三つ買って、二つが引き出しの奥に沈んだ
シェアハウスのキッチンには、共用の調理器具を入れる引き出しがあります。奥のほうを整理していた住人が、色違いのシリコン容器を三つ引っ張り出してきました。
一つは毎週使われている。残り二つは、いつ買われたのかも分からない状態。
なんでこっちだけ生き残ったんだろ
並べて比べて、答えが出ました。差は容量でも値段でもなく、形と洗いやすさだった。
深さがあって、底が平らで、蓋が本体と分離するもの。この三つを満たしていれば、使い続けられます。逆にどれか一つでも欠けると、引き出しの奥へ向かう確率が上がる。
形で、できる料理が決まる
深型は、汁気のあるものが作れる
生き残った一つがこれでした。深さ十センチ前後、丸みのある形状。
汁を張ったまま加熱できるので、煮物とスープが作れます。うちで一番よく作られているのは、鶏肉と根菜の煮物。切って調味料を入れて七分。
パスタも茹でられます。麺を半分に折って水と一緒に入れ、表示時間プラス三分。鍋を出さずに済むのが効いている。
浅型は、蒸し野菜と温め直し専用になる
沈んだ二つのうち一つが、この形でした。高さ五センチほど。
野菜を蒸すには十分ですが、汁物が作れません。深型があると、こちらを使う理由がなくなる。
一つ目に買うなら深型です。浅型は二つ目以降の選択肢。
スタンド型は、収納で有利
自立して、袋のように立つタイプ。使わないときに畳めるので、場所を取らない。
ただし底が安定せず、レンジの中で倒れたことがあります。汁が飛び散って、庫内の掃除に三十分。あれ以来、うちでは使われなくなりました。
底が平らで、しっかり自立するものを選ぶ。ここは店頭で確認したい部分です。
サイズは、一人分か家族分かで割り切る
一人暮らしなら、五百ミリリットル前後
茶碗一杯ぶんの野菜、鶏もも肉一枚、パスタ百グラム。この量が入る容量です。
小さすぎると使い道が限られ、大きすぎるとレンジの回転皿で引っかかる。うちの住人が一人暮らし時代に使っていたのは、この帯でした。
二人以上なら、一・二リットル以上
うちの共用サイズがこれ。四人分の蒸し野菜が一度に作れます。
大きいぶん、少量調理では加熱ムラが出やすい。中身が容器の底に薄く広がると、端だけ加熱が進みます。
レンジの内寸を、先に測る
これを忘れる人が多い。回転皿式のレンジは、皿の直径より大きい容器を入れると回りません。
うちは一度、蓋が庫内の天井に当たる高さのものを買ってしまいました。斜めに入れて使うという、間抜けな運用をしばらく続けた。
素材と付属パーツで、差が出る
シリコンの厚みが、耐久性を決める
薄いものは価格が安いかわりに、加熱を繰り返すと変形します。うちの安価な一つは、半年で縁が波打ってきました。
厚みがあるものは重いけど、形が保たれる。手に取ったときの、しっかりした重さが目安になります。
耐熱温度は二百度以上を選ぶ
レンジだけなら百四十度程度で足りますが、オーブンでも使いたいなら二百度以上の表示が要ります。
うちの深型は二百三十度対応で、グラタンをオーブンで焼けました。用途が広がる。
蒸し板の有無で、料理の幅が変わる
底に敷く穴の開いたプレートです。水を張ってこの上に食材を置くと、蒸し器になる。
茶碗蒸しや、蒸し鶏を作るときに使います。付いていない製品でも、耐熱の網を代用できますが、専用品のほうが収まりがいい。
蓋が本体と分離するかどうか
これが盲点でした。蓋がヒンジで繋がっている製品は、洗うときに折り目の内側が洗いにくい。
汚れが溜まって、匂いの原因になります。完全に外れる蓋のほうが、清潔を保ちやすい。
作ってうまくいった料理、失敗した料理
蒸し野菜と根菜は、鍋より速い
ブロッコリー、にんじん、かぼちゃ。切って入れて、水を大さじ一杯振って五分。
湯を沸かす時間が要らないぶん、鍋より早く終わります。うちの朝の副菜は、ほぼこれで作られている。
魚は、驚くほど身がふっくらする
切り身に酒と塩を振って、七分。フライパンで焼くより身が縮まず、脂が閉じ込められる。
住人が初めて作った日、箸を入れた瞬間にほろっと崩れて、その場で全員が味見を求めました。
肉の塊は、加熱ムラが出る
鶏むね肉を丸ごと入れたときは失敗しました。表面は火が通っているのに、中心が生。
厚みのあるものは、切り込みを入れるか、途中で上下を返す。加熱を二回に分けると安定します。
揚げ物の温め直しは、向かない
衣が蒸気を吸って、ふにゃふにゃになります。シリコンスチーマーは水分を閉じ込める道具なので、逆効果。
匂いと油汚れが、寿命を縮める
カレーの匂いが、一週間残った
うちで起きた失敗です。カレーを温め直したら、洗った後も匂いが取れない。
シリコンは表面に微細な穴があり、油分と匂いを吸着します。中性洗剤で洗っただけでは抜けない。
重曹を溶かした湯に浸ける
対処法として効いたのがこれ。湯に重曹を大さじ一杯溶かし、容器を三十分浸けておく。
匂いがかなり抜けます。それでも残る場合は、外に半日干す。紫外線で分解される成分もあるようで、うちのはこれで復活しました。
油の多い料理は、控えめに
使えないわけではありませんが、油汚れが蓄積するとベタつきが取れなくなります。
うちは油の多い調理をフライパンに任せて、この容器は蒸し物と煮物に絞りました。用途を限定したほうが、道具が長持ちします。
洗いやすさが、使用頻度を決める
これが最重要です。
角が丸く、内側に凹凸のないものを選ぶ。細かい溝があると、そこに食材が残ります。
食洗機に対応しているかどうかも確認する。うちの深型は対応していて、それが毎日使われる理由の一つになっています。
洗った後、水が切れやすい形かどうか。シリコンは水を弾かないので、乾かすのに時間がかかります。逆さに立てられる形状だと早い。
沈んだ二つのうち一つは、内側に細かいリブが入った製品でした。米粒が挟まって取れず、洗うのが億劫になって使わなくなった。
使わなくなる人の、共通点
出しっぱなしにしていないこと。これに尽きます。
引き出しの奥に入れると、取り出す一手間で選ばれなくなる。うちは深型をコンロの脇に立てて置いていて、目に入るから使われる。
もう一つは、期待しすぎること。何でも作れる万能調理器として買うと、できないことに落胆して離れていきます。
蒸す、煮る、温める。この三つに絞ると、毎日の出番があります。
一つ選ぶなら
深さ十センチ前後、容量は一人なら五百ミリリットル、複数人なら一・二リットル。底が平ら、蓋が完全に外れる、内側に溝がない。耐熱二百度以上で、食洗機に対応。
この条件で選べば、引き出しの奥へ行きません。
うちのキッチンでは、今日も朝いちばんにその容器へブロッコリーが放り込まれています。レンジが回る音と、五分後の電子音。あれがこの家の朝の合図になりました。

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