箱から出したクランプが、天板に届かなかった
届いたモニターアームを箱から出して、いざ取り付けようとした。クランプを天板の縁に差し込もうとした瞬間、コの字の金具が奥行きに引っかかって、最後まで噛まない。
都内のシェアハウスで在宅ワークをするTさん(20代)の体験だ。「天板の手前に細い縁の飾りみたいな出っ張りがあって、そこにクランプが当たって2cmくらい届かないんですよ。amazonでポチるとき、まさかこんな落とし穴があるとは思わなくて。組み立て途中の姿勢のまま、はぁ…ってため息が出ました」。
モニターアームが机に取り付けられない。検索する人の多くは、Tさんと同じく購入後にこの壁にぶつかっている。机を買い替えるしかないのか。答えはノーだ。原因さえ特定できれば、今の机のまま設置できる方法がいくつもある。なぜ付かないのかを三つに分けて、それぞれの解決策をたどっていく。
付かない机は、無条件で諦める机ではない
最初に大事な前提を。モニターアームは、すべての机に無条件で付くわけではない。だが、付かない机のほとんどは工夫で付けられる机だ。
多くの人がつまずくのは、自分の机が設置に適しているかという事前確認の不足にある。逆に言えば、なぜ付かないのかを正確に把握すれば、対処は機械的に決まる。買い替えという最終手段にいきなり飛ぶ前に、原因の切り分けから始めたい。
取り付けられない、3つの原因
原因1 天板の縁の奥行きが足りない
最も多い失敗がこれだ。クランプ金具のコの字部分を、天板の縁に奥まで差し込めないケース。
天板の手前に引き出しがあったり、補強用のフレームや飾りの縁があったりすると、クランプが奥まで入らず、浅くしか噛み合わない。この状態で重いモニターを吊るすと、テコの原理で天板の端に力が集中し、割れたりアームが手前に倒れてきたりする。クランプの奥行きが2cm足りない、というTさんのような悩みは本当に多い。
浅く噛んだまま無理やり使うのは危険だ。モニターが落下すれば、画面の破損だけでなくケガにもつながる。届かないなら届かせる工夫をする。力ずくで妥協してはいけない。
原因2 つかむ場所そのものがない
学習机や事務机に多いパターンが、そもそもクランプで挟む縁がない構造だ。
天板の裏に引き出しが全面に広がっていたり、奥に棚や仕切りがあったりすると、クランプの下側の金具を回り込ませる空間がない。挟みたくても、挟む対象が存在しない。この場合、クランプ式に固執しても解決しないので、発想を切り替える必要がある。
原因3 天板の素材と強度が足りない
見落とされがちなのが、素材の問題だ。
ガラス天板は、クランプの締め付けや重量で割れるリスクがある。中が空洞の天板や、薄い化粧板を貼っただけの安価な天板も、クランプの圧力に耐えられず、へこんだり割れたりする。厚み、奥行き、素材、構造のすべてが条件を満たして初めて、安全に取り付けられる。見た目が頑丈そうでも、中が空洞ということはよくある。取り付け前に、天板の断面や裏側の構造を一度確認したい。
机を買い替えずに設置する、4つの解決策
当て木と補強プレートで、噛みと強度を補う
原因が奥行き不足や強度不足なら、まずこれを試したい。
クランプと天板の間に補強プレートを挟むと、力が一点に集中するのを防ぎ、天板の割れやへこみを防げる。傷防止と滑り止めを兼ねた専用プレートが千円台から手に入る。自分で当て木を用意して挟む方法でも同じ効果が得られる。
噛みが浅い場合も、プレートで接地面を補強したうえで締めれば、安定性が増す。ただし、これはあくまで強度と接地の補助であって、奥行きが根本的に足りないケースを解決するものではない。届かない問題には、次の手を組み合わせる。
グロメット式に切り替える
クランプで挟めないなら、天板に穴を開けて固定するグロメット式という方法がある。
天板にあらかじめ開いている配線穴を利用したり、新たに穴を開けたりして、ボルトで上下から挟み込む。挟む縁がない机でも、天板に穴さえ開けられれば設置できる。クランプより強固に固定できるのも利点だ。ただし穴を開ける加工が必要なので、賃貸の備え付け家具や、傷をつけたくない机には向かない。自分の所有物で、加工してかまわない机なら、有力な選択肢になる。
机上台を一枚かませる
手間をかけずに解決したいなら、これが一番ラクだ。
机の上にモニター台、いわゆる机上台を置き、その台の天板にクランプを取り付ける。元の机の構造に関係なく、台さえ設置の条件を満たしていれば付けられる。穴開けも当て木もいらず、ただ置くだけ。元の机を一切傷つけないので、賃貸でも安心して使える。
注意点は、机上台の天板の高さとアームの形状の相性だ。台の高さが低いと、下に出っ張りのある形状のクランプは入らないことがある。下が平らなタイプのクランプを選ぶか、台の高さに余裕があるものを選ぶ。
自立式・突っ張り柱で、机から独立させる
机にどうしても固定できないなら、机に頼らない方法がある。
ひとつは自立式モニタースタンド。クランプもグロメットも使わず、土台の重さで自立する置き型だ。机に穴を開けたくない人、賃貸で加工できない人に向いている。折りたためてコンパクトになるものもある。
もうひとつが、突っ張り柱や突っ張り棒を立てて、そこにアームを取り付ける方法だ。床と天井を突っ張る木材パーツを使えば、机とは独立した柱が立てられ、そこにモニターアームを固定できる。DIYの手間はかかるが、机の制約から完全に解放される。自作の柱を建ててモニターアームを2本付けた、という実践例もある。メタルラックの支柱を利用する手もある。
シェアハウスのデスク事情で見えた、最適解の違い
Tさんの机は、結局どうなったか。
備え付けの机だったため、穴を開けるグロメット式は管理上やりにくい。そこでTさんが選んだのは机上台だった。台を一枚置いて、その上にクランプを取り付けたら、奥行き不足の問題が嘘のように消えた。「台の下に物も置けるようになって、机が広くなったんですよ。届かなくて絶望してたのに、結果オーライでした(笑)」。
取材で同じシェアハウスの他のメンバーにも聞くと、選んだ解決策はバラバラだった。自分で買った頑丈な机を使う人はグロメット式で穴を開け、頻繁に模様替えする人は自立式スタンド、DIY好きのメンバーは突っ張り柱を立てていた。共通していたのは、机を買い替えた人は一人もいなかったことだ。
見えてきたのは、モニターアームが付かない問題は、机の制約ではなく方法の選択ミスにすぎないという事実だった。賃貸で加工できないなら机上台か自立式。所有する机で強固に付けたいならグロメット式。机を独立させたいなら突っ張り柱。原因を見極めて方法を合わせれば、ほぼどんな机でも道は開ける。届かなかったクランプを前にため息をついた夜から、Tさんのデスクは今、宙に浮いたモニターのおかげで広々としている。

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