大きいほうを買って、一度も出さなくなった
共用の押し入れに、四十センチのホットプレートがある。
住人が焼肉をやろうと買ってきたやつ。使ったのは、最初の月に二回だけ。
理由は単純で、重い。出すのに気合がいる。洗うのに流し台が埋まる。片付けるとき、収納の奥から他の物を全部どかす必要がある。
(これ、使うまでの工程が多すぎるんだよな)
その横に、二十センチほどの小さいプレートが置かれている。こっちは週に三回動いている。
性能でも価格でもなく、出す気になるかどうか。それだけで使用頻度が決まっていた。
シェアハウスで三年、一人用のサイズを三台試した。共用キッチンのコンロは二口、六人で取り合う環境。
その条件下で、何が満足度を分けたかを書く。
選ぶ軸は、三つ
プレートの直径、収納したときの厚み、そして洗える範囲。
温度調節の段数や、付属プレートの種類は、後回しでいい。
うちが失敗したのは、機能を見て、日常の動作を見ていなかったから。
一人用の適正サイズ
直径二十センチから二十五センチ。これが実用の範囲。
二十センチを切ると、目玉焼きと肉が同時に置けない。
三十センチを超えると、一人用と呼ばれていても、洗うのが億劫になる。
うちの生き残りは二十二センチ。この大きさが、日常に溶けた。
直径で、できることが変わる
二十センチでできること
目玉焼き一つ、あるいは肉を三切れ。
餃子なら六個から八個。焼きそば一人前は、少し溢れる。
うちの一台目がこの大きさで、焼きそばを作ろうとして、麺が縁からこぼれた。混ぜるたびに、机の上に落ちる。
朝食の卵とベーコンには足りる。それ以上は厳しい。
二十五センチあれば、たいてい足りる
焼きそば一人前が余裕を持って収まる。
肉と野菜を分けて置ける。二種類を同時に焼ける。
うちの住人が持っているのがこの大きさ。彼は週に四回使っている。
洗うとき、うちのシンクにぎりぎり収まる。これ以上大きいと、斜めにしないと洗えない。
プレートの深さ
見落とされやすいのが、縁の高さ。
浅いと、汁気のあるものが溢れる。
うちの一台目は縁が一センチもなくて、肉の脂が机に流れた。テーブルに油の跡が残った。
二センチほどあれば、炒め物でも安心できる。鍋物までやるなら、三センチ以上のものを選ぶ。
収納で、使用頻度が決まる
厚みが五センチを超えると、しまいづらい
本体とプレートを重ねた状態の厚み。
これが薄いほど、収納場所の選択肢が増える。
うちの生き残りは、四センチほど。台所の引き出しに入る。取り出すのに、何もどかす必要がない。
押し入れの奥に入れると、出すたびに手前の物を移動させる。この手間が、使わなくなる理由になる。
コードの収納
本体の底にコードを巻き付けられる機種がある。
別々にしまうと、片方を探す時間が発生する。
うちの二台目は、コードが独立していた。使おうとしたとき、コードが見つからなくて十分探した。
本体にまとめられるものを選ぶ。
立てて置けるか
円形のプレートは、立てて収納できると場所を取らない。
うちは、シンク下の隙間に立てて入れている。
底が平らで安定するものだと、平置きしかできない。この差で、確保する面積が三倍ほど変わる。
洗いやすさで、続くかが決まる
プレートが外れるか
最も重要な確認事項。
本体からプレートが取り外せる機種と、一体になっている機種がある。
一体型は、水に浸けられない。電気の部品が入っているので。濡れた布で拭くしかない。
うちの一台目が一体型だった。焦げ付きを拭き取るのに毎回五分かかって、そのうち使わなくなった。
外れるものを選ぶ。これだけで、使う回数が倍になる。
水に浸けられるか
外れるプレートでも、丸洗いできない機種がある。
底に電気の接点が付いていると、水没させられない。
うちの生き残りは、プレートが完全に独立している。シンクに沈めて、他の食器と一緒に洗える。
商品の説明で、丸洗い可能と書かれているか確認する。
縁の形状
角が直角だと、そこに油と焦げが溜まる。スポンジが届かない。
丸みのある形状のほうが、洗いやすい。
うちの二台目は、縁と底の境目が直角で、そこだけ黒い層ができた。爪でこすっても取れなかった。
店頭で、指を縁に沿わせてみる。引っかかりがなければ合格。
温度と、焼き上がり
小さいほど、温度が安定しない
プレートの面積が小さいと、熱源との距離が近い。
中心だけが熱くなり、縁が冷たいという状態が起きやすい。
うちの一台目は、中央で焼いた肉が焦げて、端に置いた肉が生だった。
安価な機種ほど、この差が大きい。焼くとき、途中で場所を入れ替える必要がある。
温度調節の段数
無段階で調整できるものと、三段階ほどの切り替えのものがある。
一人用なら、三段階で足りる。保温、中、強。
うちは細かく調整できる機種を持っているが、実際には二か所しか使っていない。
段数の多さより、その温度が実際に出ているかのほうが重要だった。
予熱の時間
小型のプレートは、温まるのが速い。
うちの生き残りは、二分で焼ける温度になる。
大型のものは五分以上かかる。この差が、思い立ってすぐ使えるかどうかを分ける。
朝、時間がない中で使うなら、この速さが効く。
共用キッチンでの、意外な利点
コンロを占有しない
うちのキッチンはコンロが二口。六人で夕食の時間が重なる。
ホットプレートは、コンロを使わない。食卓の上、あるいはカウンターの空いた場所で調理できる。
この一点で、うちの住人の何人かがホットプレートを常用するようになった。
順番待ちに並ばなくていい。
そのまま食卓に出せる
焼いて、そのまま食べる。
皿に移す工程がないので、洗い物がプレート一枚だけになる。
うちの住人は、焼いたものを直接箸で取って食べている。冷めないので、最後まで熱い。
共同生活で洗い物が減るのは、想像以上に効く。
音と匂いが、部屋に来る
利点の裏返し。
食卓で焼くので、油の匂いが部屋に残る。
うちは、換気扇の下で使うか、窓を開けるようにしている。
焼肉をやった翌日、リビングのカーテンから匂いがしたことがある。
買う前に確認する三つ
収納場所に、実際に入るか
店で買う前に、家の収納の寸法を測っておく。
入るかどうかではなく、他の物をどかさずに入るか。
うちの失敗は、入ることは入るが、手前の物を全部出す必要があったこと。
そのひと手間が、使わなくなる決定打になった。
シンクに、収まるか
プレートの直径と、シンクの幅。
斜めにしないと入らない大きさだと、洗うのが面倒になる。
うちのシンクは幅四十センチ。二十五センチのプレートまでが、余裕を持って洗える範囲だった。
消費電力と、コンセント
一人用でも、六百ワットから千ワットほど使う。
延長コードやタップに繋ぐと、他の家電と合わせて容量を超えることがある。
うちは、電子レンジと同じタップに繋いで、ブレーカーが落ちた。
壁のコンセントに直接挿す。食卓で使うなら、近くにコンセントがあるか確認する。
先週、キッチンのカウンターでミオが朝食を作っていた。
引き出しから二十二センチのプレートを出して、コンセントに挿す。二分後、油を引いて卵を落とした。
じゅっという音がして、白身の縁がすぐに固まっていく。
「これ、フライパン出すより早いんですよね」
食べ終わったあと、彼女はプレートだけシンクに沈めた。洗い物は、それと箸だけだった。

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