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洗濯機の防水パンなしは危険なのか、水漏れした朝にわかったこと

八時前、廊下を裸足で歩いたらペタッと冷たかった。
洗面所の引き戸を開けた瞬間、足の裏の感覚の理由がわかる。洗濯機の足元から、水が扇のかたちに広がっていた。
そこに防水パンはない。フローリングに直接、ドラム式が鎮座しているだけ。
その日、洗濯機をまわしていたハルさんは、しゃがんだまま数秒動かなかったという。
「頭に浮かんだのは下の部屋。まだ寝てるよな、って」
水は幸い廊下の手前で止まった。階下の天井も無事。ただ、この一件で住人全員が洗面所の床を見る目が変わった。

目次

防水パンがない部屋は、欠陥物件ではない

あえて付けない新築が増えている

内見でこの空間を見つけて不安になる人は多い。壁の水栓と床の排水口だけがあって、受け皿がない。手抜きかと疑いたくなるでしょ。
実際は逆で、意図して外している建物がかなりある。
理由は主に三つ。大型のドラム式が置けるようにするため。パンの縁にたまるホコリと髪の毛を発生させないため。そして掃除機がそのまま入るため。
防水パンの内側の掃除は、経験した人ならわかるはず。隙間に手が入らず、綿ボコリが灰色の毛玉になって固まっている、あれ。あれが最初から存在しない設計は、住む側にとって悪くない。

失っているのは受け皿ではなく、床からの数センチ

パンの本当の働きは、水を受けることよりも洗濯機を床から浮かせることにある。
浮いていれば、排水ホースが押しつぶされない。床とのあいだに空気が通ってカビが生えにくい。排水口の点検口に手が届く。
直置きになった瞬間、この三つが同時に消える。危ないのは水そのものではなく、そこなんだ。

パンがあっても、あの朝の水は止められなかった

受け止められるのは、にじむ程度の量だけ

洗濯パンの深さは指二本ぶんもない。溜められるのはせいぜい数リットル。
ところが排水ホースが外れたときに床へ出る水は、洗濯槽ひとつぶん。四十リットルを超えることもある。縁を軽く越えて、結局あふれる。
パンは水漏れを止める装置ではなく、結露や滴りを受けるための皿。ここを取り違えたまま安心している人が、たぶん一番危ない。

水が出る場所は、ほぼ二か所しかない

ハルさんの原因は排水ホースだった。差し込んでいただけの接続部が、洗濯機の振動で少しずつ浮いて抜けた。
もうひとつは給水側。壁の水栓と洗濯機をつなぐニップルの部分で、樹脂やゴムが硬くなって外れる。こちらは運転中でなくても噴く。夜中に帰ったら部屋が水浸し、という展開はここから生まれる。
排水口の詰まりによる逆流も加えて、事故のほとんどはこの三系統。パンの有無より、ここを押さえるほうが何倍も効く。

内見で見るべきは、パンの有無ではなく排水口の位置

洗濯機の真下に隠れる配置が、いちばん苦しい

排水口が置き場の中央にあり、そこへ洗濯機がまたがるように乗る配置。防水パンなしの物件でよくあるかたちで、これがきつい。
糸くずと洗剤カスは必ず溜まる。半年も放置すれば流れが悪くなり、水位が上がって最後は逆流する。掃除しようにも、五十キロ超えの本体をどける必要がある。
壁際や角に排水口がある物件なら、洗濯機の脇から手が届く。同じ防水パンなしでも、暮らしやすさがまるで違う。内見のときに床をのぞき込む数秒を惜しまないほうがいい。

排水トラップがあるか、蓋を開けて確かめる

排水口の蓋を外して、中に筒状の部品が入っているかどうか。あれが排水トラップで、水を溜めて下水の臭いを封じている。
これがない、あるいは長期の空室で水が乾いていると、洗面所にツンとした臭いが上がってくる。洗濯機のせいだと思って洗濯槽クリーナーを買い込む人がいるけれど、原因は足元。
入居直後にコップ一杯の水を流し込めば、封水は戻る。数百円のトラップを後付けできる場合もあるから、管理会社に聞いてみる価値はある。

直置きで暮らすなら、先に三つだけ手を打つ

かさ上げ台で、数センチ浮かせる

因幡電機のふんばるマンに代表される置き台は、四つの脚の下に噛ませるだけ。それで六センチ前後の高さが生まれる。
浮いた瞬間に、排水口の蓋が開けられるようになる。ホースがつぶれなくなる。床との間に風が通ってカビが減る。防振ゴムを内蔵した製品なら、揺れも吸ってくれる。
本体をいったん持ち上げる作業が必要になるので、ひとりでやろうとしないこと。腰と床、どちらかが必ず犠牲になる。

防水トレーを敷くか、敷かないか

パンの代わりになる薄型のトレーやゴムマットも売られている。床材を守る目的なら意味がある。
ただし大量の漏水には無力だし、下に湿気を閉じ込めてかえって床を傷めることもある。吸水性のある布素材はやめておくほうが無難。
賃貸なら、原状回復の観点で入れておく判断はありだと思う。直置きの洗濯機は脚の跡がくっきり残るし、鉄の脚がサビて茶色い輪を焼き付けることもあるから。

排水ホースは、差し込んで終わりにしない

ハルさんが事故のあとにやったのは、たった二つ。
排水ホースの接続部を結束バンドで固定したこと。もうひとつは、洗濯を終えたら壁の水栓を閉める習慣をつけたこと。
「蛇口を閉めるだけで給水側の事故はほぼ消えるって、電気屋のおじさんに言われて。今までなんで開けっぱなしだったんだろ…」
給水ホースは五年ほどで硬くなる。緊急止水弁のついたニップルに替えておけば、外れた瞬間に水が止まる。千円台の部品でこれが買えるのは、正直かなり割がいい。

床と、カビと、真夜中の振動

クッションフロアは沈む

洗面所の床がやわらかい塩ビ素材だった場合、直置きの脚は確実にめり込む。
ドラム式なら本体だけで七十キロを超えるものもあり、そこに水が加わる。四点で支えているぶん、圧は一点に集中する。
かさ上げ台のような面で受ける台を挟むと、へこみは目立ちにくくなる。退去のときに指摘されるのは、たいていこの跡。

夜にまわすなら、脚の下のゴムが効く

防水パンは意外と防振の役割も担っていて、それがなくなると振動が床材へ直に流れる。脱水のたびにゴトンゴトンと響き、階下から苦情、という筋書き。
かさ上げ台の防振タイプか、脚の下に敷く防振ゴムで、音の質が変わる。完全には消えないけれど、床を伝う低い音はかなり落ちる。
それと、隙間ができた洗濯機の下に子どもや猫が手を入れないよう気を配ること。洗濯槽の下に指を差し込んで大けがをした事故も起きている。浮かせるなら、周囲をふさぐ配慮とセットで。

保険の確認は、引っ越しの週に済ませておく

階下への賠償を受け止めるのは、個人賠償責任特約

賃貸で契約する火災保険には、家財の補償と借家人賠償責任がセットになっているものが多い。前者は自分の持ち物、後者は大家さんの建物に対する責任をカバーする。
そして階下の住人への賠償は、そのどちらでもない。個人賠償責任特約の範囲になる。
月々の保険料は百二十円から二百円ほどで、補償額が一億円級まで設定されているものもある。自転車事故やペットの咬傷も同じ枠。すでに自動車保険やクレジットカードに付いていることも多く、重複して払っていても支払われるのは実損分まで。
洗濯機のホースが外れた事故は、不注意として扱われるか偶然の事故として扱われるかで判断が割れる。保険会社によって線引きが違うので、証券を出して該当箇所を読んでおくと、いざというとき手が震えずに済む。

経年劣化は出ない、という線

補償の対象になるのは、突発的な事故。
何年も交換していないホースが硬くなって割れた、蛇口を閉め忘れた、こうしたケースは対象外になりやすい。配管がサビて穴が開いた場合も同じ扱い。
賠償額は買い替え費用ではなく、壊れた時点の時価で計算される。階下の家電が古ければ、下りる金額は思ったより小さい。
だからこそ、点検を年に一度カレンダーに入れておくほうが安上がりになる。ホースの根元を握って、硬くなっていないか確かめるだけ。三分で終わる。

防水パンのない部屋を避ける必要はない。避けたいのは、排水口が洗濯機の真下に沈んでいて、点検できないまま何年も過ごす状態のほう。
シェアハウスの洗面所には今、四つの黒い台が置かれている。あの朝の廊下を裸足で歩いたのが、たまたま早起きした住人でよかった。

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この記事を書いた人

屋根の下の知恵袋TOKYOシェアライフ

都内シェアハウス住民によるリアルな生活ハック発信中。
節約、家事、収納、コミュニティづくりまで、みんなで暮らすからこそ生まれる知恵を発信してます。

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