四時間、強で使ったとして、月に二千円前後の上乗せになる計算。
エアコンのほうが、部屋全体を暖める効率では上回る。
補助として使うか、主役に据えるかで、金額の意味が変わる。

弱で足りる場面が多い

強にすると、正面が熱すぎる。
うちは基本的に弱で使っている。一メートル以内に座るなら、それで十分。
強を使うのは、帰宅直後の数分だけ。手を温めたら弱に落とす。
このひと手間で、月の電気代が千円ほど変わった。

タイマーは、ほぼ付いていない

古い機種には、自動で切れる機能がない。
うちはコンセントに、時間で電源を切る器具を挟んでいる。千円台で買える。
つけっぱなしで寝てしまう事故を、これで防いでいる。
共同生活だと、最後にリビングを出る人が忘れることがある。器具に任せたほうが確実だった。

安全に使うために、決めたこと

周囲一メートルに、何も置かない

これが最初の決まりごと。
新聞、雑誌、クッション、洗濯物。可燃物を近づけない。
うちはストーブの周りに、テープで床に印をつけた。目に見える境界があると、誰も物を置かなくなる。
特にカーテンの近くは避ける。風で揺れて、一瞬でも触れたら危ない。

スプレー缶を近くに置かない

これは強く言っておきたい。
整髪料や殺虫剤の缶を、暖房器具の近くに置くと、内部の圧力が上がって破裂することがある。
うちの住人が、ストーブの横の棚に消臭スプレーを置いていた。気づいて移動させた。
夏場に置いた物が、冬にそのまま残っている。この見落としが一番怖い。
シーズンの最初に、周囲の棚を一度確認する。

ほこりを、こまめに払う

発熱する管や網に、ほこりが積もる。
そこに熱が加わると、焦げた匂いが出る。
うちは月に一度、冷めた状態で、乾いた刷毛で払っている。掃除機のノズルで吸うと、管を割る危険がある。
使い始めの日に、必ず一度払う。夏のあいだに積もったほこりが、点けた瞬間に匂いを出す。

見た目を楽しむための、手入れ

金属部分の錆

古い機種は、網や台座に錆が浮いていることがある。
細かい紙やすりで軽くこすって、乾いた布で拭く。
その上から、金属用の艶出しを薄く塗ると進行が遅くなる。塗ったあと、必ず完全に乾かしてから使う。
うちは買った年に一度やって、それ以降は放置している。三年で目立った悪化はない。

スイッチの接触

回すタイプのスイッチは、内部の接点が汚れると、反応が鈍くなる。
何度か回して、途中で引っかかる感触があれば、劣化している。
無理に力をかけると壊れる。分解する技術がないなら、そのまま使わないほうがいい。
うちのスイッチは、三年目に少し重くなった。回すたびに、かちりという音が鈍くなってきている。

部品はもう手に入らない

古い機種の部品は、メーカーの保有期間を過ぎている。
壊れたら修理できない前提で買う。
発熱する管が切れたら、そこで終わり。うちは予備を探したが、同じ型番のものは見つからなかった。
その覚悟があるかどうかで、中古を選ぶかが決まる。

新しく作られたレトロ調という選択

見た目が古くて、中身は新しい

最近、意匠だけを古い形にした新品が売られている。
転倒時に切れる仕組み、自動で切れるタイマー、過熱を防ぐ機能。これらが最初から入っている。
値段は八千円から一万五千円ほど。
うちの住人が自室用にこれを買った。見た目は共用のものとよく似ている。安全性では明らかに上。

本物の古さは、再現できない

それでも、うちのリビングには三年前の中古が置かれ続けている。
金属の重さ、塗装の剥げ方、スイッチを回したときの手ごたえ。新品には出せない部分がある。
機能で選ぶなら新しいもの。手触りで選ぶなら古いもの。
どちらが正しいという話ではないと思う。

買うなら、動作確認ができる店で

中古を選ぶなら、その場で通電できる店にする。
スイッチを回して、赤くなるまでの時間を見る。片側だけ点かない機種がある。
うちは店員に頼んで、五分ほど点けさせてもらった。匂いが出ないことも確認した。
持ち帰ってから点かないと分かる、というのがいちばん虚しい。

先週、リビングでリョウが床にしゃがんでいた。
スイッチを回すと、かちり。三秒後、管の中央から赤い光が広がっていく。
彼は両手をかざしたまま、しばらく動かなかった。反射板に映った光が、床に丸い輪を作っている。
「これ、じわーって来ますね」
テープで引いた床の線の外側で、彼は膝を抱えて座り直した。

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この記事を書いた人

屋根の下の知恵袋TOKYOシェアライフ

都内シェアハウス住民によるリアルな生活ハック発信中。
節約、家事、収納、コミュニティづくりまで、みんなで暮らすからこそ生まれる知恵を発信してます。

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