用を足している途中で、明かりが落ちた
共用トイレに人感センサーの電球を付けて、三日目の夜。
個室に座って、スマホも見ずにぼんやりしていた。
ふっ。
視界が真っ暗になった。手を伸ばして振る。反応しない。もっと大きく振る。まだ暗い。
(動かないと消えるって、そういうことか)
立ち上がって、体を大きく揺らして、ようやく点いた。心臓が妙に速く打っていた。
翌朝、住人のミオが同じ体験をしたと言ってきた。二人で顔を見合わせて、これは選び方を間違えたと確認した。
シェアハウスの共用トイレは二か所。二年かけて、二種類のセンサー照明を試した。
消し忘れがなくなる利点は本物だった。ただ、選ぶものを間違えると、毎日小さく苛立つことになる。
導入した理由
六人で共用していると、トイレの電気が朝までついている日がある。
誰が消し忘れたかは分からない。責める相手がいないので、誰も改善しない。
うちは月に何度もこれが起きていた。センサーにすれば、その話自体が消える。
実際、導入後の二年間で、消し忘れはゼロになった。
失敗の原因は、検知の方式
人感センサーには、動きを検知するものと、人の存在そのものを検知するものがある。
最初に買ったのは前者だった。座って動かなくなると、いなくなったと判断される。
この違いを知らずに買ったのが、すべての始まり。
二つの検知方式
動きを検知するタイプ
赤外線で、熱を持つものが移動するのを捉える。
価格が安く、電球型で二千円前後から手に入る。
弱点が、静止に弱いこと。座って動かない状態が続くと、消える。
うちの一台目がこれ。廊下や玄関のように、通り抜ける場所には向いている。トイレの個室には向いていなかった。
存在を検知するタイプ
電波を発して、跳ね返りの変化で人の有無を判断する。
呼吸や、わずかな体の揺れも捉える。座ったまま動かなくても、消えない。
価格は上がる。うちが買い替えたものは五千円ほどした。
二台目に替えてから、暗転の事故が一度も起きていない。
買うときに見る言葉
商品の説明に、静止していても消えないという趣旨の記載があるか。
あるいは、検知の方式が書かれているか。
うちの一台目には、こうした記載が何もなかった。売り場でセンサー付きとしか書かれていなかった。
安い商品は、動きを検知するタイプだと考えて、まず間違いない。
点灯時間の設定
短すぎると、暗転する
検知しなくなってから消えるまでの時間。これを設定できる機種がある。
初期設定は、三十秒や一分になっていることが多い。
うちは、これを五分に伸ばした。動きを検知するタイプでも、五分あれば大半の用は足りる。
設定はスイッチで切り替えるものと、本体を数回オンオフして変えるものがある。説明書を確認する。
長すぎると、無駄になる
十分に設定すると、出た後も点きっぱなしになる。
節電のために導入したのに、意味が薄れる。
うちは五分に落ち着いた。誰も暗転せず、無駄な点灯も長引かない。
使う人の数と滞在時間で、適切な長さは変わる。一人暮らしなら三分でも足りる。
設定できない機種がある
安価な製品は、点灯時間が固定になっている。
うちの一台目がそうだった。三十秒で消える設定を変えられなかった。
買う前に、時間の調整ができるか確認する。これができないと、後から手の打ちようがない。
取り付けの位置と向き
センサーの向きが、天井を向いていないか
電球型のセンサー照明は、電球の下部にセンサーが付いている。
天井のソケットに取り付けると、真下を向く。これが正しい。
問題は、ソケットが横向きや斜めに付いている場合。センサーが壁を向いてしまう。
うちの二か所目のトイレは、ソケットが壁付けだった。センサーが横を向いて、人が入っても反応しなかった。
向きを調整できる機種を選ぶ。首の部分が回るタイプがある。
ドアの位置と、検知範囲
センサーには、検知できる角度と距離がある。
真下は検知するが、真横は苦手な機種がある。
うちは、ドアを開けた位置が検知範囲の外だった。一歩入ってから点く。その一歩が、暗闇の中の一歩になる。
ドアの真上あたりに照明があると、入った瞬間に点く。位置関係を確認する。
照明カバーが、邪魔をする
これで詰まる人がいる。
すりガラスや、乳白色のカバーが付いた照明器具。この中にセンサー電球を入れると、赤外線が遮られる。
うちは一度これをやった。まったく反応しなくなって、電球の不良かと思った。
カバーを外すと、普通に動いた。
カバーを外した状態で使うか、器具ごと交換するか。うちは外したまま使っている。見た目は良くない。
共同で使うときの問題
手動で消せない
掃除のとき、明るくしたまま作業したい。あるいは、点けたくないときがある。
センサー任せだと、この調整ができない。
うちは、壁のスイッチをそのまま残した。スイッチを切れば、センサーも働かない。
夜中にトイレの前を通るとき、光が漏れて眩しいという声が出た。今は、就寝前にスイッチを切る住人もいる。
掃除中に、消える
便器の裏をこすっているとき、動きが小さくなる。
うちの住人が、掃除の途中で三回消えたと文句を言っていた。動きを検知するタイプだった頃の話。
存在を検知するタイプに替えてから、この問題も消えた。
点灯の音
細かい話だけれど、深夜には気になる。
センサーが反応するとき、かちりという音がする機種がある。
うちの一台目は、この音が廊下まで響いた。深夜、誰かがトイレに立つたびに聞こえる。
二台目は無音だった。店頭で確認できるなら、動作音も聞いておく。
電気代と寿命
節電の効果は、確かにある
うちの記録では、トイレの照明にかかる電気代が、導入前の半分以下になった。
消し忘れがなくなったのが大きい。一晩点けっぱなしが月に数回あったので。
発光ダイオードの電球なので、そもそもの消費電力は小さい。それでも、無駄が消えた実感はある。
センサー部分が、先に壊れる
電球自体の寿命は長い。ただ、センサーの回路は別。
うちの一台目は、一年半でセンサーが反応しなくなった。電球は点いたまま消えなくなった。
交換するしかない。普通の電球より寿命が短いと考えておく。
頻繁な点滅は、負担になる
一日に何十回も点いたり消えたりする。
これが電球に負担をかける。
うちは、点灯時間を五分に設定したことで、点滅の回数が減った。結果的に寿命も延びていると思う。
賃貸で使うときの注意
電球の交換なら、問題ない
既存のソケットに、センサー付きの電球を入れるだけ。これは電球の交換と同じ扱い。
工事も許可も要らない。
うちは全部この方法。退去するときは、元の電球に戻して持ち帰る。
器具ごと替えるなら、確認する
照明器具そのものを交換する場合、管理会社に確認する。
外した元の器具は、必ず保管する。捨てると弁償になる。
うちの住人が、備え付けの器具を外して処分してしまい、退去時に請求された。
元の電球を、取っておく
交換した電球を捨てないこと。
退去のとき、元の状態に戻す。
うちは、外した電球を袋に入れて、共用の収納にまとめている。どこの部屋のものか、袋に書いておく。
先週、深夜にトイレへ向かう住人の足音がした。
ドアが開いた瞬間、隙間から光が漏れる。音はしない。
数分後、水を流す音がして、ドアが閉まる。
廊下が暗くなるまで、五分。
その間、彼は一度も手を振らなかった。

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