出産準備リストの前で、ペンが止まった
臨月のお腹を抱えて、出産準備リストにチェックを入れていた。肌着、おむつ、ガーゼ。順調に進んでいたペンが、ベビーハンガーの欄で止まった。
都内で暮らすYさん(20代)は、そのときの迷いをこう話す。「これ、本当にいるのかなって。赤ちゃん専用って書いてあると買わなきゃいけない気がするけど、使う期間って短いんでしょ?大人用じゃダメなのって、リストを見ながらしばらく考え込んじゃって」。
ベビーハンガーはいらない。そう検索する人は、Yさんと同じく出産準備の真っ最中で、ひとつでも無駄な買い物を減らしたいと考えている。結論から言う。ベビーハンガーは必須ではない。代用できる。ただし、専用を買ったほうがラクになる場面もはっきり存在する。その境目がどこにあるのかを、代用品の実力と一緒に見ていく。
必須ではない、と言いきれる理由
まず、なぜいらないと言えるのか。
ベビーハンガーは、なくても洗濯も収納も成立する。赤ちゃんの服は小さくて軽いので、干すこと自体はほかのハンガーでも事足りる。専用品でないと干せない、しまえないという場面は、実はほとんどない。短い使用期間のために専用品を買い揃える必要はない、というのが正直なところだ。
赤ちゃん用品は、専用と名がつくと買わなければと思わせる力がある。でも、本当に専用が必要なものと、家にあるもので代えられるものは分けて考えていい。ベビーハンガーは、後者に入る代表格だ。
代用品の実力、どれが使えてどれが惜しいか
子ども用ハンガーが、代用の最有力
代用品の中で最もおすすめなのが、子ども用ハンガーだ。
肩幅が赤ちゃん服に近く、型崩れしにくい。ベビー専用ほど小さくはないが、新生児期を過ぎればむしろちょうどよく、長く使える。ベビーから子ども服まで通して使えると考えれば、最初から子ども用を選ぶのは賢い。サイズが近いぶん、肩の部分が伸びたり跡がついたりするトラブルも起きにくい。
100均ハンガーと、もらいものという裏ワザ
コストを抑えたいなら、100円ショップが頼りになる。
ダイソーやセリア、ワッツといった100均には、ベビー服にぴったりのハンガーが各種そろっている。滑り止め加工がされていて服がずり落ちにくいもの、ハンガーの跡が残りにくいものなど、110円とは思えない品ぞろえだ。2本組や5本組で売られていて、コスパもいい。専用ベビーハンガーをわざわざ通販で買わなくても、近所の100均で必要な数だけ手に入る。
さらにお金をかけない方法がある。ベビー服を店で買うと、ハンガーを一緒にもらえる場合がある。サイズもベビー服とぴったりで、代用品として問題なく使える。気づけば家にベビーハンガーが何本かたまっていた、ということも起きる。買う前に、手持ちのもらいものを数えてみるといい。
大人用は、惜しいけれど工夫しだい
家にある大人用ハンガーは、そのままでは少し惜しい。
肩幅が広すぎて、赤ちゃんの小さな服だと肩の部分が飛び出し、伸びて型崩れすることがある。素材やサイズによっては跡が残る。ただ、まったく使えないわけではない。タオルを肩にかけて幅を調整したり、洗濯バサミで留めたりすれば、しのげる。新生児期の本当に小さい時期さえ越えれば、大人用でも問題なくなっていく。家にあるものを工夫して使うなら、これも選択肢に入る。
それでも専用を買ったほうがいい、3つの場面
連結ピンチ式が効く、小物の多さ
ここからは公平に、専用が活きる場面を挙げる。最初に挙げたいのが、ピンチ付きの連結タイプだ。
赤ちゃんの洗濯物は、服だけではない。スタイ、靴下、ミトンといった小物が大量に出る。10本のハンガーと16個のピンチがひとつになった連結タイプなら、これらをまとめて干せる。靴下のような小さいものも、ピンチで留めれば紛失しない。片方どこいった、という洗濯あるあるが減る。この一体型の効率は、バラバラのハンガーでは出せない。使わないときはコンパクトに折りたためるものも多い。
洗濯量が多い家庭と、保育園準備
毎日の洗濯量が多い家庭では、専用品の効率が効いてくる。
赤ちゃんは1日に何度も着替える。洗濯物の量が多いほど、サッと干せてサッとしまえる専用ハンガーの使い勝手が活きる。代用でも回せるが、量が多いと差が積み重なる。
保育園に入れる予定があるなら、なおさらだ。保育園では着替えを大量に持参するため、名前をつけたハンガーで管理する場面が出てくる。サイズのそろった専用ハンガーがあると、準備が一気にラクになる。代用品を寄せ集めるより、最初から統一しておくほうが効率的だ。
長く使える、その後の活用法
短い使用期間が気になる人にこそ知ってほしいのが、ベビーハンガーのその後だ。
赤ちゃんが大きくなって使わなくなっても、ベビーハンガーは捨てなくていい。肩紐の細いキャミソールをかけるのに、ちょうどいいのだ。細い紐は普通のハンガーだとずり落ちるが、ベビーハンガーの滑り止め加工やくぼみに引っかけると、きれいに収まる。洗濯用としても収納用としても、大人になってから再就職してくれる。短命なアイテムどころか、思いのほか長く働く。
出産準備で、本当に必要なものを見極める
Yさんは、結局どうしたか。
専用のベビーハンガーは、最小限だけ買った。小物をまとめて干せるピンチ付きの連結タイプを一つ。あとは、ベビー服を買ったときにもらえたハンガーと、100均で買い足した数本でまかなった。「全部を専用でそろえなくてよかったんだって、産まれてから実感しました。もらいもののハンガーが意外と優秀で。リストの前で悩んでた時間が、ちょっとかわいく思えてきました」。
出産準備をめぐって周りの先輩ママたちに聞くと、ベビーハンガーへの考え方はさまざまだった。専用を一切買わず子ども用と100均で通した人、連結ピンチ式だけは絶対と推す人、もらいものだけで足りた人。共通していたのは、全部を専用でそろえた人はほとんどいなかったことだ。
見えてきたのは、ベビーハンガーはいるかいらないかの二択ではなく、どこまで代用してどこに専用を使うかの配分の問題だという事実だった。小物が多くて困るなら連結ピンチ式、それ以外は子ども用や100均、もらいもの。必須ではないと知ったうえで、自分の暮らしに合う一本だけ選ぶ。出産準備リストのベビーハンガーの欄は、全部買うでも全部省くでもなく、必要な分だけにチェックを入れれば、それで足りる。

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