足の裏だけ熱くて、肩は冷えたままだった
一月のリビング。共用の三畳ホットカーペットの上で、四人が寝転がっていた。
床は温かい。というより、熱い。長く同じ姿勢でいると、太ももの裏がじりじりしてくる。
なのに顔が冷たい。息が白くなるほどではないけれど、鼻先だけ空気が違う。
(下は熱いのに、なんで寒いんだ)
毛布を肩にかけたタケルが、天井を見上げて呟いた。
「これ、暖房になってなくない?」
三年で二枚のホットカーペットを共用リビングで使い倒した。順位をつけるより、どこで満足度が分かれるかを書いたほうが役に立つと思う。
三畳という数字の実際
三畳の商品は、おおよそ横二メートル、縦百八十センチ前後。
メーカーによって五センチから十センチの差がある。ぴったり三畳の部屋に敷くと、家具の脚に当たって波打つことがある。
うちのリビングは六畳。その半分を占める形で敷いた。人が三人から四人座れる。
一人暮らしの六畳なら、これで十分すぎる。二畳のほうが扱いやすい場面もある。
選ぶ軸は、三つだけ
売り場に並ぶ商品は、見た目がほとんど同じ。
決め手になるのは、面ごとに切り替えられるか、洗えるか、厚みがどれくらいか。この三点。
消費電力や温度調節の段数は、どれも似たり寄ったりだった。
面の切り替えが、電気代を左右する
左右で別々に入れられるか
三畳の商品には、全面を温めるものと、半分ずつ切り替えられるものがある。
一人で使うとき、半分だけ入れれば消費電力が半分になる。
うちの一枚目は、切り替えができない機種だった。深夜に一人でテレビを見ているときも、三畳全部が温まっていた。
二枚目は切り替え式にした。人数に応じて、右だけ、左だけ、両方と使い分ける。
共同生活だと、この機能の有無で電気代がはっきり変わった。
消費電力の数字を、時間で考える
三畳の商品で、最大出力はおおよそ七百ワットから八百ワット。
ただし、常にその出力で動いているわけではない。設定温度に達すると、断続的に切れる。
実際の平均は、その半分以下になることが多い。
うちは一日六時間ほど使って、月の電気代が千五百円ほど上がった。二枚目の切り替え式に替えてからは、千円を切った。
タイマーが付いているか
これは切実な機能。
ホットカーペットの上で寝落ちする人が、必ず出る。
うちの住人は、朝までつけっぱなしにしたことが三回ある。低温やけどの危険もあるし、電気代も無駄になる。
数時間で自動的に切れる機能が付いているものを選ぶ。
うちの二枚目は六時間で切れる。切れたときの、じわっと冷えていく感じで目が覚める。
洗えるかどうかで、寿命が決まる
本体は洗えない
まず前提として、発熱する本体を洗うことはできない。
洗えるのは、その上にかけるカバーの部分。
本体とカバーが一体になっている商品と、分離できる商品がある。
分離できないタイプは、汚れたら拭くしかない。うちの一枚目がこれで、二年目には表面が黒ずんでいた。
カバーを分けられると、話が変わる
本体の上にカバーを敷いて、それだけ洗濯機で洗える構造。
食べこぼし、飲み物、皮脂。共用リビングだと、これが日常的に起きる。
うちの二枚目は分離型。カバーを月に一度洗っている。三年目でも清潔さが保たれている。
本体だけを買って、上に自分で好きなラグを敷く方法もある。この場合、ラグの厚みで熱の伝わり方が変わる。
ダニ対策の機能
高温で一定時間動かして、ダニを退治する機能が付いた商品がある。
使うときは、上に何もかけない状態で数時間動かす。そのあと掃除機をかける。
うちは春と秋に一度ずつ実行している。
効果を数字で測ったわけではないけれど、住人の一人が肌の痒みを訴えなくなったのは、この習慣を始めたあとだった。
厚みと、下に敷くもの
薄いと、床の冷たさが上がってくる
ホットカーペットは、上に向かって熱を出すのと同時に、下にも逃げている。
床がフローリングだと、その熱が床材に吸われる。
うちの一枚目は薄型で、直接床に敷いていた。温まるまでに二十分かかった。
断熱用のシートを下に敷いたら、十分を切った。千五百円ほどの投資で、体感が変わった。
断熱シートは、必須に近い
アルミ蒸着された薄いシートが、ホームセンターで売っている。
下からの冷えを止めて、熱を上に返す。
うちは三畳ぶんで二千円ほどのものを使っている。二年使って、まだへたっていない。
これを敷くかどうかで、設定温度を一段階下げられる。電気代にも効く。
畳の上に敷くときの注意
畳は湿気を吸う素材。
その上にホットカーペットを敷いて、下からの空気の流れを止めると、畳が乾かなくなる。
うちの住人が自室の畳に敷いて、シーズン終わりにめくったら、畳が黒く変色していた。カビだった。
畳の上なら、月に一度めくって乾かす。あるいは、下に通気性のあるマットを挟む。
ホットカーペットの限界
部屋の空気は温まらない
冒頭の話に戻る。
足元は温かいのに、顔が冷たい。この状態が起きるのは、ホットカーペットが接触面だけを温める道具だから。
部屋の空気を循環させる機能がない。上半身は寒いままになる。
うちは、エアコンを弱で併用する形に落ち着いた。エアコンの設定温度を下げられるので、結果的に電気代も抑えられている。
ホットカーペット単体で部屋を暖めようとすると、無理が出る。
長時間同じ姿勢は、危ない
低温やけどという言葉を、うちの住人が体験した。
太ももの裏側が赤くなって、水ぶくれのような状態になった。本人は熱いと感じていなかった。
体温より少し高い温度でも、長時間同じ場所が触れ続けると起きる。
設定を弱にする。定期的に姿勢を変える。眠るときは電源を切る。
うちはタイマーを短めに設定して、切れたら意識的に立ち上がるようにしている。
家具の下は、避ける
テーブルの脚が乗っている部分。
そこに熱が集中して、内部の発熱線に負担がかかる。断線の原因になる。
うちは一枚目を、ソファの脚が乗った状態で使っていた。二年目に、その位置だけ温まらなくなった。
家具の脚が乗る場所を避けて敷く。あるいは、脚の下に板を挟んで荷重を分散させる。
使い終わったあとの保管
折らずに、巻く
シーズンが終わって片付けるとき。
折り畳むと、その折り目に発熱線への負担が集中する。翌年、その線だけ温まらないことがある。
筒状に巻いて保管する。うちは本体を巻いて、紐で二か所留めている。
巻く方向は、発熱線と平行になるように。説明書に記載があることが多い。
湿気を避ける
押し入れの奥に入れると、湿気を吸う。
翌シーズンに出したとき、匂いが出ていることがある。
うちは乾燥剤を一緒に入れて、袋の口を軽く閉じる程度にしている。密閉しすぎると、内部の湿気が抜けない。
片付ける前に、一度電源を入れて温めて、水分を飛ばしてから収納する。
コードの巻き方
本体から出ている電源コード。
きつく巻くと、根元に負担がかかる。断線の原因はここが多い。
ゆるく束ねて、面ファスナーのバンドで留める。
うちの一枚目は、コードの根元が断線して使えなくなった。本体は無事だったのに、そこだけで寿命が来た。
先週、リビングでミオが断熱シートを広げていた。
アルミの面を上にして、その上に本体を敷く。カバーをかけて、四隅を合わせる。
スイッチを入れて、五分後に手のひらを当てた。
「もう温かい」
彼女はそのまま寝転がって、タイマーのボタンを二回押した。表示が四時間に変わって、リビングの空気が少しずつ緩んでいった。

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