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アメリカの冷蔵庫はなぜ巨大なのか|日本で使う前に知る現実

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玄関で止まった、幅九十センチの箱

搬入業者が、汗だくで首を横に振りました。

「これ、玄関通らないですね」

巨大な段ボールが、うちの玄関ドアの前で、完全に止まっていました。幅が、ドアの開口より数センチ大きい。あと数センチ。その数センチが、絶望的だった。

(下見のとき、ちゃんと測ったはずなのに)

アメリカ製の冷蔵庫を個人輸入した、ケントさんの引っ越し当日。玄関先で、みんなで頭を抱えた昼下がりでした。

憧れていたのは、あの観音開きだった

気持ちは、痛いほどわかります。

海外ドラマで、主人公が両手で観音開きの扉を開ける。中には、色とりどりの食材と、ジュースのボトルがずらり。扉を押すと、氷がガラガラと出てくる。

あれは、かっこいい。生活が豊かに見える。ケントさんが憧れたのも、まさにあの光景でした。

入るかどうかの前に、通れるかどうか

アメリカの冷蔵庫を検索する人は、まず置けるかを気にします。部屋のスペースが足りるか。

でも、本当の第一関門は、そこじゃない。

玄関を通り、廊下を曲がり、部屋までたどり着けるか。設置場所に収まるかより、そこまで運べるか。ここで、多くの夢が玄関先で止まります。

なぜ、あそこまで大きいのか

週に一度、まとめ買いする国だから

アメリカの冷蔵庫が巨大なのには、理由があります。

広い国土で、スーパーが遠い。だから、週に一度、車で大量にまとめ買いする文化が根づいている。

一週間分の食料を、一度に収める。牛乳は数リットル単位、肉は塊で、飲み物はケースで。それを全部入れるには、あの容量が要る。日本の、数日に一度こまめに買う生活とは、前提が違うんです。

家が広く、電気が安い

置く場所にも、余裕があります。

キッチンが広く、天井も高い。巨大な冷蔵庫を置いても、圧迫感が出ない。日本の台所とは、スケールが違う。

電気代も、日本より安い地域が多い。大きな冷蔵庫を動かし続けても、負担が相対的に軽い。大きくできる条件が、そろっているわけです。

冷凍室が主役、という発想

中身の考え方も違います。

冷凍食品を大量にストックする文化なので、冷凍室が大きい。日本の冷蔵庫が冷蔵室中心なのに対して、冷凍室が主役級の存在感を持っている。

まとめ買いした肉を小分けにして冷凍し、少しずつ使う。あの大容量の冷凍室は、その生活に最適化されています。

種類が、そもそも違う

左右に開く、観音開き

いちばん憧れられるのが、これ。左右に扉が開く、観音開きのタイプ。

中央から左右に開くので、扉を開けたときの前方スペースが少なくて済む。幅の広い庫内に、大きな皿やケーキの箱も、そのまま入る。

あの、両手で開ける動作。あれがやりたくて選ぶ人が、実際に多い。

上が冷蔵、下が冷凍という定番

もうひとつ、よく見るのが、上段が冷蔵室、下段が引き出し式の冷凍室になったタイプ。

よく使う冷蔵室が、目線の高さにくる。かがまずに、卵や飲み物を取れる。

冷凍室が下の引き出しなので、上から見下ろして中身を把握できる。使い勝手を考えた、合理的な配置です。

扉に付いた、氷と水の出る機械

そして、憧れの象徴。扉に付いた、氷と冷水のディスペンサー。

グラスを押し当てると、氷が出て、冷たい水が注がれる。扉を開けずに、飲み物が用意できる。

これが、いちばん人を惹きつける機能です。同時に、いちばん厄介な機能でもある。理由は、後で書きます。

日本で使う、最初の壁は電圧

コンセントの形が、そもそも合わない

アメリカと日本では、電圧が違います。

アメリカは百二十ボルト前後、日本は百ボルト。この差があるので、アメリカの家電を日本のコンセントにそのまま挿しても、正常に動かないことがある。

そもそも、プラグの形状が合わない場合もある。挿せない、挿せても力が出ない。ここが、最初の関門です。

変圧器を挟むという、現実的な手間

これを解決するには、変圧器を使います。日本の電圧を、アメリカの家電が求める電圧に変換する装置。

冷蔵庫のような大きな家電には、それなりに容量の大きな変圧器が要ります。これが、そこそこ大きく、そこそこ高い。

冷蔵庫の裏に、もう一台、箱が増えるイメージです。この存在を、購入前に計算に入れておかないと、後で置き場所に困ります。

電気代は、覚悟していたほどではない

意外だったのが、ここ。

巨大だから電気代が跳ね上がる、と身構える人が多い。でも、最近のモデルは省エネが進んでいて、想像したほどの怪物ではありません。

もちろん、日本の小型より高くはつく。ただ、月に何万円もかかるような話ではない。ここは、過度に恐れる必要はありません。むしろ壁は、他にあります。

二つ目の壁は、搬入経路

玄関、廊下、曲がり角

あの玄関先の悲劇です。

冷蔵庫が置き場所に収まるかより、そこまで運ぶ経路のほうが、はるかに厳しい。

玄関ドアの幅。廊下の幅。廊下の曲がり角。この三つを、実際にメジャーで測る。特に、直角に曲がる場所は要注意。まっすぐなら通る幅でも、曲がれないことがあります。

エレベーターに、乗るのか

集合住宅なら、さらに関門が増えます。

エレベーターの、扉の幅と、かごの奥行き。ここに巨大な冷蔵庫が乗るのか。乗らなければ、階段で運ぶことになる。

大型家電を階段で上げるのは、特別な作業で、費用も跳ね上がる。しかも、階段の踊り場で曲がれるかという、別の問題も出てくる。ここまで確認する人は、少ない。

置いたあとの、放熱スペース

無事に運び込めても、まだ終わりません。

冷蔵庫は、側面や背面から熱を出します。壁にぴったりつけると、熱がこもって効率が落ち、電気代が上がり、故障の原因にもなる。

本体のサイズ、プラス、周囲の放熱スペース。この合計が、置き場所に収まるか。ぴったりサイズで買うと、ここで詰みます。

氷が出る、その裏側で起きること

給水管を、冷蔵庫までひく工事

憧れの氷ディスペンサー。あれが動くには、冷蔵庫まで水を供給する必要があります。

つまり、水道の給水管を、冷蔵庫の設置場所まで分岐してひく工事が要る。冷蔵庫を置くだけでは、氷は出ません。

賃貸だと、この工事ができない場合がある。持ち家でも、キッチンの配管次第で、簡単にはいかないことがある。あのガラガラと出る氷は、工事の上に成り立っています。

フィルター交換という、続く出費

給水機能には、水をきれいにするフィルターが付いています。

これは、消耗品です。定期的に交換しないと、水の味が落ち、詰まる。そして、このフィルターが、輸入品だと手に入りにくく、高い。

買って終わりではなく、使い続けるかぎり、地味な出費が続く。ここを見落とすと、あとでじわじわ効いてきます。

水漏れした、という話

ケントさんの家で、実際に起きたこと。

給水部分の接続が甘く、冷蔵庫の下から、じわじわ水が漏れていました。気づいたのは、床が変色してから。

水を扱う機能がある以上、水漏れのリスクは、常につきまといます。あの便利な氷は、こういう裏側とセットなんです。

壊れたとき、誰が直すのか

部品が、国内にない

輸入品の、最大の弱点が、これです。

故障したとき、交換用の部品が、国内に在庫されていないことが多い。海外から取り寄せになり、時間もお金もかかる。

その間、巨大な冷蔵庫は、ただの大きな箱になります。数週間、冷蔵庫なしで暮らす。想像すると、けっこうきつい。

修理できる業者を、先に調べておく

そもそも、輸入冷蔵庫を修理できる業者が、限られています。

国内メーカーなら、電話一本で修理に来てくれる。でも、輸入品を扱える業者は少なく、対応できる範囲も狭い。

買う前に、故障したらどこに頼めるのかを、調べておく。壊れてから探すと、途方に暮れます。憧れだけで突っ込むと、ここで後悔する。

それでも欲しい人への、現実的な道

国内メーカーの、大型観音開き

あの観音開きに憧れているだけなら、実は近道があります。

日本のメーカーも、大型の観音開き冷蔵庫を作っています。見た目は、あの憧れにかなり近い。

しかも、電圧はそのまま使え、搬入も国内サイズを想定していて、壊れても国内で直せる。輸入品の壁を、まるごと回避できる。憧れの本体が観音開きの見た目なら、これで九割かなう。

この家に置いた、折衷案

玄関で止まったケントさんの冷蔵庫は、結局、返品することになりました。

そのあと、うちの共用キッチンに入ったのは、国内メーカーの、大きめの観音開き。両手で開ける、あの動作はできる。庫内も広い。氷は、製氷皿で作る。

憧れていたのは、巨大さそのものではなく、扉を両手で開けるあの瞬間だったのかもしれない。ケントさんは今、その扉を毎朝、満足そうに開けています。

アメリカの冷蔵庫が大きいのは、あの国の暮らしにとって必然でした。その必然ごと日本の家に持ち込めるかは、サイズよりも、電圧と、搬入経路と、壊れたときの当てがあるか。憧れを現実にするなら、測るべきは部屋ではなく、そこへ至る道のりのほうです。

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屋根の下の知恵袋TOKYOシェアライフ

都内シェアハウス住民によるリアルな生活ハック発信中。
節約、家事、収納、コミュニティづくりまで、みんなで暮らすからこそ生まれる知恵を発信してます。

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