ぐっすり寝たはずなのに、朝からぐったりしていた
寒い夜、電気毛布を入れた布団に潜り込むと、天国のような暖かさ。そのまま朝までぐっすり眠った、はずだった。なのに目覚めると、喉がカラカラで、体がなんだか重い。
都内のシェアハウスに住むMさんが、冬の朝をこう振り返る。「布団はぬくぬくで最高なんですけど、起きると疲れが取れてない感じで。喉が渇いて、肌もカサついてて。しっかり寝たのになんでこんなにだるいんだろうって、寝起きに水をがぶ飲みしながら思ってました。電気毛布って体に悪いのかなって」。
電気毛布が体に悪いと言われる理由。検索する人は、Mさんのように使っていて不調を感じたか、これから使うのが不安なことが多い。先にはっきり言う。電気毛布そのものが体に悪いわけではない。悪いのは、一晩中つけっぱなしにするという使い方だ。正しく使えば、体に悪いものではない。何がどう体に響くのか、その理由と、避けるための正しい使い方を、Mさんの冬をたどりながら整理していく。
「体に悪い」の正体は、間違った使い方にある
まず、大前提をはっきりさせたい。電気毛布は、正しい使い方をすれば体に悪いものではない。間違った使い方をするから、体に悪いと言われているだけだ。
冷えた布団を温め、寒い夜の睡眠を助けてくれる、心強い暖房器具。それが電気毛布の本来の姿だ。問題が起きるのは、その暖かさが気持ちよくて、つい一晩中つけたまま寝てしまうときだ。寝る前に温めるだけの道具を、寝ている間ずっと動かし続けることで、体にいくつかの負担がかかる。悪いのは道具ではなく、使い方の一点にある。この理解があれば、対処は見えてくる。
電気毛布が体に負担をかける、4つの理由
理由1 汗と乾燥で、脱水を招く
最も起きやすいのが、脱水と乾燥だ。
人は寝ている間に汗をかくが、それは温まりすぎた体を冷やすための体温調節だ。電気毛布をつけたまま寝ると、布団が温められすぎて、通常より大量に汗をかく。その結果、体内の水分が奪われて、脱水症状になりやすくなる。朝起きて喉がカラカラ、肌がカサカサ、服や布団がほんのり湿っている。これは、脱水のサインだ。
Mさんが寝起きに水をがぶ飲みしていたのは、まさにこの状態だった。電気毛布の熱で肌の水分が奪われて乾燥し、汗で体内の水分も失われる。一晩中の暖かさが、知らないうちに体を乾かしていく。
理由2 深部体温が下がらず、眠りが浅くなる
睡眠の質そのものにも、影響が出る。
人が眠るとき、体温は徐々に下がっていく。体温が下がることで、リラックスを司る副交感神経が優位になり、熟睡に入れる。ところが、電気毛布で体が熱いままだと、この体温の低下が妨げられる。体が興奮を司る交感神経優位のままになり、深く眠れなくなる。
つまり、暖かくして寝ているのに、かえって眠りが浅くなる。ぐっすり寝たはずなのに疲れが取れない、というMさんの感覚は、この浅い眠りが原因だった可能性が高い。暖かさと引き換えに、熟睡を逃していたわけだ。疲れが取れないまま続くと、免疫力が下がって風邪をひきやすくなる、とも言われる。
理由3 同じ場所を温め続け、低温やけどになる
見落とされがちだが、怖いのがこれだ。低温やけど。
低温やけどは、人肌より少し熱い44から55℃くらいで起こりやすい。熱くない温度でも、体の同じ部分を長時間温め続けると、じわじわと皮膚がダメージを受ける。弱にしておけば一晩中使っても大丈夫、と思いがちだが、弱でも同じ場所に当たり続ければ、低温やけどの可能性がある。ヒリヒリした痛みや、うっすらとした赤みが出る。
特に注意したいのが、熱さを感じにくい人だ。深く眠り込んでいる人、高齢の人、持病のある人は、熱さに気づかないまま温められ続けて、低温やけどが進みやすい。気持ちよく眠っている間に、皮膚が静かに傷ついていく。だからこそ、直接肌に触れさせない工夫がいる。
理由4 体温調節機能が鈍り、循環器に負担も
長く使い続けることで、体の機能そのものへの影響も指摘されている。
長時間、肌に密着させた状態で使い続けると、体温調節機能が乱れ、自律神経に悪影響を及ぼす可能性があると、皮膚科の観点から注意が促されている。外の熱に頼りすぎると、体が自分で体温を調節する力が鈍りやすい。
さらに、長時間の使用は体温の上昇や血行の変化を引き起こす。心臓や循環器系に疾患がある人は、体温調節が難しくなって、動悸や不整脈が生じることもある。高齢の人や持病のある人は、医師に相談しながら使うのが安心だ。健康な人が正しく使うぶんには過度に心配いらないが、体に負担がかかりうることは知っておきたい。
体に悪くしない、正しい使い方
寝る前に温めて、寝るときは切る
ここまでの負担は、ほぼすべて一晩中つけっぱなしから来ている。だから、最も大事な正解はシンプルだ。寝る前に布団を温めて、寝るときは電源を切る。
布団に入る少し前から電気毛布で温めておくと、入った瞬間が気持ちいい。そして、いざ寝るときにはスイッチを切る。温まった布団の熱は、しばらく保たれるので、切っても寒くない。この使い方なら、脱水も、浅い眠りも、低温やけども、まとめて避けられる。暖かさが気持ちよくて、つい消し忘れそうになるが、ここを切れるかどうかが、体に悪いか悪くないかの分かれ目になる。
タイマーと自動オフ機能を活用する
自分で切るのを忘れそうなら、機能に頼る手がある。
タイマー機能や自動オフ機能を使えば、寝ている間に自動で電源が切れる。中には、眠り始めと起床前だけ暖めてくれる快眠タイマーのような賢い機能を持つモデルもある。睡眠中の自然な体温の変化を邪魔せず、寝つくときと起きるときだけ暖めてくれる。消し忘れが心配な人ほど、こうした機能付きのモデルを選ぶと安心だ。
肌に直接触れさせず、温度は低めに
低温やけどと乾燥を防ぐ工夫もある。
電気毛布が直接肌に触れないよう、シーツや薄手の毛布を一枚挟む。これだけで、皮膚への負担が和らぐ。温度設定も、弱から中の低めにして、熱くしすぎない。あわせて、枕元に水を置いて、寝る前と起きたときに水分を補給すると、脱水対策になる。敷くタイプは、掛けるタイプより寝返りを妨げず、体の一部を集中して温めにくいので、低温やけどの面でも扱いやすい、という整形外科の観点からの意見もある。
電気に頼らない、あたたかい選択肢もある
寝具に電気製品を使うこと自体に抵抗があるなら、別の方法もある。
ウールや羽毛の寝具は、それ自体の保温力が高く、汗をかいても蒸れにくい調湿性を持っている。電気を使わず、自然な暖かさで体を包んでくれる。電気毛布で寝つきをよくして、寝るときは切って、あとは保温力のある寝具に任せる、という組み合わせも快適だ。湯たんぽを併用すれば、じんわりした熱で、乾燥しにくく体を温められる。電気毛布は数ある暖房手段の一つと考えて、うまく組み合わせるのが賢い。
シェアハウスの寒い部屋で、快眠を取り戻した話
Mさんの電気毛布の使い方は、どう変わったか。
まず、寝る前に布団を温めて、寝るときは切るようにした。「たったこれだけで、朝の喉のカラカラがなくなって。しっかり寝た感じも戻ってきたんです。つけっぱなしがぜんぶの原因だったんだって、拍子抜けしました」。さらに、タイマー付きのモデルに買い替えて、消し忘れの心配もなくした。
シェアハウスの自室ならではの事情もあった。「自分の部屋は、いないと暖房を切っちゃうから、夜はけっこう冷え込むんです。だから電気毛布は手放せない。でも、寝る前に温めて切る使い方に変えたら、暖かさと快眠を両立できて。同じ悩みを持ってたメンバーにも、この使い方を教えました」。寒い部屋でも、正しく使えば、電気毛布は快眠の味方になったという。
見えてきたのは、電気毛布が体に悪いと言われるのは、道具ではなく使い方の問題だという事実だった。脱水、浅い眠り、低温やけど、体温調節の乱れ。これらはすべて、一晩中つけっぱなしから来ていて、寝る前に温めて寝るときに切るだけで防げる。タイマーを使い、肌に直接触れさせず、水分を補給する。この使い方を押さえれば、暖かさの気持ちよさだけを手に入れられる。ぐっすり寝たのにだるかったあの朝から、Mさんは寝る前にスイッチを切って、静かに眠るようになった。

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