真夏のベランダに出た瞬間、室外機の前がむわっと熱風の壁になっていた。エアコンをつけっぱなしにした午後、吐き出された熱気がベランダにこもって、洗濯物がなんだか生ぬるい。(この熱、なんとかならないのか)そう思って調べて見つけたのが、室外機に取り付ける風向調整板だった。吹き出し口に板を付けて、熱風の向きを上や横へ逃がす。ベランダに熱がこもるのを防いで、エアコンの効率も上がるという。さっそく共用のベランダの室外機に取り付けてみた。ところが数日後、妙なことに気づく。前より冷房の効きが悪い日がある気がする。(あれ、逆効果になってない?)良かれと思って付けた板が、裏目に出ているのかもしれなかった。
ベランダの熱風を、なんとかしたくて付けてみた
きっかけは、あの熱風の壁だった。室外機の前を通るたびに顔に当たる、もわっとした熱気。洗濯物にも良くない気がして、対策を探していた。風向調整板は、その答えに見えた。でも、実際に付けてみると、期待通りにはいかない面も見えてきた。
吹き出し口の前が、熱気でこもっていた
室外機は、部屋から奪った熱を外へ吐き出す装置だ。冷房中は、吹き出し口から絶えず熱風が出ている。うちのベランダは、そこそこ囲われた造りで、風の抜けが良くない。だから、吐き出された熱風がベランダの中にたまって、逃げ場を失っていた。夏の午後、ベランダに一歩出ると、その熱気で肌がじっとり汗ばむ。洗濯物を取り込む時も、なんだか生ぬるい風にまとわりつかれる。(この熱をどこかへ逃がせたら)そう考えるのは、自然な流れだった。
効率が上がるという話に、期待した
風向調整板を調べると、熱風の向きを変えるだけでなく、エアコンの効率が上がるという説明が目についた。室外機が吐いた熱風を、再び自分で吸い込んでしまうと、冷房効率が落ちる。板でその熱風を遠くへ逃がせば、この吸い込みを防げて、電気代も下がる、と。なるほど、と納得して取り付けた。ベランダの熱ごもりも解消できて、電気代も下がるなら、一石二鳥じゃないか。そんな期待を込めて、吹き出し口の前に板を据えつけた。ところが、その期待は、少し早とちりだったかもしれない。
風向調整板そのものは、ちゃんと効く
先に、大事な前提を押さえておく。風向調整板という道具自体は、正しく使えば効果がある。ここは否定しない。問題は使い方であって、道具そのものではない。
熱風の再吸い込みを、防ぐ働きがある
風向調整板の本来の狙いは、室外機が吐いた熱風を、その室外機自身が吸い込むのを防ぐことにある。狭いベランダや、壁が近い場所だと、吹き出した熱風が跳ね返って、また吸気口に戻ってしまう。この熱風の再吸い込みが起きると、室外機は熱い空気を取り込むことになり、冷やす効率が落ちる。板で熱風を上や横へ逃がせば、この悪循環を断てる。熱ごもりのひどいベランダほど、この効果は出やすい。うちのベランダのように風の抜けが悪い環境は、まさに板が活きる条件だった。道具の狙いそのものは、理にかなっている。
ベランダの熱ごもりは、たしかに和らいだ
実際、取り付けてみて、ベランダの熱ごもりは軽くなった。吹き出し口の前に立った時の、あの熱風の壁が、以前より和らいだのだ。板が熱風を上向きに逃がしてくれるおかげで、ベランダの床付近に熱がたまりにくくなった。洗濯物への生ぬるい風も、少しましになった。この点では、期待通りの働きをしてくれた。だから、板を付けたこと自体を後悔しているわけではない。ただ、その効果と引き換えに、思わぬ落とし穴があることに、後から気づいたのだ。
付け方を間違えると、熱がこもって逆効果になる
ここからが本題だ。風向調整板の最大のデメリットは、取り付け方を誤ると、かえって室外機の効率を落とすことにある。ここは言い切る。良かれと思った板が、室外機の首を絞める。
吹き出し口をふさぐと、熱の逃げ場が消える
いちばんやってはいけないのが、板を吹き出し口に近づけすぎて、熱風の通り道をふさいでしまうことだ。室外機は、吐き出した熱をスムーズに遠くへ逃がせて初めて、効率よく働ける。板を口のすぐ前にぴったり立てて、風の抜けを妨げると、吐き出したい熱が室外機の周りにこもる。すると、室外機は自分の吐いた熱の中で動くことになり、冷房効率がガクンと落ちる。熱を逃がすはずの板が、逆に熱を閉じ込める蓋になってしまう。うちの冷房の効きが悪くなった日があったのは、たぶん板の角度と距離が、風の流れを邪魔していたのだ。
板の向きしだいで、電気代が上がることもある
板の角度も重要だ。熱風をうまく上へ逃がせる角度ならいいが、角度を誤ると、逃がしたはずの熱風が、また吸気口のほうへ回り込むことがある。そうなると、熱風の再吸い込みを防ぐどころか、かえって助長してしまう。効率が落ちれば、その分エアコンは余計に電気を食う。電気代を下げるつもりで付けた板が、逆に電気代を押し上げる。この皮肉な事態が、付け方しだいで起こりうる。ただ付ければいい、というものではない。風の流れを読んで、正しい向きと距離に設置しないと、効果が反転する。
固定の甘さが、思わぬトラブルを招く
効率の問題と並んで、見落とされがちなのが、取り付けの物理的な安定性だ。板をどう固定するかで、別の種類のトラブルが生まれる。
強風で、板が飛んでいく危険がある
風向調整板は、室外機の上や前に取り付ける。ということは、風をまともに受ける位置にある。台風や、急な突風が吹いた時、固定が甘いと板が外れて飛んでいく危険がある。飛んだ板が、他の家の窓に当たったり、下を歩く人に当たったりしたら、大ごとだ。特に、マンションの高い階のベランダなら、飛んだものが落下する先を考えると、ぞっとする。軽い素材の板ほど、風で煽られやすい。取り付ける時は、強風でも外れないよう、しっかり固定することが欠かせない。手軽に載せるだけのタイプは、この点で不安が残る。
室外機を傷つける、留め方もある
固定の方法によっては、室外機本体を傷つけることもある。金具で締め付けたり、粘着で貼り付けたりする際に、室外機の表面に傷やサビの原因を作ってしまう場合がある。賃貸で、備え付けのエアコンなら、室外機を傷つけるのは避けたいところだ。また、板の重みや固定の仕方が、室外機の一部に無理な力をかけ続けると、そこが劣化する恐れもある。板を安定させることと、室外機を傷めないこと。この両立を考えないと、板のために本体を痛める本末転倒になりかねない。留め方は、慎重に選びたい。
そもそも板が要らない室外機も、けっこうある
ここで、身も蓋もない話をする。風向調整板が効果を発揮するのは、特定の条件の室外機だ。自分の室外機がその条件に当てはまらなければ、付けても大した効果はない。
風通しのいい場所なら、効果は薄い
風向調整板が活きるのは、熱風がこもりやすい環境だ。狭いベランダ、壁が近い、風の抜けが悪い、といった条件がそろった室外機に効く。逆に、地面に直置きで周りが開けている室外機や、風がよく通る場所に置かれた室外機なら、そもそも熱風の再吸い込みが起きにくい。こういう環境では、板を付けても効果はほとんど感じられない。うちのベランダは風の抜けが悪かったから、まだ効果があったほうだ。自分の室外機の置かれた環境が、熱ごもりしやすいかどうか。ここを見極めないと、無駄な出費になる。
まず周りを片づけるほうが、効くこともある
板を付ける前に、やるべきことがある場合も多い。室外機の吹き出し口や吸気口の前に、物が置かれていないか。植木鉢や、物置がわりの荷物が、室外機の風の通り道をふさいでいることは、意外とよくある。まずそれをどかして、室外機の周りに風が通る空間を確保する。それだけで、板を付けるより効率が上がることもある。吸気口にホコリや落ち葉が詰まっていれば、それを掃除するのも効く。板という道具に頼る前に、室外機がのびのび呼吸できる環境を整える。この基本のほうが、先に効いてくる。
結局、環境と付け方しだいで評価が割れる
室外機の風向調整板のデメリット。突き詰めて分かったのは、板そのものが悪いのではなく、使い方と環境が合っていないと逆効果になる、ということだった。熱ごもりのひどいベランダには効くが、風通しのいい場所には要らない。正しい角度と距離で付ければ効率が上がるが、吹き出し口をふさげば熱がこもって電気代が上がる。固定が甘ければ強風で飛ぶし、留め方を誤れば室外機を傷める。道具の良し悪しではなく、それを置く人の環境と、付け方の丁寧さが、評価を分けていた。
熱風の通り道を、ふさがないことが肝心
今、うちのベランダの室外機に付いている風向調整板は、吹き出し口から十分に距離を取って、熱風を上へ逃がす角度に据え直した。付けたばかりの頃、口に近すぎて風をふさいでいたのを、後から調整したのだ。強風で飛ばないよう、固定もしっかりやり直した。ベランダの熱ごもりは和らぎ、冷房の効きが悪くなる日もなくなった。あの熱風の壁も、以前ほどではない。板は、正しく付ければちゃんと働く。ただし、熱の逃げ場をふさいだ瞬間に、味方から敵に変わる。室外機が吐いた熱を、いかにスムーズに遠くへ逃がすか。板を付ける目的は、そこに尽きる。ふさぐための板ではなく、逃がすための板なのだ。

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